山あいに湯けむりが立ちのぼる地、川原湯温泉。
ここには、かつての駅が沈み、新しい駅が生まれた――そんな「時間の断層」があります。
同じ八ッ場大橋を見上げながら、過去と現在の川原湯温泉駅を歩く旅。
その風景は、静かに語りかけてきます。
平成の川原湯温泉駅 ―― 湖底に眠る、木造駅舎の記憶
旧・川原湯温泉駅舎
川原湯温泉駅に最初に訪問したのは、今から10年以上前の平成26年の夏でした。
白い下見板張りの壁にこげ茶の屋根。昭和の温もりを残す木造駅舎が、山の懐に寄り添うように建っていました。
背景には、のちに湖をまたぐ八ッ場大橋の橋脚がそびえ、まるで「時代の境界線」を描いていたかのようです。
吾妻線の線路を渡る跨線橋を渡ると、山手からは蝉の声。
この風景が見られたのは、平成の終わりごろまでで、 八ッ場ダム建設に伴い、旧駅はその水底に沈むこととなりました。
その下を通るたびに、旅人は「この先にダムができる」と耳にしたものでした。
いま思えば、この風景こそが“変わりゆく川原湯”の象徴だったのかもしれません。
八ッ場ダム・資料館・吾妻湖 ―― 新しい風景に宿る記憶
八ッ場ダム
かつて線路が通っていたあたりには、湖をまたぐ八ッ場大橋が延び、今もその姿を旧駅跡の上から見下ろしています。
なるほど!やんば資料館
湖畔に立つ「なるほど!やんば資料館」**では、移転前後の川原湯温泉街や旧駅の写真、ダム建設の歴史資料などが展示されています。
館内の展望室からは、青く澄んだ湖面を一望でき、かつて列車が走った軌跡を想像することができます。
そして湖畔を歩けば、旧川原湯温泉駅があった場所をおおよそ特定できる地点があります。
その目印こそが――八ッ場大橋。
八ッ場大橋
過去の写真と同じ角度から眺めると、橋脚の位置や山の形がぴたりと重なり、かつての駅舎のあった場所を静かに示してくれます。
現在の川原湯温泉駅は、この八ッ場大橋を渡った対岸奥にあり、旧駅とはやや離れた位置に設置されました。
失われたものは多いけれど、それを受け止めて新しい風景をつくり出したこの地の力強さを感じずにはいられません。
現在の川原湯温泉駅 ―― 再生の丘に立つ新しい玄関口
現在の構内(大前方面)
現在の川原湯温泉駅は、湖を見下ろす高台に移転し、モダンなデザインの駅舎になっているそうですが、残念ながら新駅は通過しただけ、交換待ちの間にホームに降りただけでした。
駅名標
駅前には、地元住民の手で再建された笹湯があり、旅人にも人気の立ち寄り湯となっています。
泉質は昔ながらの弱アルカリ性単純温泉**。肌にやさしく、湯上がりはつるりとした感触が残ります。
また、駅前広場にはカフェや小さな直売所が並び、手づくりの温もりがあふれています。
夜になると、静かな湖面に駅の灯が映り、列車のヘッドライトがその上をゆっくりと滑るように通り過ぎていきます。
それはまるで、過去の記憶が今を優しく照らしているような光景です。
沿線の観光案内
- 笹湯(駅前):移転後も地元の心の湯として営業中。朝9時から入浴可。
- やんば見放台:ダム全景を見下ろす展望スポット。湖と新駅(新駅は距離がありあまり良く見えません)を一望できます。
- やんば茶屋:地元野菜を使った定食やダムカレーが人気。テラス席から湖が一望。
- 吾妻渓谷遊歩道:春は新緑、秋は紅葉が絶景。遊歩道入口は駅から徒歩10分ほど。
「温泉・鉄道・ダム」が共存するこの地域では、旅のテーマを自由に組み合わせられるのも魅力です。
温泉で癒され、ダムを巡り、そして列車に揺られて帰る――。
そんな“川原湯時間”を、あなたもぜひ味わってみてください。
かつての駅が眠る湖を見下ろしながら、列車は今も走り続けています。
それは、過去と現在が手を取り合うような、静かな風景です。
✨ まとめ
川原湯温泉駅は、過去と現在が静かに交わる場所。
旧駅が沈み、新しい駅が立つ――その物語の中に、人と鉄道と自然の共生が見えてきます。
八ッ場大橋を見上げるたび、あの木造駅舎の姿が心に浮かび、ダム湖に映る光が、未来への希望のようにきらめくのです。
鉄道は、時代を越えて“記憶”を運ぶもの。
そしてこの駅は、今もなお、川原湯という名の物語を静かに紡ぎ続けています。
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川原湯温泉駅情報
所属:JR東日本高崎支社
開業:昭和21年4月20日
場所:群馬県吾妻郡長野原町
形状:鉄骨平屋駅舎
乗換:なし
詳しい駅情報・駅時刻表・構内図・バリアフリー情報は、JR東日本駅の情報(川原湯温泉駅)から
札幌駅、東京駅、名古屋駅、大阪駅、高松駅、博多駅から川原湯温泉駅へのアクセス
札幌駅から:16時41分着 所要時間10時間41分 29,600円 新函館北斗・大宮・高崎・新前橋乗換 □■■□□
東京駅から:8時42分着 所要時間2時間14分 5,590円 高崎乗換 ■□
名古屋駅から:11時59分着 所要時間4時間18分 15,270円 東京・高崎乗換 ■■□
大阪駅から:11時59分着 所要時間5時間24分 18,140円 新大阪・東京・高崎乗換 □■■□
高松駅から:11時59分着 所要時間7時間24分 21,300円 岡山・東京・高崎乗換 □■■□
博多駅から:14時14分着 所要時間8時間14分 25,940円 東京・高崎・新前橋乗換 ■■□□
*データはNAVITIMEで検索したもので、平日、鉄道だけで最も早い時間(最速ではありません)に到達できる時間と料金です。
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写真は、平成10〜20年代撮影のものが多くあります。現在の状況とは変わっていることがありますので、参考にする際はご注意ください。
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