kyupinの日記 気が向けば更新 -877ページ目

セント・ジョーンズ・ワート(その3)

注意事項
薬物相互作用の情報

英国において、医療関係者並びに市民に対してセント・ジョーンズ・ワート製品と医薬品との相互作用について注意喚起が行われました。 この注意喚起によれば、セント・ジョーンズ・ワート製品に含まれる成分が薬の分解に関与する酵素の活性を高めるため、ある種の医薬品の血液中濃度が十分に上がらず、治療効果が減弱されるおそれがあるということです。また、セント・ジョーンズ・ワート製品は、英国や米国では医薬品としては認められていませんが、ドイツでは抗うつ剤として使われており、その作用機序は、最近日本でも承認されたSSRIと同様に脳のセロトニン作動性神経を活性化するといわれています。したがって、SSRIと併用した場合には、セロトニンによる作用が増強され、副作用が現れやすくなると指摘されています。

日本でも通販等でセント・ジョーンズ・ワート製品が販売されています。もし、下記に記載した医薬品とセント・ジョーンズ・ワート製品を併用されている方は医師または薬剤師に是非ご相談下さい。

下記の医薬品とセント・ジョーンズ・ワート製品を併用中の方への注意

HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル、サキナビル、リトナビル、 ネルフィナビル)、HIV逆転写酵素阻害剤(エファビレンツ、ネビラピン)

医薬品の血中濃度レベルが低下し、HIV抑制作用が減弱されている恐れがあるので、医師の検査を受けるとともに、セント・ジョーンズ・ワートの中止について医師に相談下さい。

ワルファリン、ジゴキシン、テオフィリン、シクロスポリン、抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール)医薬品の分解が促進され、作用が弱まっている恐れがあるが、セント・ジョーンズ・ワートを急に中止すると分解促進作用がなくなるため、医薬品の血液中濃度が高くなりすぎる危険性があります。医師の検査を受けながら中止の判断を仰いでください。時には薬の量の調節 が必要になるかもしれません。

経口避妊薬

避妊効果が得られない恐れがありますので、セント・ジョーンズ・ワートの使用を中止して下さい。

SSRI(マレイン酸フルボキサミン=デプロメール、ルボックス) 副作用が現れやすくなる恐れがあります。セント・ジョーンズ・ワートの使用を中止して下さい。

英国 Medicines Control Agency ホームページより
ttp://www.open.gov.uk/mca/csm/stjohn.pdf

(これは1998年頃にウエブにアップしたものです)

セント・ジョンズ・ワート(その2)

St.John's Wortはラテン語でHypericum perforatumといい、2000年にわたり愛用されてきた。起源はギリシャ時代に体内の 悪魔払いとして使用されてからと言われている。 ヨーロッパでは20年前から鬱の症状改善に愛用されている。ドイツでは1年間に300万もの処方箋が発行されている。これはプロ ザック の25倍の発行量である。 米国の健康食品店では「カバ・ルート」「プレッグ」等が気分向上の補助剤として人気がある。が、St.John's Wortが1番効果的と言われている。0.3%のHypericum抽出成分を含む300mgのカプセルを1日3回が奨められている。これは有効成分のそれぞれの半減期がまちまちだからである。僕の感想だが、日本人ならば1日2カプセルでも十分と思う。効果が現れるまで数週間かかるといわれている。

副作用についてだが、基本的に安全度はかなり高い。数百万人のドイツ人が服用しているが「死亡」は報告されていない。3,250人のうつ患者を対象にした実験では2.4%のみが軽いアレルギー、不快感 等の軽い副作用を報告したといわれる。その他、重要な点はSt.John's Wortが「日光アレルギー」を引き起こす可能性があること。St.John's Wortを大量服用した羊は太陽を浴びた後病気になり死んだ。人間の場合そのような報告例はまだない。しかし日光に敏感な者は注意を要す。St.John's Wortには依存性も習慣性もないといわれている。だから長期に服用して、ベンゾジアゼピンのように必要な量が増えていくことはないといわれる。またパキシルのように、急 に中止したときに離脱症状が起こることはないとされる。デプロメールやパキシルのように鎮静的でもない。

うつに対する効果は3環系抗うつ剤や4環系抗うつ剤より確実に弱い。これはSt.John's Wortを使って効果がなかった人が、例えばアモキサンやルジオミールで随分改善するのに対しその逆はほとんどないからだ。

St.John's Wort内のHypericum の分布(含有率 )
Flower petals 0.245%
Dried flowers 0.196% to 1.8%
Flesh flowers 0.09% to 0.12%
Whole plant with flower buds 0.042%
Whole plant with open flowers 0.036% to 0.2%
Young whole plant 0.027%
Stems 0.021%
Leaves 0.019%


これを見ると、植物のどの部分がハーブティに使われているかが重要。カプセルなんかは抽出液を加工したものなので総和はかなり多いのではないかと思われる。初めて飲んだひとは、ほんの僅かだが眠さを訴えることがある。副作用として悪夢、多夢傾向になることがある。また、漢方的にいえば中間証以上の人に合いそうな気がする。体が弱い人が飲むと少し胃がもたれるといった訴えがみられる。

