
不妊治療の臨床試験では、本来は「出生率」が最も重要な指標とされています。しかし実際には、出生率を報告している試験は少なく、多くが「臨床妊娠率」や「継続妊娠率」を主要評価項目としています。本論文は、これら早期妊娠指標と出生率の関係を大規模に検証したメタ疫学研究です。
研究の概要
2012年から2023年に発表された不妊治療RCT 8,757本を検索し、そのうち1,281本が解析対象となりました。合計で28万人以上のデータが含まれています。
Figure 1には選択過程のフローチャートが示されており、最終的に1,281本が解析に含まれたことが視覚的に示されています。

出生率との相関
最も重要な結果は、早期妊娠指標と出生率の相関です。
Figure 2では、臨床妊娠率と出生率の相対リスクの相関が示されています。Spearmanのρは0.87であり、非常に強い相関を示しました。

Figure 3では、継続妊娠率と出生率の相関が示されており、ρは0.96とさらに強い相関でした。

一方、生化学的妊娠と出生率の相関はρ 0.78で中等度でした。
統計的有意性の一致
Figure 4とFigure 5では、P値の分布が示されています。


臨床妊娠と出生率で統計的有意性が一致した試験は約90%、継続妊娠では約91%でした。
つまり、多くの試験で妊娠率が有意に改善すれば、出生率も同じ方向に動いていることが示されています。
サブグループ解析
卵巣刺激、胚培養、ゴナドトロピン治療などのサブグループでも相関は維持されました。
特に卵巣刺激関連では、継続妊娠と出生率の相関は非常に強固でした。
ただし、流産率に影響を与える治療では例外が生じる可能性があります。本文では、新鮮胚と凍結胚の比較試験を例に、臨床妊娠は同等でも流産率の違いにより出生率が変化した例が紹介されています。
臨床的意義
本研究は、出生率データが不足している場合でも、臨床妊娠率や継続妊娠率を用いて治療効果を評価することが合理的であることを示しています。
ただし、
・流産リスクに影響する治療
・統計的検出力の不足
・信頼性に問題のある試験
では注意が必要としています。
結論
1,281本のRCTを解析した結果、臨床妊娠および継続妊娠と出生率は強く相関していました。
出生率が最終目標であることに変わりはありませんが、臨床妊娠や継続妊娠を主要評価項目とすることは、科学的に妥当な場合が多いと結論づけています。
Feng Q, Li W, Crispin J, Longobardi S, D’Hooghe T, Li W, Mol BW.
Consistency in treatment effects and statistical significance between early-stage pregnancy endpoints and live birth in randomized controlled trials of infertility: a systematic meta-epidemiological study.
Fertility and Sterility. 2026;125(2):356–366.
この論文が言いたいのは、不妊治療の臨床試験で最終的な判断材料である出生率が報告されていなくても、臨床妊娠率や継続妊娠率の結果から治療効果をある程度判断できる可能性が高いということです。
1,281本のRCTを解析した結果、臨床妊娠や継続妊娠と出生率には強い相関があり、統計的有意性も約9割の試験で一致していました。