恐怖よりも混乱が襲いかかる
伝説のZ級迷宮へようこそ
Z級映画「魔の巣 Manos」
(原題:Manos: The Hands of Fate、読み:まのす)
“Manos”はスペイン語で「手」という意味です。
1966年/アメリカ/70分/カラー
<監督・脚本・製作・出演>
ハロルド・P・ウォーレン
<キャスト>
マイケル:ハロルド・P・ウォーレン
マーガレット:ダイアン・マーリー
デビー:ジャッキー・ネーマン
トーゴ:ジョン・レイノルズ
マスター:トム・ネーマン
- 「ロボットモンスター」
- 「死霊の盆踊り」
- 「怪物の花嫁」
- 「プラン9・フロム・アウタースペース」
- 「恐怖の洞窟」
- [悪魔の呪い」
など、過去にも何作かZ級映画を紹介してきました。
B級のように中途半端ではなく(笑)、もっと振り切っている、もっとひどい、けれどある意味すごい作品を私はZ級としています。
久しぶりにZ級作品を鑑賞したい気持ちがふつふつと湧き、探してみると――まだまだありましたね。
今回はその中から、まず「魔の巣」をご紹介です。
<内容>
物語は、マイケルとマーガレット夫妻が、幼い娘デビーと愛犬ペッピーを連れて、テキサス州エルパソ付近の「バレーロッジ」で休暇を過ごすため、砂漠を車で走るところから始まります。

途中、マーガレットは道に迷ったのではと心配しますが、マイケルは否定。
しかし、延々と続く砂漠ドライブの合間に、ティーンエイジャーのカップルが車内でイチャイチャするシーンや、代理保安官代理による逮捕シーンが挿入されるなど、物語のテンポも設定もなかなかの無茶苦茶ぶり。
これがすでにZ級の洗礼です。
ようやく到着した館は、どこからともなく現れたかのような奇妙な建物。
そこには、留守中の「マスター」の代わりに館を管理している召使いトーゴがいました。
サテュロスのような風貌と奇怪な言動を持つトーゴは、
「バレーロッジ」への道順を尋ねても
「知らない方がいい」
と拒否します。
不満げなマイケルは、トーゴや妻マーガレットの反対にもかかわらず、自分たちを一晩泊まらせてほしいとトーゴに頼み、一家は無理やり一晩泊まることになります。

ここから館内での不条理で奇怪な出来事が始まります。
物語を簡単に言ってしまえば、館に現れるカルト教団のマスターが、訪問者(マイケル一家)を生贄にしようとする話です。


マスターの妻たちが
「子供は殺してはいけない」
「いや殺さなければならない」
と言い争い、殴り合いのような場面になるのですが……
これがまた妙に微笑ましい(?)。
どこか「死霊の盆踊り」を思い出してしまいました。
すべてがZ級映画ならではの魅力です。
みどころ(ツッコミ歓迎)
まず語らずにはいられないのが、館から逃げ出すシーン。
砂漠を必死に逃げるマイケル一家。
途中でマーガレットが
「もう私は歩けない、これ以上先へは進めない」
とへたり込んでしまいます。
ところが――
なぜか
「館へ戻ろう」
という話になると、
普通にスタスタ歩いて戻るのです。
「歩けるんかい!」
しかも、何故かわざわざ危険な館へ戻るのかという素朴な疑問も湧いてきますが、深く考えてはいけません。
これがZ級映画です。
そして、こんな“?”瞬間がこの作品には数多く存在します。
① いつまで続くの、この車のシーン
冒頭、延々と続く車のシーン。
会話も盛り上がらず、ただただ走る。
「これ、いつ終わるの?」と観客の忍耐力を試してきます。
② トーゴの謎すぎる存在感

歩き方、姿勢、セリフ回し……すべてが「なんでそうなる?」の連続。
妙に猫背で足を引きずるような動き。
気づけばトーゴから目が離せなくなります。
③ マスターの儀式が長い(気がする)

儀式シーンや妻たちの争いが妙に長い。
どこかお遊戯会のような雰囲気。
しかしこの“間延び感”こそがZ級の真骨頂です。
④ 編集が突然すぎる
・急に暗転
・急に別の場所
・急に意味深なアップ
観ている側の脳が追いつきません。
⑤ 警官コンビの存在意義
途中で登場する警官コンビ。
パトロールしているだけで物語にほぼ絡まない。
「この人たち、何しに来たの?」
そんな疑問もまた楽しい。
⑥ ラストの展開
ネタバレは避けますが、「そう来たか」という締め。
予想できなくもないのですが、一応きちんとしたオチにはなっています。
ほくと的まとめ
『魔の巣 Manos』は
完成度で観る映画ではありません。
体験として楽しむ映画です。
突っ込みながら観るのが正解。
Z級好きな方にはおすすめの一本です。
普通の採点:5点満点中1.5
Z級として:5点満点中3.9
久しぶりにZ級魂を思い出させてくれる一本でした。
(画像すべてお借りしました)
(フル動画です)
(おまけ)
トーゴを演じた俳優ジョン・レイノルズは、映画が初上映される1か月前の1966年10月16日に亡くなっています。
当時25歳で、本作が唯一の映画出演となりました。
トーゴの膝が膨らんでいて奇妙な歩き方に見える理由は、キャラクターがサテュロス(ギリシャ神話の精霊。上半身が人間、下半身が山羊)をモデルにしていたためです。

レイノルズは山羊の足に見えるよう、自作の補装具を膝に装着して撮影していました。
しかしこの補装具が原因で膝蓋骨に後遺症が残り、鎮痛剤を服用していたと言われています。
また、撮影中にLSDを使用しており、常に酩酊状態だったという証言も、デビー役ジャック・ネーマンによって語られています。
(Wikipedia参照)