なぜ、うつに効果があるのか?
当初、セント・ジョンズ・ワートはMAOIに似た効果を持つのではと考えられていたが、後にセロトニンの再吸収の阻害(つまりSSRI類似)により「うつ」に効果があるのでは?と考えられるようになった。 しかしそのうつに対する効果の機序についてよくわかっていないことも多い。 副作用については、重篤なものは少ない。SSRIにくらべ圧倒的に少ないようだ。副作用について挙げると・・・(ドイツ人の調査)

軽度の胃部不快感ーーーーーーーーーーー0,6%
皮膚アレルギー ーーーーーーーーーーーー0,5%
疲労感ーーーーーーーーーーーーーーーー0,4%
いらいら、落ち着きのなさーーーーーーーー0,3%


日本人では胃部不快感はもう少し高い頻度かもしれない。

(これは1998年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)

セント・ジョーンズ・ワート

和名;オトギリソウ

セント・ジョーンズ・ワートは6月頃、黄色い花を咲かせる。この植物の花や茎の部分を使ってこの生薬は作られる。セント・ジョーンズ・ワートの名前の由来は聖ヨハネの誕生日が6月でこの時期に花を咲かせるからという。ワートは草という意味らしい。歴史的には、セント・ジョーンズ・ワートは外傷に効くので、戦傷者などの治療薬として使われたという。十字軍などで文献に出てくる。

現在はこの効用のウエイトは低くなり、もっぱら鬱に使われる。ドイツでは評価が高くプロザックよりも処方数が多いほどらしい。この薬はタブレットとカプセルの剤型があり、たいてい1つが300mgか500mgの量で売られている。たまに250mg錠も使われる。(液剤もあるらしい)

アメリカで売られているセント・ジョーンズ・ワートはいわゆるジェネリック製品が多く、なんとなく信頼性が薄い。モノによって効果に差があるような気がしてならない。使用した範囲での印象だが、カプセルの方が効果が高い。普通は900mg服用することが推奨されているが、品質が良ければ日本人なら500mgでも十分だ。多めに飲んでもそう害はないと思われる。セント・ジョーンズ・ワートはまだ作用機序が十分わかっていない。普通SSRI的だといわれる。でも文献的にはMAOI的だというのもあるようだ。数年前に、民間療法的にわりあい使用されるようになったため、厚生省がSSRIと併用しないように注意喚起していた。こういう作用機序が想定されているからであろう。

(これは1998年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)

エビリファイ(その5)

エビリファイは順調に処方数を増やしている。エビリファイは、もともとアビリファイなのだが、この呼び名もようやく慣れて来た。(すぐにアビリファイと言い間違う) アビリットとアビリファイはそれほど似ていないと思うので、アビリファイで良いじゃんという不満はある。


当初、やや難しい薬物と思っていたが、今でもやや謎な部分はある。エビリファイはD2の親和性は強力なので、用量が少なくても他の薬物を押しのけて占有してしまう。だから、単剤で使用しないと意味がないと言う意見がある。切り替えの際にエビリファイを追加した際に、それまで処方していた薬物を速いペースで抜くとうまくいかない。エビリファイは効果が浸透するのに時間がかかるのに対し、それまで服用していた薬物の減量の影響が出過ぎるからだ。最初、上乗せで処方した際に従来の薬物の減量のペースには十分に注意する必要がある。


それと、メーカーは6mgから始めてその後増やすように言っているが、この場合、吐き気の副作用が出やすいので、僕は人にもよるが3mgから始めることにした。最初、いきなり吐き気が出て悪い印象をもたれるのもまずい。急に切り替えるとうまくいかない理由として、他の薬物の5-HT2AやH1の影響が脱落して、エビリファイがそのカバーをうまくしないことにもよる。


バインディングが強いので、10mgを超えるとあまり用量に依存しないのではないかと言う意見もあるが、僕はまだよくわからない。ただ、一般に言われているより、少ない量でも日本人の場合やっていけるのではないかと思っている。6mg追加しているだけで、朝の目覚めが良くなり表情もかなりはっきりする人がいて、こういう人はエビリファイが発売されて良かったと言える。エビリファイ1.5mgで維持している人がいるが、超絶に薬に弱い人で、このくらいがちょうど良いのである。現在、最高18mgまでの用量で使用している。


デプロメール

一般名;フルボキサミン
(=ルボックス)


日本で初めて発売されたSSRI。海外からの導入品で、明治製菓からデプロメール、アステラス製薬およびソルベイ製薬からはルボックスの名前で発売されている。効能、効果は、うつ病、うつ状態、強迫性障害、社会不安障害となっているが、社会不安障害の正式な効能がある薬物はフルボキサミンに限られている。強迫性障害の効能もフルボキサミンのみであったが、最近、パキシルも効能が追加されている。一般にSSRIは強迫性障害、社会不安障害に効果がある。実は、アメリカでフルボキサミン(ルボックスの名前で発売)は強迫性障害に効能があるが、うつ状態、うつ病には効能がない。アメリカでは非常に限られた範囲で処方されている。フルボキサミンは、半減期は9~14時間と言われており、活性代謝物はないと言われている。薬物代謝酵素はCYP2D6が関与する。精神科薬物ではオーラップは併用禁忌である。


