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セルシン静注体験記

僕は、大学時代の同級生の内科クリニックで毎年胃カメラをしている。これは内科の同級生に信頼できる医師を聴いて選んだのである。同じ科の医師に聴いて「彼は上手い」と言うなら、大丈夫だろうという判断である。

 

よく考えると、同じ科でどの医師が良いか聴くのは、その医師には失礼な話である。しかし内科は専門性が分かれているし、気心が知れた友人ならそのようなことは心配するに及ばない。そもそも内科でも同じ専門であれば聴けるわけがない。

 

聴いた結果だが、意外によく知っている友人を勧めてくれた。教養課程で同じフランス語クラスだったし、彼の奥さんも知っている人だったからである。彼が性格が非常に良いのも良かった。こちらも気を遣わないからである。

 

これを書いていて思ったが、医師はかなり性格に難があると言うか、気難しい人がかつては多かったが、今は洗練されてきていて、変な人が減っている印象である。これは競争がそうさせたのか、社会がそうなってきたのか、両方の要因があるような気がする。以下は昨年アップした記事である。

 

 

精神科医に変わった人が多いと言うのは、半分当たっていて、半分外れている。実は医師は平均して変わった人が多い。ちょっとでも内省できると言うか、意識が内側に向くかどうかで精神科になるかどうかが分かれるような気もする。

 

その証拠に医師になって以後、統合失調症を発症する人は精神科以外の医師が遥かに多い印象である。

 

さて、友人の内科クリニックで胃カメラ実施の際、喉の麻酔のキシロカインと、点滴の際にペチジンとセルシンのアンプルが処方される。用量はペチジンが35mgでセルシンが10mgアンプルである。ペチジンはよくわからないがセルシンは点滴の際にワンショットで静注されている。

 

僕は、セルシンの静注は全員にそうすることは少し怖いという感覚がある。てんかん発作でない限り、僕はセルシン10mgワンショット静注は恐ろしくてできない。そもそも事故を恐れてセルシンは可能な限りワンショット静注はしないことにしており、するなら筋注で実施する。

 

セルシン筋注はかなり局部が痛いので、患者さんが多少多幸感があったとしても、頻回に希望するようにならないと言う見通しもある。

 

夜間、輪番を受けていると、たまに不安発作でセルシンの静注を希望して来院する人がいる。大抵、女性である。うちの病院では原則、セルシンの筋注はたまにするが、静注は行なっていないと言うと、いつもかかりつけ病院で静注してもらっているので心配いらないと言う。

 

こうなるから、静注は嫌なのである。

 

彼女の言うように、毎回静注でしているなら事故の確率はほぼないし、輪番としての業務なので、つまり一見客なので、セルシン静注して帰ってもらっている。

 

友人の内科クリニックで、胃カメラのセルシン静注の際に、過去に事故が起こったことがないか聴いた。その回答だが、未だ事故が起こったことがないらしい。ただし内科病院でベンゾジアゼピン静注の事故が起こるのと、単科精神科病院で事故が起こるのとでは予想される転帰がかなり違う。死亡する確率が精神科病院の方がかなり高そうである。

 

僕がセルシンの静注にここまで敏感なのは、ちょっとした静注のやり方次第でリスクが高まるからである。それは以下の記事に記載している。

 

 

過去には関東の救急病院でロヒプノールの注射剤で死亡事故が起こった事例がある。このケースではおそらく簡単に鎮静できず、ロヒプノールを数本使ったために死亡事故となったものと思う。

 

裁判では病院が負け、まだ若い人だったため当時1億円以上の賠償金だった。重い興奮状態なら、ベンゾジアゼピンのセルシンよりセレネースやトロペロン筋注または静注の方がリスクが低い。今風にはジプレキサ筋注である。メジャートランキライザーの方が少ない用量で鎮静できる期待値が高いのも重要だと思う。

 

友人のクリニックで、事故が起こったことがないという話を聴き、そこまでセルシン静注のリスクは高くはなく、特異体質の人のみ事故が起こるのかもしれないと思った。

 

上に記載したロヒプノールの事故だけど、特異体質に加えて著しい興奮状態には致死性緊張病の要素があることも重要だと思う。そう思う理由は、その精神科救急病院ではいつも同じ手法で対処していたと思うからである。

 

僕の胃カメラでのペチジン+セルシンの処方だが、「一応、僕はアレルギー体質なので事故には気をつけておいてください」と初回に伝えた。いつも思うが、医療の検査でうっかり死亡するのは本末転倒である。

