
イフェクサーSR、全般不安症/全般性不安障害(GAD)の効能追加を申請
2025年4月21日、ヴィアトリス製薬は、イフェクサーSR、全般不安症/全般性不安障害(GAD)の効能追加を申請している。全般不安症/全般性不安障害(GAD)の適応は、本邦では初となる。
過去ログではいくつか、全般不安症/全般性不安障害(GAD)の薬物治療について紹介した記事がある。
上記から重要部分を抜粋。少し長いが、リンクカードを読む人が少ないので長めに抜粋している。
全般性不安障害という疾患があるが、これはGAD(Generalized Anxiety Disorder)と呼ばれる。1980年、DSM-Ⅲでは、不安神経症とされていた疾患群を亜型分類している。この際、全般性不安障害は、ゴミ溜めのような扱いしかされていなかった。他の疾患基準に合致しない患者のための残遺診断基準だったからである。DSM-Ⅲ-R以降、全般性不安障害は独立した診断基準に昇格している。
DSM-Ⅳでは全般性不安障害は、さまざまな身体症状を随伴する過剰で広範な憂慮と定義されている。また、その憂慮が、患者の社会的、職業的機能における障害や著明な困難の原因になっている。
全般性不安障害の1年有病率は、3~8%程度。全般性不安障害は最も他の不安障害や気分障害を合併しやすい精神障害とされている。普通、全般性不安障害は初発年齢がよくわからない。患者さんはよく「思い出す範囲ではいつも不安だった」などと言うからである。普通、男女比は1:2で女性に多い。また、全患者の3分の1しか精神科を受診しない。たいていの人は身体科の専門医療機関で、身体面の不調の治療を求めている。
全般性不安障害は精神療法も行われるが、ここでは、薬物治療について主に紹介する。全般性不安障害には、主に、SSRI、3環系抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、ブスピロン、リリカなどの抗てんかん薬などが用いられる。海外ではMAO阻害薬も選択肢に挙がっている。
ブスピロンは、1986年、全般性不安障害に適応が認められた史上初の非鎮静系の薬物である。ところが、当時ベンゾジアゼピンを処方されている患者は、容易にはブスピロンに乗り換えることはなかった。ブスピロンは依存や乱用のリスクがないのに、飲み心地の違いが大きかったためであろう(本邦ではブスピロンは未発売。類似薬としてセディールがある)。
まもなく1988年プロザックが発売。SSRIの方が、全般性不安障害に合併するうつ状態などへの効果が期待できるため、プロザックの方が好まれ、ブスピロンが広く普及することはなかったのである。
全般性不安障害と治療薬
SSRI
全般効果 ++
忍容性 +
重大なリスク -
効果発現の早さ +
併存するうつ、不安への効果 +
ベンゾジアゼピン
全般効果 +
忍容性 +
重大なリスク -
効果発現の早さ ++
併存するうつ、不安への効果 -
MAOI
全般効果 ++
忍容性 -
重大なリスク ++
効果発現の早さ +
併存するうつ、不安への効果 +
RMAOI
全般効果 ±
忍容性 +
重大なリスク ±
効果発現の早さ +
併存するうつ、不安への効果 +
βブロッカー(インデラルなど)
全般効果 -
忍容性 +
重大なリスク -
効果発現の早さ -
併存するうつ、不安への効果 -
(Davidson JRT:J Clin Psychiatry 59(suppl 17):47-51,1998)
ここで挙がっているMAOIとRMAOIだが、少しだけ解説。モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)は、元々、抗結核薬として開発されたヒドラジン誘導体が気分の改善をもたらしたことに由来する。その発見により、MAOIには抗うつ作用を持つことがわかったものの、その後SSRIの普及や、MAOIには厳格な食事療法が必要なことなどから、第一選択薬として処方されることはなかった。今もなお、処方には制限を受けている。
