青森県上北郡おいらせ町にある向山駅は、広い駅前空間と静けさが印象的な無人駅です。
かつては東北本線の途中駅として機能し、現在は青い森鉄道の駅として地域に寄り添っています。
駅舎の一角には「向山駅ミュージアム」が設けられ、鉄道ファンや地域の方々の交流拠点としても活躍。
広い構内跡や貨物支線の痕跡など、往時の賑わいを感じさせる要素も点在します。
観光地の華やかさとは違う、日常と記憶が静かに息づく駅――そんな向山駅を、今回もゆっくり歩いてみました。
向山駅|駅舎と駅前
向山駅は1922年(大正11年)に東北本線の信号場として設置され、その後、1936年(昭和11年)に駅に昇格しました。
2010年(平成22年)の東北新幹線全通に伴い、並行在来線が第三セクターの青い森鉄道へ移管され、現在の姿になっています。
駅舎
平屋のコンクリート駅舎があります。
外観の雰囲気や劣化具合からすると、昭和40〜50年代頃の建築ではないかと想像しますが、正確なところは調べることができませんでした。
駅前
駅周辺には大きな集落はなく、とても静かです。
駅前広場は驚くほど広く、イベント時にも困らないほどのスペースがあります。
左側に写っている建物は、地域の方が設置してくださったトイレです。
向山駅|駅内部
この駅にもたくさんの図書が置かれていました。
無人駅でありながら、内壁は塗り替えられていて明るさが保たれています。
出札窓口跡
出札窓口は完全に封鎖されていて、普段は業務部分の様子は全く分かりません。
「普段は」と書いたのには理由があります。
駅舎を出て左手に向かうと、封鎖されていた業務部分が「向山駅ミュージアム」として公開されていることに気づきます。
おそらく休日のみの開館ですが、かつての業務スペースに入ることができ、当時の備品やNゲージの展示も楽しめます。
このミュージアムは地元の方々が中心となって運営していて、会員は全国にいます。
実は私もその一人。 年に1〜2回のイベントでは、地元の物販や青い森鉄道のグッズ販売もあり、楽しい時間を過ごしていました。
以前はイベント時期に合わせて青森県内の仕事を設定していましたが、今はその仕事もなくなり、福岡からの参加は費用的にも難しくなってしまいました。
もし今も続いているなら、また行きたいですねえ。
弁慶号
ミュージアム横に展示されているミニSL「弁慶号」です。
動くわけではありませんが、イベント前には地元の皆さんと一緒に洗車したりしていたのが懐かしいです。
向山駅|駅構内反対側
向山駅は構内を挟んで反対側にも出入口があります。
跨線橋が延長され、こちら側からも出入りできるようになっています。
ただし、駅舎やトイレはありません。
馬のモニュメント?
近くに「かわよグリーン牧場」があるので、その関連かもしれません。
駅前
こちら側はすぐ道路に面していて、交通量はこちらのほうが多い印象です。
「かわよグリーン牧場」の案内板もあります。
私もイベントのついでに訪れたことがあります。
動物とのふれあいや自然体験ができる観光牧場で、レストランでは地元食材を使った食事が楽しめます。
コテージなど宿泊施設もあり、滞在型の利用も可能。
駅から徒歩20〜25分ほどです。
向山駅|構内
跨線橋
跨線橋自体は古そうです。
奥の部分は反対側への通路となっていて、外観同様、継ぎ足したような雰囲気があります。
駅舎から直接乗車できるホームはありません。
かつては駅舎側に多くの側線があったことが想像できます。
構内は島式1面2線です。
左側(駅舎側)の広い敷地には保線車両の車庫らしき建物があります。
その左には立派な防雪林。
野辺地ほど雪が多い地域ではないので、防風林としての役割が大きいのかもしれません。
地図を見ると、この防雪林のさらに左手へ向かって、かつて貨物支線が延びていた痕跡があります。
この空き地も、貨車の入れ替えなどで賑わっていたのでしょう。
調べてみると、ここにはかつて米軍三沢基地へ燃料を運ぶ石油専用線(POL線)と、1960年代にてん菜(ビート)栽培の拠点として建設された「藤日本製糖(のちの新日本製糖)青森工場」へ続く専用線が引き込まれていたそうです。
一本の太い専用線が途中で分岐し、工場用と燃料用に分かれる構造だったとのこと。
最盛期には原料のてん菜や製品の砂糖、そして燃料を積んだ貨車が頻繁に行き交い、まさに地域の巨大な物流ターミナルだったのでしょう。
