
セルシンの注射アンプル販売中止
しばらく前だが、セルシンの注射剤の販売が中止された。しかし併売薬のホリゾンは販売継続されているので困るわけではない。先発品で併売薬の1つがいつの間にか販売中止されるのは時々あることである。
例えばエナデールとセパゾン、サイレースとロヒプノールもそうである。
昔、大学病院ではエナデールと言う抗不安薬が院内薬局にあり、セパゾンはなかった。しかしその後、いろいろな病院で勤めていた当時、併売品でもエナデールよりセパゾンのほうが多く処方されているように見えた。実際は売上的にどうだったかまでは知らない。
サイレースとロヒプノールもロヒプノールのほうが多く処方されているによう見えたが、なぜかサイレースの方が残った。これはエーザイが販売権を継承したためで、ネットで調べると、AIにまで、ロヒプノール=悪だからのような記載がされているが、多分そのような理由からではない。
https://www.eisai.co.jp/news/pdf/news201703pdf.pdf
なお、ロヒプノールとサイレースは販売チャンネルの相違があり、おそらくだが、クリニックではサイレースが主に流通し、単科精神科病院ではロヒプノールが多く納入されていたと想像する。うちの病院の門前薬局では、サイレースとロヒプノールを両方置いていた。なぜかと言えば、患者さんがサイレースとロヒプノールとフルニトラゼパムには効き方に相違があると言うからである。以下は古い記事だが、抗不安薬の強さを示す換算表を記載している。
以下は患者さんから聴いた、ロヒプノール、サイレース、フルニトラゼパムの効き味の相違について、2013年の記事である。
セルシンとホリゾンの注射剤についても感覚的には併売薬でも有名ではない方が残った印象である。なぜなら、セルシンのほうがホリゾンより多く処方されているような印象があったからである。
セルシンの注射薬には5mgアンプルと10mgアンプルの2種類あり、てんかん発作などでは主に10mgアンプルを静注で処方し、効かない場合は増量し連続で静注する。5mgは不安緊張などに筋注で処方することが僕は多かった。多かったとはいえ、滅多にない場面である。
典型的にはASDや重い神経症患者さんのパニック〜亜昏迷などである。これに対し、セルシン5mgは筋注後、しばらくして魔法が解けたように亜昏迷から脱していた。
なぜ筋注なのかと言うと、特にASD患者さんは薬に脆弱性があるケースでは死亡事故もありうるからである。そのような事態になった場合、単科精神科病院では対応できずリスクが避けられない。筋注だとじわり効果が出るので多少は安全である。またセルシンの筋注はかなり痛いため、このような亜昏迷には疼痛さえ治療的であることもある。
過去には精神科救急でロヒプノールの注射剤で、普通のサラリーマンへの静注の際に死亡事故が起こり裁判で病院が負け1億円以上の支払いを命じられた事例がある。もちろん、そのサラリーマンはかなり精神状態が悪かったのだろう。医療ミスとは言い難い死亡事故には裁判所は辛い判決を出すことが多い。おそらく、「病院は保険に入っているだろうから支払ってやれよ」という感覚なのだろと思う。
精神症状が重くかなりの鎮静を要する場面では、このタイプのベンゾジアゼピンよりセレネースやトロペロンの筋注のほうが事故が起こりにくい。統合失調症ではないにしても症状の規模が大きければ大きいほどそうである。セレネースやトロペロンが完璧に安全かと言うとそうではなく、酷く重い場合、既に緊張病症候群に近い病状なので悪性症候群に移行するリスクがある。
つまりこのような重い病態で医療行為をすることは、リスクなしという道順は通って行けないのである。
今回の記事で記載した内容は、ある種の製薬会社による精神科の処方薬の再編なんだと思う。
かなり安価な向精神薬は、そうでもしないと経営的にやっていけないのである。
参考
