kyupinの日記 気が向けば更新 -878ページ目

お盆

今日はお盆だったが、一応、病院はオープンしていて意外に患者さんが来た。先週末、デイケアはお休みだったが、今日は実施していて、メンバーさんもたくさん来た。OTはお休み。このあたりはコメディカルの自主性に任せているので、今日、デイケアをすると言うのでびっくりした次第。


今日は新患が2名だった。オープンしているので来てもおかしくないのだが、特に彼らは電話で確認して来たわけではなかったようだ。今日は少なくて暇かもと思っていたので、ある意味アテ外れ。それでも、とても忙しいと言うほどではなかったので良かった。


リスパダール

一般名:リスペリドン

薬物プロフィール

日本で初めて発売されたSDA。ヤンセンファーマにより開発されている。長く世界で売り上げ1位であったが、現在は売り上げではジプレキサ、セロクエルに抜かれている。ただ、薬価がこれらの薬より安いため処方箋数ではトップに並ぶくらいはあると思う。日本での発売時期は1996年で、他の非定型抗精神病薬に比べて断然早かった。

剤型は1、2、3mgの錠剤、細粒、液剤がある。液剤は、0.5、1、2mgの3種類の分包がある。分包はよく工夫されており、簡単にしかも正確に服薬でき、しかも不潔にならない。味は少し苦味がある。液剤は従来はボトルに入っていて(これは今でもあるが)、注射器などで吸い取って服用させていたが、分包が発売されて便利になった。液剤の難点は薬価が高いこと。1.5倍くらいならまだわかる。3倍もするのはなぜ? 錠剤に比べて差がありすぎる。リスパダールの錠剤は従来それほど高くなかった。しかしある時薬価が突如上がり、現在は2mg錠で90円弱。非定型抗精神病薬にしては安いと言ったところ。

リスパダールは非定型抗精神病薬にしてはハロペリドール的な薬物で、陽性症状に対する効果も大きいが、量が増えると容易に錐体外路症状が出現する。最初発売された時は12mgまで処方できるような感じであったが、現在、添付書には原則6mgとされている。実際は病状に応じて12mgまで使えるわけだが。

当時、ヤンセンにモニターみたいな仕事を頼まれて長期に経過を追ったことがあった。(3年ほど) この時、僕は最高量としては2名だけだが、14mgまで処方している。その2名は、12mgよりは14mgの方が明らかに良かったことを記憶している。リスパダールは原則12mgまでの処方だが、医師の裁量によりもう少し多くの量が処方できると思われる。保険でこれが削られるかどうかは県により異なっていて、厳しい県ではもちろん12mgを超えると減点対象になる。リスパダールは比較的安価なので、少しなら12mgを超えても許される県がむしろ多いかもしれない。僕はリスパダールは多くの人に処方しているが、12mgを超えて処方することはもう6年以上ない。薬価が少し上がった理由は、おそらく最高量の扱いの変更からくる。現在は最高量が6mgになったため相対的に1mgの価値が上がり、薬価も上げられたと思われる。

リスパダールが発売された当初、最も驚いたのは、これを服用した時に悪化する人が随分といたことである。それまで精神科薬物を服用して元の精神症状を悪化させる可能性がある薬物は限られていた。添付書類を見るとわかるが、たいていの抗精神病薬の副作用として精神面の変調は記載してある。しかしそんな副作用は実際はあまりないのだ。警戒しなくてはいけなかったのは、クロフェクトン、オーラップ、PZCなどの賦活系の薬物。それ以外の薬物はあまり注意しなくても良かった。しかしリスパダールを処方すると、本来の症状を悪化させうるので、変更の時に決断が必要だった。

ある患者さんは、ある時、血だらけで来院した。痒いからと言いカッターナイフで肌を切り刻んでいた。もともとそんな風な患者ではないのに、リスパダールを使っただけでこれだ。こんな風な事態は非定型抗精神病薬を使う限り、基本的に覚悟しておかないといけない。何度か痛い目にあうと、次第にリスパダールは使い辛くなる。しかしよい薬であるのは間違いないので、徐々に新規の処方を再開しリスパダールを処方する人数が多くなっていった。