現在の静かな無人駅からは想像できないほどの広い敷地は、「砂糖」と「燃料」という二つの資源を支え続けた場所なのです。
島式ホームに降りてみました。
ここから見ると駅舎までの距離が遠く感じます。
駅名標
青い森鉄道オリジナルの駅名標があります。
向山駅|東北本線の駅だった頃
ここからは15年以上前、東北新幹線が八戸までしか開業していなかった頃の向山駅です。
駅舎
駅舎は現在と同じ建物が使われていました。
駅前
駅前の風景も大きくは変わっていません。
地方の駅らしい、ゆっくりとした時間が流れています。
駅舎内部
当時から無人駅でした。
出札窓口がどうなっていたかは記憶にありませんが、撮影していないところを見ると、現在と同じように封鎖されていたのだと思います。
本棚や飾り付けのないがらんとした待合室は、今よりも寒々しく感じました。
跨線橋
駅舎を出たところから見た跨線橋です。
現在と同じように反対側への通路もありました。
駅名標
当時の駅名標です。
背後の景色からすると、上写真の青い森鉄道仕様の駅名標と同じものの裏表を撮影したのだと思われます。
向山駅|まとめ
向山駅は、広大な構内跡に往時の貨物輸送の面影を残しながら、現在は「人の手のぬくもり」によって新たな時を刻んでいる駅でした。
1922年の開業以来、東北本線の重要拠点として「砂糖」や「燃料」という地域の経済とエネルギーを支え、2010年からは青い森鉄道の駅としてその役割を引き継いできました。
無人駅でありながら、地元の皆さんの手によって守られているミュージアムや、明るく整えられた待合室。
そこには、かつての活気を受け継ぎ、駅を愛し続ける人々の情熱が今も息づいています。
駅の歴史を調べれば調べるほど重厚な物語と温かな絆が伝わってくる――向山駅は、そんな「生きた記憶」に出会える場所でした。
**********
向山駅情報
札幌駅、東京駅、名古屋駅、大阪駅、高松駅、博多駅から向山駅へのアクセス
札幌駅から:13時15分着 所要時間7時間15分 18,430円 新函館北斗・新青森・青森乗換
東京駅から:11時01分着 所要時間3時間29分 17,570円 八戸乗換
名古屋駅から:13時37分着 所要時間5時間08分 24,500円 東京・八戸乗換
大阪駅から:13時37分着 所要時間6時間12分 26,820円 新大阪・東京・八戸乗換
高松駅から:13時37分着 所要時間8時間02分 29,980円 岡山・東京・八戸乗換
博多駅から:14時49分着 所要時間8時間49分 34,950円 東京・八戸乗換
*データはNAVITIMEで検索したもので、平日、鉄道だけで最も早い時間(最速ではありません)に到達できる時間と料金です。
青森の駅をぐるり 記事リスト
北高岩駅|昭和の風情が残る木造モルタルの無人駅 青森の駅をぐるり2
陸奥市川駅|モダンな駅舎に秘められた軍事輸送の歴史 青森の駅をぐるり3
向山駅|愛好会が守るミュージアムと廃線跡の記憶 青森の駅をぐるり5
三沢駅|消えた十鉄と「白樺駅舎」の記憶をたどる 青森の駅をぐるり6
千曳駅|鉄道の歴史が交差する静かな秘境駅 青森の駅をぐるり10
野辺地駅|今も残る東北本線主要駅の風格 青森の駅をぐるり11
狩場沢駅|白鳥が駆け抜けた冬の東北本線 青森の駅をぐるり18
西平内駅|夏泊半島の付け根に佇む静かな無人駅 青森の駅をぐるり21
浅虫温泉駅|東北の熱海と善知鳥崎の歴史 青森の駅をぐるり22
野内駅|旧野内駅・貨物駅時代の面影残る広大な構内 青森の駅をぐるり23
八戸駅|元は尻内駅・新幹線が結ぶ駅の歩み 青森の駅をぐるり27
本八戸駅|元・八戸駅の風格!八戸中心街を支える駅 青森の駅をぐるり29
※お越しになった日にちによっては公開前の記事があります ![]()
これまでの駅舎・駅めぐりブログ
群馬県のJR・上信電鉄の駅をめぐります
宮城県の仙台市地下鉄の全駅をめぐります
熊本県内のJR駅をめぐります

写真は、平成10〜20年代撮影のものが多くあります。現在の状況とは変わっていることがありますので、参考にする際はご注意ください。
また、当ブログをご利用される際は、必ずこちらの記事「免責事項について」をお読みの上、ご覧ください。





