 

初めて、ペチジンとセルシンを経験した感想だが、胃カメラをした日は、一日中、多幸感ががあり、これはなんなんだ!と思った。この2つのどちらがより影響したかというと、多分セルシンよりペチジンだと思う。以下はGoogleのAIによる検索結果。

 

 

 

胃カメラ後、1日中気持ちが良い状態が続いたのは最初の2回くらいで、その後、なぜか多幸感はなくなった。薬が変わったわけではないらしいが、年に1回くらいの頻度で多幸感が馴化するものだろうか?と少し思った。

 

セルシンを10mgも静注しても1時間半くらいで目が覚める。実施後、2時間目くらいに友人から結果の説明を聴くがけっこう薬が抜けている。セルシンは意外に効果持続時間が短い実感がある。その後、車の事故が怖いので家まで歩いて帰るが、特にふらつきなどない。

 

ただし、セルシン静注後は副作用として口渇は実感する。それくらいである。

 

なお、この記事ではセルシン注射と記載しているが、現在は注射アンプルはホリゾンのみ処方されている。

 

 

参考

 

残波岬の巨大シーサー

 

沖縄県読谷村の残波岬の手前に鮮やかな赤茶色の巨大シーサーがある。大きさは9m近い。40年前に建てられたらしいが、何度か塗り替えられているのか、鮮やかな色合いだった。このシーサーの前には残波大獅子と書かれている。

 

 

シーサーはペアでいることが多いが、この巨大シーサーは1頭だけである。シーサーは魔除けのようなイメージだが、このシーサーは琉球王国時代の中国との国交のシンボルらしい。読谷村は昔、中国との貿易で栄えていたと言う。

 

このような背景があり、このシーサーは中国大陸の方角に向いている。

 

 

なお、琉球王国は1609年に島津藩の侵攻を受け、征服されて島津藩に支配されるようになった。しかし並行して中国と朝貢関係を保っていたため、島津藩と中国の二重支配を受けるという複雑な関係になったのである。島津藩の侵攻以降、貿易に関する権利を島津藩に掌握されたため琉球王国の財政は厳しくなった。このような二重支配は明治時代に沖縄県になるまで続いた。

 

沖縄では読谷村のホテル日航アリビラによく宿泊するわりには、残波岬に行くことがなかった。残波岬は日航アリビラから車で5分くらいの距離にあるのにである。

 

残波岬に行ってみると、そこまで観光地化されていないようで、観光スポットながら駐車場も無料だった。大規模な土産物屋などない。

 

 

海岸の岩場に降りて南の方角を見ると、遠方に赤い屋根のホテル日航アリビラが見える。

 

 

北の方角。リアス式海岸風で、岩場で怪我をしそうで泳げない感じ。ここはシャワーなどの施設もなく遊泳する海岸にはなっていない。

 

 

海の方角。こちらが中国大陸方面。名前を知らないが小さな島が見える。この日、サンセットを見たかったが、雲が出ていて見られなかった。

 

 

残波岬の灯台。真下から撮影しており上の方がわかりにくいが、錆びているのが見える。

 

残波岬に限らず、沖縄県の観光地やホテルには外国人が多い。昔は米軍基地関係者ではないかと思っていたが、実際はそうではなく世界中から観光客が訪れている。その証拠に沖縄のホテルの口コミを見ると海外の人、特にヨーロッパの人の口コミも多くある。前回、石垣島の川平湾の写真をアップしているが、現地でドイツ語を喋る観光客を見た。

 

ホテル日航アリビラでも、朝のビュッフェでスペイン語を話す家族を見たし、観光地ではロシア語を話す人たちを見た。ただし彼らがロシアの人なのかは不明である。

 

 

これは残波岬だが、どの場所からの撮影したか忘れてしまった。この辺りは小雨かな?と思うような大きな波の飛沫が霧のようにかかってくる。

 

 

灯台近くから見た海。

 

 

灯台横から北の方角。岩場に入って行きうっかり転倒すると大怪我をしかねない。

 

 

 

残波岬は地域猫がかなり多い。この三毛猫に限らず、かなりのネコの数である。人に慣れており、近づいても逃げず観光客に撫でられているネコもいた。

リエゾンで遭遇する「死んでも良い」という言動の背景

身体科では、治療中の患者さんが「死んでも良い」などと訴えると、こりゃ大変と言った感じで、精神科にコンサルトする。紹介状の文面には「これはうつ病ではないですか?」と言う質問もあることがある。

