9/17(木)は、ここにいました。
東京メトロ「東陽町」。駅や街の名前は知っていたけど、降りるのは初めてでした。降りてみたら…
このあたりは「江東区」の中心地のようですね。大きな建物は、左から江東区役所、江東区防災センター、そして防災センターの向こうに見えるのが…
私の目的地、江東区文化センターです。この日は、これを↓観に行きました。
国立劇場が主宰する文楽(人形浄瑠璃)。国立劇場の建物は建て替えのために休館中なので、各地のホールを借りての公演が続いています。この日の演目は『二人三番叟(ににんさんばんそう)』と『仮名手本忠臣蔵』の2つ。
江東区文化センターのホールは、小ぶりですが見やすくて良かったです。(以下、舞台上の画像はすべて借り物)
第一部の『三番叟』↑は、平穏な日常と豊かな実りを祈ってお祝いの場などで演じられる、音楽と舞が中心の舞台。特にストーリー的なものはないようです。
二人の翁(おじいさん)が舞いますが、途中で片方が躍り疲れて、舞台の隅に座りこんでしまい、布で汗を拭いたり扇で顔をあおいだりしてサボります。それに気がついたもう一人の翁が「真面目にやれっ!」と頭をポカリ。客席からはどっと笑いが起きます。
観ている人は「ここは笑うところ」と知っているんですね。私は「文楽にも滑稽な、笑いを取る場面があるんだなぁ」と面白く思いました。
続いて、太夫(語り)、三味線、人形を担当する方々による「文楽の魅力」の解説がありました。文楽では、主役級の人形は1体を3人で操りますが、誰がどの部分を動かすかなど、詳しく説明して頂いて勉強になりました。
そして第二部の『仮名手本忠臣蔵』は、もちろん「赤穂浪士」「四十七士の討ち入り」で知られる物語ですが、今回はその中のサブストーリー「おかる勘平」の物語が演じられました。あらすじはザックリ、こんなふうです。
赤穂藩士だった早野勘平は自身の不手際から藩をクビになり、侍の身分も失ってしまった。奥さんのおかるの実家に住み込んで猟師をやっていた勘平は、ある日の夜、暗闇のなかでイノシシと間違って人を撃って死なせてしまう。相手が誰かは分からなかったが、ふところに大金が入った財布があるのを見つけて、ついつい持ち帰る。
しかしひょんなことから、その金は勘平の養父が、娘のおかるを祇園の店に身売りして、勘平が討ち入りに加わるための資金にするつもりだった金だと分かる。養母や藩の上役から責め立てられた勘平は、ついに覚悟を決めて…
私は「おかる勘平」という名前だけはずっと前から知っていました。「ロミオとジュリエット」とか「ハムレットとオフィーリア」、「トリスタンとイゾルデ」「オデット姫とジークフリート王子」「安珍清姫」「徳兵衛とお初」みたいな、有名な恋人同士のことだろうなとは思っていましたけれど、忠臣蔵の登場人物だということはこの舞台を観て初めて知りました。お恥ずかしいかぎり。
国立劇場の公演は、詳しい解説と、太夫の語りがすべて紹介されているのでとても分かりやすく、助かります。映画やお芝居でいえば、すべての登場人物のセリフがきっちり記録されたパンフレットのようなものがあって、無料で配ってくれるんです。さすが国立劇場。
また、劇場によっては字幕が出るところもありますが、この日の江東区文化センターのホールのような字幕システムが無い劇場では、スマホの画面にセリフが投影されるアプリがあるんです。明るく光ったりしないので便利。私もお世話になりました。
「おかる勘平」の面白さは、観客は「何が起きたのか」を知っているけれど、舞台上の登場人物は全員がひどい勘違いをしていて、勘平は結局、失わなくても良い命を失ってしまうという設定です。だから観ている側は「ああ、そうじゃない、そうじゃないんだよ!」とやきもきしつつ、悲劇に向かって進む物語に付き合うしかありません。
最後の最後、勘平の無実は明らかになるのでそこは救いといえば救いです。とはいえ、なんとも後味は重くて暗いストーリーですね。決して「スカッと気持ち良く終わる」話ではない。
そして前にも書きましたが、バレエやオペラと違って文楽には「カーテンコール」というものがないので、幕が降りると同時に場内はパッと明かりがついて、ズーンと重くなった気持ちを抱えながら席を立つしかありません。うーん![]()
でも、とっても魅了されたことは確かです。私は物語の本筋から離れたところでも、きっちり「詰め」られている部分に感心しました。たとえば…
●猟に出ていた勘平が、たまたま赤穂藩の先崎弥五郎に会い「自分も討ち入りの仲間に加えてほしい」と告げるが、弥五郎は「討ち入り?そんな計画は無い」としらばくれる。だが「今は供養のための石碑を建てようと御用金を集めているところだ。この意味、分かるな?」と、それとなく討ち入りの計画が進んでいることを言葉と表情で伝える場面。人形なのに「分かるな?」というデリケートなところを見事に演じていて、私はとても感心しました。
●祇園の店から「おかる」を迎えに来た一文字屋才兵衛が、勘平の家の前で駕籠を降りて家に入る。二人の「駕籠かき」は家の外で一服しながら「ああ、やれやれ」という風情で汗をぬぐう場面。舞台の片隅で、観客が気がつくかどうかも分からないどうでもいい部分ですが、細かいところまできっちりやるんだなあと思いました。
●クライマックス。切腹して身の潔白を訴える勘平。ようやく真実に気がついた藩の上役が、まだかすかに息のある勘平に「分かった。討ち入りの仲間にお前も加えよう」と言って巻物に血判を押させる場面では、藩の上役の一人が「重大な秘密を誰かに聞かれないように」と、家の玄関をそっと閉めるんです。ここも、細かいなぁ!と感心しました。
私には人生4回目の文楽観賞でしたが、まぁこんな感じで、勉強にもなったし楽しめたし、良い時間を過ごすことが出来ました。この記事をきっかけに、私のブログの記事に「文楽・歌舞伎・能など伝統芸能」というテーマを新たに設定して、ひとまとめにしますね。よろしくお願いいたします。
<おまけ>
第二部の「おかる勘平」の勘平は、本名が「早野勘平」です。それを知った私の頭のなかに、何かがボンヤリ浮かんで来ました。「???」と思って考えるうちに思い当たったのは…
はい。帽子芸でお馴染みの「早野凡平」さん。「笑点」とか「大正テレビ寄席」とか、昭和の演芸番組によく出ていましたよね。お名前はもちろん芸名ですが「早野勘平」が元ネタなのかな?と思ってしまいました。ちょっと調べてみたけど分かりません。
昔は忠臣蔵の話などは、教養というか一般常識として多くの人が知っていましたから、早野凡平といえば「早野勘平のもじりだよね」と気がつく人がたくさんいたのでしょうね。私は気がつくのに50年以上もかかってしまいましたが
こういうことも、長生きする面白さ。




























































