MAOIが、その強力な抗うつ作用を持ちながら制限されるのは、服用中にチラミンを摂取すると、致死的な高血圧危機が生じるためである。このチラミンは、例えばチーズ、ソーセージ、アルコール飲料、肉や魚の燻製、ホルモン、レバー、バナナやアボガドなどあらゆる食物に入っていると言って良い。特にイタリアやドイツ料理はかなり危険である。また悪いことに、あらゆる食料は古くなると、チラミンが増える傾向があること。つまり、個人で食事療法をしながら、MAOIを服用することなど無理な話である。
MAOIは、また併用禁忌の薬物もかなりある。例えば、喘息治療薬、降圧剤、ブスピロン、レボドパ、感冒、アレルギーの治療薬、SSRI、ベンラファキシンなどのSNRI、アナフラニールなどの3環系抗うつ剤、交感神経作動薬(リタリン、ドパミン、アドレナリンなど)などが挙げられる。
MAOIは、うつ病の治療に用いられるが、代表的MAOIフェネルジンは、気分の反応性、対人関係の喪失や拒絶に対する極端な過敏さ、著明な無気力、過食、過眠など非定型うつ病の患者において、3環系抗うつ剤よりも有効であるという報告がある。また、MAOIは双極性のうつ病に対し、3環系抗うつ剤よりも有効というエビデンスもある。
また、MAOIは第一選択薬ではないものの、治療が困難な際に、パニック障害、社会恐怖、過食症、外傷後ストレス障害、血管痛、非定型顔面痛、偏頭痛、ADHD、突発性起立性低血圧、外傷性脳損傷によるうつ状態に対し、処方されることがある。
可逆性MAOI(RIMA)は厳格な食事療法の必要がないが、上記の一覧表を見るとわかるが、安全性が高い分、効果も弱い。
全般性不安障害はまず、SSRIか高力価ベンゾジアゼピンへ治療を開始するように推奨されているが、SSRIは特に治療開始時に、うつ状態、強迫性障害、物質依存並存するケースに推奨される。その理由だが、ベンゾジアゼピンは上記の併存障害に効果がないか乏しいからである。この2つ以外に、認知行動療法はいつ始めても効果的と言われている。このいずれかの薬剤で無効だった場合、この2剤の併用を行う。
アルゴリズム的には、SSRIの代替薬物として、
ガバペン
βブロッカー
ブスピロン
カタプレス
ブプロピオン
ネファゾドン
ベンラファキン(SNRI)
ビ・シフロール
などを挙げているが、これ以外にサインバルタ、アナフラニールなどの3環系抗うつ剤、リフレックス、リリカ、加味逍遥散、バッチフラワー(レスキューレメディ)なども推奨できる。また、個人的に、不安感にはブプロピオンは効果が乏しいと思う。(むしろ悪化させる傾向がある)。
抜粋終わり。
上の記事では、イフェクサーはSSRIの代替薬の1つとして挙げられている。
個人的にイフェクサーSRはさほど処方していない薬の1つである。しかし一時より処方数は増えている。元々イフェクサーは古い薬だが、本邦では承認が遅れ、時系列的に同じSNRIのサインバルタの方が早く発売され、自然とサインバルタの方が処方数が多い。もしサインバルタで不調な時、初めてイフェクサーを試みる流れになるが、サインバルタはダメだが、イフェクサーだと劇的に良いというパターンがあまりにも少ない。
プラセボもあるのか、「イフェクサーだと多少は良い」と言う人がいる。このような時、そのままイフェクサーを継続する。「微妙であまり変わらないかも」という評価で副作用も変わらないと言う人は、サインバルタに戻すのは患者さんも面倒であろうし、そのままイフェクサーを継続する。この経過で続けることがほとんどである。
現代社会ではうつ病、うつ状態でサインバルタで良くならないことは異常事態だと思う。
うつ病で、イフェクサーを処方中にうつが全般改善するに足る環境変化があったとしよう。このような時は、イフェクサーそのものが必要でないことの方が多い。その時は、例えばレクサプロくらいに変更して様子を見る。僕の患者さんでイフェクサーを中止する時はこのようなパターンである。
個人的にイフェクサーよりアモキサンが使いやすかったので、アモキサンが使えなくなる前はアモキサンが不調の時、初めて処方していた。
上の抜粋にもあるが、GADに有効な向精神薬は数多くあり、イフェクサーがGADに適応が取れたとしても、精神科の薬物療法が大きく変わるものではないと思う。
参考