リスパダールはセロクエルやジプレキサに比べD2受容体に対する親和性が大きい(バインドも強い)ので、陽性症状への効果がかなり期待できる。強い5-HT2A遮断作用は錐体外路症状の副作用を軽減するが、D2受容体に対する作用が強すぎて、リスパダールを大量に使えば従来型の薬物と同様な副作用が出現する。陰性症状対する効果も、発売当時はびっくりするほど効果がある人がいたので、新時代の薬物である実感が持てたものだ。あまり喋らずいつもじっとしている人がはきはき喋るようになったり。その後、ジプレキサやセロクエルが発売されると、その不安定ぶりを見るにつけ、いかにリスパダールが安定した薬物であったか、あらためて思い知った。ジプレキサやセロクエルに比べると、リスパダールは非常にタイトな薬物で効果に隙がない。

リスパダールは換算表ではセレネースの倍の力価があると言われる。

セレネース2mg=リスパダール1mg

なのである。ただ、この換算値だが、調査者により少し差異があり、

セレネース2mg=リスパダール1.5mg

という人もいる。2:1なら、リスパダー12mgがセレネース24mgなわけで、まぁそのくらいかなと思ったりするが、実は、現在はセレネース24mgという処方があまりないのである。実感が持てる人が少ないに違いない。

リスパダールの血中半減期は4.3-4.7hrとやや短い印象であるが、その変化体9OH-RISは14.6-15.5とやや長い。変化体は脳内クリアランスも長期であると言われており、そのあたりが安定した効果の理由かもしれない。リスパダールは1日1回投与が可能であるが、副作用の関係で、1日2~3回の処方もけっこう多いのでないかと思う。僕の場合、1日1~3回投与までさまざまな人がいる。過去ログを参照してほしいが、リスパダールの欠点は高プロラクチン血症と肥満を来たすことである。特に高プロラクチン血症の欠点は大きい。肥満は来たすがセロクエルやジプレキサと違い糖尿病に禁忌ではない。

リスパダールは非定型の中では最も陽性症状に効果が高いと思われる。

リスパダール> ルーラン≧ ジプレキサ ≫ セロクエル

しかし、リスパダール以降の非定型に比べ、陰性症状の効果はやや弱い。

ジプレキサ≧ ルーラン≧ セロクエル ≧ リスパダール

この点で、リスパダールは最もセレネース的なSDAなのである。リスパダールは、現在多く処方されているが、新しいSDAが発売されるたびに処方数が減る運命にある。リスパダールは、新しい抗精神病薬の中では過渡的な薬物なのかもしれない。

マイスリー

一般名;ゾルピデム


超短期型の睡眠薬。半減期は2時間。藤沢薬品(現アステラス製薬)から発売されているが、藤沢の自社製品ではない。剤型は5mgと10mg。切れ味が良いので評判が良い方に入る。ドラールの時に話したように薬価が高い。このマイスリーが発売された当時、ハルシオンの健忘の副作用がしばしば話題になっていた。翌日、眠さが残らないからといって、やみくもに半減期の短い眠剤を多く処方するのもいかがなものか?という風潮があり、長期型で副作用が少ないドラールがタイミングよく発売になった。ちょうど同じような時期にマイスリーは発売された記憶がある。


マイスリーは、確かにハルシオン(半減期2時間)やデパス(半減期6時間)に比べて健忘が少ないような気がする。というか、患者さんのそんなエピソードが少ない。健忘というと認知症っぽい症状に見えるが、眠剤の健忘はちょっとニュアンスが違う。例えば、「ハルシオンを飲んで寝たら、朝起きてみると、洗濯物がすべて室内に干してあって、汚れていた茶碗もすべて洗ってあった。が、全然そんな記憶がない。」と言った感じ。(2人で大笑い) これって、明らかに老人の健忘のような症状とは違うでしょ。マイスリーは、正確には統合失調症やうつ病(躁うつ病も含む)の不眠には適応がない。だから、例えば統合失調症の不眠には使えない。これは大変な制約である。なぜこうなったかというと、治験時にこんな風に制約をつけた方が早く認可されるからという話であったが正確なところは知らない。もちろん、外国では統合失調症や躁うつ病でも処方できる。日本だけのローカルルールなのである。