 

このような患者さんの診察をすると、ほとんどは「うつ病」ではない。

 

そもそも死にかねないうつ病患者は主治医に対し「死んでも良い」なんて言わない。

 

つまり、「死んでも良い」と言うフレーズは主治医に対するアピールなのである。

 

それは疼痛であったり、思うように動けないためのストレスだったり、退院できないことの苛立ちだったりする。

 

つまりリエゾン患者が訴える「死んでも良い」は、精神科のうつ病患者より遥かにエネルギーがある。

 

もし彼ら彼女らが外来だったとしたら、到底、精神科には受診しないような人たちである。

 

そのような理由で、このタイプの患者さんに抗うつ剤を処方した記憶がない。もっと異なるアプローチの方が良いのである。

石垣島のハブの話

石垣島 川平湾の美しい海と遊覧船

上の写真は石垣島の観光スポット、川平湾。

 

石垣島は沖縄本島周辺の離島では、最も観光地として開発されている島である。今でも沖縄県の離島では最も観光地として人気がある島だと思う。石垣島から船で行ける西表島、竹富島、小浜島などの離島も観光地として知られている。

 

僕が初めて石垣島を訪れたのは約35年くらい前で、短い期間に2回くらい行ったような記憶がある。一度は3月の春分の日でこの日が海開きであった。今は温暖化が進んだためか、3月中旬頃と少し早まっているようである。

 

3月の海開き日に泳いだが、海はさほど冷たくはなく、むしろ風が強く上がった時に寒かった。いったん海に入ると風が寒くて容易に出られない感じだった。ぬるま湯の温泉のようにいつまでも海に浸かっていた。

 

初めて石垣島を訪れた時、あまりに都会だったことに驚いた。ドラゴンクエストに出て来る離島をイメージしていたからである。特にデパートらしき建物があったのは驚愕だった。

 

現在の石垣島は人口は5万人弱であるが、地方都市にあるものはほぼある。例えば、ニトリ、ドンキ、CoCo壱、モスバーガー、ほっともっとなどである、コンビニもあるが、全てのチェーンはなくファミリーマートのみ展開している。

 

石垣島は東京や福岡からは直行便があるほどで、沖縄本島に行かなくても単独の観光地として完結している。沖縄近辺の石垣島と宮古島は離島として有名だが、先に行くなら石垣島だと思う。

 

過去ログに書いたような気がするが、石垣島は土地が肥えているためパイナップルが採れる。しかし宮古島は土地が石垣島ほど肥えていないためパイナップルが採れないという。パイナップルが採れる島はハブがいるが、採れない島はハブがいない。この理由はエサの多寡に関係しているという。これは当時、県立八重山病院に勤めていた精神科医から聞いた話である。県立八重山病院にはもちろん精神科がある。

 

実はこの説は間違っているという話もある。まずハブは自力で海を渡れない爬虫類で、宮古島は氷河期でさえ他の島と陸続きにならなかったことからハブがいないと言う説がある。宮古島は沖縄本島から300km、石垣島から130kmも離れており、宮古海峡という深い海に隔てられている。そのようなことから宮古島には爬虫類の種類も少ないという。なお、トカゲはヘビと異なり爬虫類でも漂流で海を渡ることもあるらしい。(こちらが有力)

 

ヘビ類は貨物輸送で紛れて島に運ばれるケースがある。特に有名なのはグアム島にミナミオオガシラというヘビが貨物輸送で運ばれ、その結果、グアムの鳥類がほぼ絶滅した事例がある。グアムのジャングルは鳥の鳴き声が一切なく静寂な島である。

 

アメリカはこのミナミオオガシラの絶滅作戦で、タイレノール(日本ではカロナール)を死んだネズミに紛れ込ませ空から大量にばら撒いている。カロナールはヒトは特異体質でない限り安全だが、ミナミオオガシラは代謝できず死ぬらしい。この作戦はけっこううまく行っているようである。以下のYouTubeは参考になるので興味がある人は見てほしい。

 

 

宮古島はハブが偶然紛れて来ることがなかったか、偶然来ても餌の関係から定着できなかったかのいずれかだと思う。

 

石垣島 川平湾の白い砂浜と青い海

これも川平湾。この日は直前まで雨が降っており、青さが今ひとつ。

 