最初のSSRIとしてフルボキサミンは発売されたが、当初は期待はずれの印象があった。なぜなら、フルボキサミンはうつ病への大きな効果があると言うには今ひとつであったからだ。この程度なら従来型の抗うつ剤の方が効果が高く、重いうつ状態に対しフルボキサミンで開始した場合、2度手間になった。少し落ち着いても、他の抗うつ剤に変更した時に更に改善することが多かったからだ。初期に嘔気が見られるが、これは2~3日すると消失することが多いので、一応患者さんに説明して処方していた。稀にずっと嘔気が取れない人がいて、こんな人はこの薬が合わないと言えた。胃腸薬を最初にあわせて処方することも推奨されている。他の副作用として若干の眠さが出現するがひどいものは少ない。デプロメールは嘔気以外、比較的服用しやすい薬物である。


剤型は25mg、50mgとあり、最初50mgから開始し150mgまで増量するとなっているが、75~150mgの間で処方されていることが多い。たまに強迫を伴う過食症などの場合、300mgくらい処方することもある。強迫性障害の場合、少し大目のSSRI投与が必要な場合があり、パキシルでも50mgまでの処方を認められている。(パキシルはうつ病は40mgまで)僕は、今まで何人か300mgまで処方しているが、一度も減点されたことがない。(一筆書いてはいるが)うちの県では、薬物のオーバーは厳格にチェックされることが多く、例えばジプレキサの場合、20mgを超えると一筆書こうが書くまいが絶対減点されるw フルボキサミンは薬価が、25mgが約50円、50mgが約87円なので比較的安いからであろうと思われる。(高価な薬が減点されやすい)


フルボキサミンは発売以降順調に売り上げを伸ばし、特に精神科の専門以外の病院に深く浸透した。やはり、最初のSSRIであったことが大きい。小さな医院(内科)でもルボックスかデプロメールが意外に入っている。それに対して、パキシルは意外に入っていないような気がする。もし最初のSSRIがパキシルであったなら、精神科の仕事が少し減っていたんじゃないかと思われる。(内科で簡単に治ってしまうため)


フルボキサミンの良い点は、切れ味がやや鈍いので、結果的に余計なことをしないことに尽きる。これは非常に大きいメリットである。パキシルほどの力価があると、患者層によればやや危険だ。もともとSSRIは決断力みたいなものを出すので、特に若い人に自殺を増加させるリスクがあった。2000年以前だが、プロザック(本邦未発売)を服用中、暴力行為や自殺などの有害作用が生じるというので、アメリカで裁判になった。この結果だが、かろうじて薬品会社が勝ったが、かなり政治的な影響もあったような気もする。もし患者側が勝っていたなら、全世界の患者にとって大変なマイナスの事件になったであろうと思う。パキシルは若い人に投与すると、自殺などの有害作用が生じかねないので、若年者(18歳未満)の患者には投与禁忌という時期もあった。これは非常に困るという苦情が出たのであろう、今は禁忌でなく警告になっている。フルボキサミンの場合も使用上の注意としてこのことが書かれているが、警告にはなっていない。フルボキサミンは若い人にはパキシルより安全と位置づけられているのである。


フルボキサミンの効果は、よく言えばマイルドなので、若い人や年寄りには処方しやすい。フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)は、パキシル発売以後売り上げを逆転され、その後パキシルに大きく差をつけられているが、今でも売り上げは伸びているという。治療者側から見ると、パキシルよりフルボキサミンがより良いと思われるケースがけっこうある。あと、統合失調症におけるうつ状態に対しても、フルボキサミンは比較的使いやすい。精神面を悪化させることも少ない印象がある。一般に、統合失調症に抗うつ剤を投与した場合、もとの精神症状を悪化させうまくいかないことがある。個人的な印象を言えば、リスパダールとは相性が良い。


あと大量服薬をした場合リスクが小さい。これはSSRI全般に言えるが、大量服薬でやや危険なSSRIもあるのである。今から数年前だが大量服薬で未だ死亡者が出ていないと聞いたことがあった。13g(13000mg)飲んだ人は死ななかったらしい。ただ大量服薬の場合、1剤の大量服薬はむしろ少ないくらいなので、数種類大量服薬した時にフルボキサミンが含まれていた場合などはよく知らない。そんな感じの薬剤だが、うちの病院でも今でもデプロメールは、年々処方数が増えている。余談だが、うちの病院ではフルボキサミンはデプロメールを使用している。明治製菓は薬品数が少ないし特に精神科で主だった薬はデプロメールとメイラックスしかない。アステラスはかなり精神科薬物を持っていて特にセロクエルが大量に売り上げるのもあり、事情を話してルボックスを入れずデプロメールにしてもらっている。ルボックスとデプロメールは全国的にはややルボックスが多いのかもしれないが大きな差はない。同じように売れているのである。