うつ病の診断では処方できないが、そう書かなければできるので、仕方なく例えば「抑うつ神経症」とする。えらい違いなので、これは苦肉の策。なぜこうなのかというと、うつ病の人には例えばパキシルやアモキサンなどの抗うつ剤が処方されているので、整合性があわなくなるからだ。もちろん、パニック障害プラス不眠症でも良いのだが、パニックなんて全然ない場合など、あまりにもかけ離れたりすると、精神科医としてちょっと心が痛む。レセプトをチェックする人は精神科について素人の場合が多く、抑うつ神経症ならまず合格する。というか、多分そこまでは見ていないんだろうと思う。精神科医がレセプトをみる場合は、あまりにもバカバカしいルールであるのを知っているので、かえって通してくれることもあるが、これは人による。まあ、通らない可能性の方が高いと思うけどね。マイスリーは切れ味が鋭い方なので、統合失調症に使えないのは痛手が大きい。統合失調症の場合、うつ病圏内の診断に比べ変更が効きにくいからだ。統合失調症とうつ病に使えないような眠剤は、基本的にただの不眠症の薬と位置づけられいるんだろうな。それでもなお、マイスリーはかなりの数が処方されていると思われる。ドラール、マイスリーは従来の眠剤の副作用を減じた現代的な薬剤だからだ。

参考
マイスリーと妊娠














アモバン

一般名;ゾピクロン

短期型の睡眠薬。切れ味はかなり良い方に入る。 なぜか剤型は7.5と10mgである。 半減期は約4時間。マイスリーが発売されるまで、ハルシオン次ぐ短い半減期の眠剤だった。


欠点は、翌日起きた時に口の苦さが出る人がいること。 アモバンの苦さは吸収された後、血流に乗って体を廻り舌の味蕾細胞周囲の血液から感じている。 つまり体の内部から感じている。だから、うがいをしてもあまり意味がない。苦さを感じる人は翌日の夕方まで苦さがあって不快だ。 個人的に不思議なのは糖衣錠でも普通中味は苦い薬物が多く、アモバンのように翌日の夕方まで苦いとか、食事の味がわからないなんて薬はめったにないこと。 アモバンの苦味を感じる頻度はメーカーの公表より少し高い率のように思われる。 ただ、苦味のきつさの感じ方は個人差があって、苦味を感じるけどそう嫌なほどではないという人もいる。


いろいろと眠剤を飲んでもなかなか眠れない人は、アモバンで眠れることがあんがい多い。 そういうこともあって、アモバンはトータルで言えば、評判が良い方に入る。 そんな人は、口の苦さを感じてくると、「ああ、これで眠れると安心する」らしい。 薬の好みはわからないものなのだ。


薬価だが、レンドルミン、アモバン、リスミーがだいたい同じような値段なのが気に入らない。(30~40円程度) アモバンは古い薬のわりに高すぎると思う。 しかしアモバンに比べ、ドラールとかマイスリーは桁違いというか、これはいかがなものかと思えるほど高い。 それに比べればまだマシだ。

うつ病にみられる舌炎

頻度は低いが、うつ病の患者さんに舌炎がみられることがある。どういう機序かわからないが、ひょっとしたらうつ病とは無関係の可能性もある。経験的には年配の女性のうつ病の患者さんにみられる傾向があるような気もするが、頻度が高くはないので断言はできない。これは、本人にとっては大きな悩みの種で、かなり困っていることが多い。なぜなら、食事の時に非常に痛いから。痛くて食べられないというか、味がわからない。

このようなケースでは、普通、ビタミンB6を処方する。これでだいたい良くなることが多い。ビタミンB6とは、あまり聞きなれないだろうが、もともと舌炎に適応があるんだな。それに、ビタミンB6自体、少しうつ病に効果があるようにも思えるのだ。補酵素の種みたいなものなので、神経に効いてもおかしくはない。たぶん、ビタミンB6がうつ病に有効というエビデンスはないと思うけど。

自然療法などの本に、ビタミンB6、うつ病の治療で名前が挙がっていることがある。