石垣島 川平湾の観光船と緑豊かな木々

 

石垣島 川平湾の海と山、観光船

 

石垣島のハブは独自の進化を遂げ、沖縄本島より毒が弱いという。これは、エサに相違があるかららしい。沖縄本島のハブは強毒で噛まれると死亡する事例がある。それに比べて石垣島のサキシマハブは弱毒でほぼ死亡例がない。

 

これはサキシマハブは出血毒中心で、沖縄本島のハブに比べ、壊死、神経作用が弱いことが関係している。

 

沖縄本島のハブはネズミや鳥など大型の動物を捕食しており、強毒で一発で仕留める必要がある。一方、サキシマハブは小型のトカゲやネズミ、カエルなどを捕食しているため、弱毒で動きを止めるだけで良いらしい。サキシマハブは長い時間をかけて、沖縄本島のハブより小型で、弱毒のヘビとして進化してきたとの話である。

 

このような進化の結果、石垣島のサキシマハブに噛まれても、それで死ぬことがほぼないため、噛まれても血清を使わないという。その理由は血清によるアレルギー反応で死亡することがあり、その方がむしろ重大だからである。僕が石垣島を訪れた当時の話なので今もそうなのかは詳しくない。

 

今、この話が興味深いと思うのは、新型コロナウィルスの弱毒化とワクチンの話に似ていることである。ここ数年で新型コロナウィルスは弱毒化したこともあり、人々の関心も薄れ、ニュースで報道されることも減少し、ワクチン接種率がかなり下がっている。

 

石垣島 川平湾の青い海と緑の植物石垣島川平湾の穏やかな海と山の風景

浜まで降りるとこんな風景。

 

抗うつ剤を飲み始めて彼氏と喧嘩しやすくなった話

抗うつ剤を服用し始めて彼氏と喧嘩しやすくなったという話を聴いた。この話は色々なことを考えさせられてとても奥が深いと思った。

 

 

まず、彼女は彼氏とのコミュニケーションにおいて、以前とは違うと言っている。本人が喧嘩しやすくなったと言うので、些細なことで怒りが出やすいなどの変化があったのだろう。しかもそれを本人は自覚できている。

 

抗うつ剤はうつ状態を改善する薬だが、場合によれば躁転を来したり、副作用としてイライラ感や神経過敏が出現することもある。従って、その喧嘩をしたという今までとは異なる本人の心理状況、態度変化がどのレベルの規模なのかは重要だと思う。

 

古典的な躁転は、薬物性であれ洞察ができないことが多いため自分で「前より喧嘩しやすくなった」と言う細かい変化に気付けないと思う。従って前より喧嘩しやすいくらいでは、真の躁転とは言い難い。

 

いわゆる2型躁転レベルだと、喧嘩しやすいくらいはあるかもしれないが、同時にそれ以外の精神症状の変化もあると思うので、細かい日常生活での変化を聴取することは重要だろう。彼氏との人間関係だけでなく、親しい同性の友人や家族も本人の変化に気づくはずだ。「彼氏と喧嘩をしやすい」ことは2人の人間関係でのみ生じるので、それ以外の同性の友人や家族はほぼ目撃できない。従って彼女らの意見は非常に参考になる。

 

そもそも、抗うつ剤でそのような変化が生じた時、いかなる抗うつ剤を服薬しているかは非常に重要だと思う。

 

古典的抗うつ剤、例えばアモキサンのようにパワーがある抗うつ剤では、真にI型躁転が生じることがあり、「彼氏と喧嘩しやすくなった」どころではなくなる。入院治療まで必要だからである。底上げ、上への爆発力を持つ薬は、ちょっと喧嘩しやすいくらいの中途半端な変化はむしろ稀のように思う。

 

問題はSSRIである。SSRIの薬理特性として、細かいことへの拘りが少なくなるので、むしろ彼氏との喧嘩は起こりにくくなるように見える。つまりジェイゾロフトのように「まあ、いっか」の心理変化である。

 

しかしながら、SSRIでは奇異反応と呼ばれる一時的に悪化する現象が起こることがある。SSRIの奇異反応とは、本来は不安や抑うつを和らげるはずのSSRI投与後に、逆に不安・焦燥・衝動性・易怒性などが悪化するという逆効果のような反応を言う。

 

奇異反応はまだ良くわかっていないことも多いが、SSRI投与初期にシナプス内セロトニン濃度が急上昇し、受容体バランスが一時的に崩れ、一過性に「神経過敏状態」を生じる。これはactivationと呼ばれる。

 

この奇異反応は向精神薬に限らず、大抵の薬で言えることだが、初期に起こることがあり、半年後とか1年後に起こったりはしない。また、まだ脳が未成熟な若年者に生じやすい。添付文書に記載されている「若年者に希死念慮や自殺衝動の一時的亢進」などの注意喚起などもこの奇異反応に含まれる。

 

例を挙げると、ASDの人に診られることがある「慢性的な希死念慮」に対し、SSRI処方は十分に注意すべきなのは、この奇異反応が生じ得るからである。

 

奇異反応は結構激しい変化なので、「以前より彼氏と喧嘩しやすい」くらいでは済まないと思う。しかし投与初期に生じたとしたら、念のため、一応、中止してみるくらいの慎重さは必要であろう。いったん休むことで2回目は問題がないこともあるからである。(ある種の慣れ)

 

抗うつ剤を服薬し始めて時間が経ち、「次第に彼氏と喧嘩しやすくなった」ケースは非常に細かい検討が必要である。

 

それは抗うつ剤の悪い影響なのか?あるいは治療過程でそうなったのか?である。

 

トリンテリックスは体が動くタイプの抗うつ剤なので、今までの男女関係が次第に変化することがある。つまりうつが長期に遷延していた時は、彼氏もそのペースに合わせて付き合ってくれていることが多い。

 

また、合わせると言うより本来2人とも似ていて、かなりスローペースで付き合っていたのに、トリンテリックスのように活動的にする抗うつ剤により、そのバランスが崩れてしまうケースもある。

 

これは抗うつ剤による悪い結果と言うより、うつが改善した発展的な経過と診ることもできる。

 

かつて古典的抗うつ剤、アモキサンはこの現象があり、処方の際に注意を要した。アモキサンは薬剤性躁転も起こりやすい抗うつ剤だったので、その面でも注意が必要だった。

 

その男女関係が治療前に、女性が男性に依存せざるを得ない関係だと、女性の抗うつ剤治療により精神症状が改善し依存する必要がなくなり、2人の関係が壊れるケースがある。具体的に言えば、女性が男性に別れを告げるのである。

 

このような経過では、男性に急に精神疾患が顕在化したり、時に自殺まであり得る。きっと男性はその女性の面倒をみることで精神のバランスが取れていたのであろう。それがなくなることで、自らの精神疾患が顕在化するのである。もちろん全てのカップルで起こるわけではない。今回の記事に参考になる古い過去ログに、「配偶者の自殺」と言う記事がある。

 

 

SSRIは爆発的な効果がない代わり、穏やかにそこそこ改善するし、低空飛行気味に改善する人も含め、このような劇的な人間関係の変化を来しにくい。それは上で書いた「まぁいっか」という気持ちになる傾向があることも関係している。

 

精神科医は、本人が良くなったとしたとしても、離婚したとか、彼氏と別れた話を聴くのは快くない。それは精神科医は患者さんの人生に、そこまで影響したくないからである。

 

とは言え精神科の治療には、なるようにしかならない面があるのも確かである。

 

最後に思い出したが、小此木先生の書籍の中に、「治療は上手くいったが、唯一残念なことは彼女が離婚したこと」という話が出てくる。

 

これを読んだ当時、僕は小此木先生に彼女が陽性転移した結果、そうなったことを残念に思っているのか、あるいは離婚という好ましくない結果を、治療の経過でもたらしたことを悔いているのか、よくわからなかった。なにしろその書籍を読んだのは27歳頃だったからである。

 

今から考えると、小此木先生の真意は不明だが、今回の記事のようなことが精神分析的治療でも生じたのでは?と想像している。

 

以下は小此木先生の記事の過去ログ。

 

 

参考

 

 

この記事の中にトリンテリックスの効き方についての記載がある。以下抜粋。

 

例えばトリンテリックスは体が動くようになるタイプであるが、躁転と言えるほどではないにせよ、無駄なエネルギーが出るような効き方なので、周囲の人との人間関係を悪化させることがある。

 

いわゆる向精神薬を服薬してエネルギーが良い方向に行っていない状態。

 

トリンテリックス服薬中の対人関係の悪化は、抑制がないことや、言い過ぎることから来ている。動けることが裏目になっているのである。