観る覚悟はあるか!
7時間18分の禁断体験
映画『サタンタンゴ』
<概要>
1985年に出版された、クラスナホルカイ・ラースローの同名小説の映画化。
題名は「悪魔のタンゴ」の意。
全12章で構成される作品です。
原作者クラスナホルカイ・ラースローは、
2025年にノーベル文学賞を受賞しており、
本作もあらためて注目されています。
<キャスト>
ヴィーグ・ミハーイ、
ホルヴァート・プチ、
ペーター・ベルリング ほか
<作品について>
2011年の『ニーチェの馬』を最後に、
56歳で映画監督からの引退を表明した、
ハンガリーを代表する巨匠タル・ベーラ監督。
本作『サタンタンゴ』は1994年に発表され、4年の歳月をかけて完成させた7時間18分におよぶ長編大作です。
<内容(簡単に)>
ハンガリーのある寒村。
シュミットはクラーネルと組み、村人たちの貯金を持ち逃げする計画を企てていました。
その話を盗み聞きしていたフタキは、自分もその話に乗ろうと考えます。
そんな中、
「1年半前に死んだはずのイリミアーシュが帰ってくる」
という噂が流れます。
村人たちは酒場に集まり議論を始めますが、やがて酒宴となり、いつものように夜は更けていきます。
そして翌日、噂どおりイリミアーシュが村に帰ってきます。
日本では長らく映画祭などでの上映のみでしたが、2019年、ベルリン国際映画祭フォーラム部門で初披露された4Kデジタル・レストア版により劇場初公開。
さらに2024年10月には、製作30年を記念して4Kレストア版が上映されました。
(映画.comより)
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いやぁ~長いけれど、
脱落せずに完走しました。
やはり、ある種の凄さを感じる、
強烈に印象に残る作品でしたね。
このブログ記事も長くなりますが、お付き合いください(笑)
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「7時間18分、伝説の映画体験」
ついに、ついに禁断の世界を覗いてしまいました。
この監督作品では、過去に『ニーチェの馬』を観て衝撃を覚えたことがあります。
ブログでもアップしていますので、よろしければご覧ください。
この作品の題名は以前から知っていましたが、
鑑賞したことがないというより、正直なところ機会を避けていた作品でした。
数年前、映画館で上映されることが決まったときも、観るべきか、観らざるべきかと迷いに迷って断念。
何といっても上映時間の長さ、
そしてロングテイク(長回し)が
連続するという特徴。
それが延々と7時間続く。
もし『ニーチェの馬』のように哲学的な内容だったら、長時間に耐えられるだろうか……と考えてしまったのです。
ただ、長い映画といえば、
ラース・フォン・トリア監督の『キングダム』シリーズは約5時間×3=15時間。
これは映画館で2日間に分けて鑑賞しましたが、まったく苦になりませんでした。
まぁ、内容によるのでしょうね。
そんな折、U-NEXT(ユーネクスト)で配信されているのを発見。
いざ、『サタンタンゴ』の世界へ。
さて、この映画は誰にでもお勧めできるかというと、
正直、好みが分かれる作品です。
忍耐力のある映画好き向けでしょう(笑)。
ただ、その分、見終わった後の充実感は格別なはず・・・かな?
長時間の静かな描写や独特の間の取り方が合う方には、
じっくり味わえる傑作だと思います。
その理由は、やはり上映時間7時間超、
そして長回し映像が延々と続くことにあります。
ただし、ストーリー性もあり、
謎めいた部分を含んだ進行なので、
12の章(パート)で構成された出来事を追ってしまいます。
長回しに慣れてくると、耐性ができるかもしれません(笑)。
また後ほど詳しく触れますが、
暴力的・不快に感じる描写も存在します。
そのシーンは逆に圧倒的に印象に残るのですが、
とにかく冒頭からある程度のシーンまでを我慢できた方は、
最後まで完走できるかもしれません。
<さきほどより少し詳しくストーリー>
(※ここからネタバレ注意)
ひとことでこの話をお伝えするとしたら、
希望にすがった人々が、
再び何も変わらない場所へ戻っていく
そんな物語でしょうか。
前に進んだようで、結局元に戻る——
それが「タンゴ」という名を持つ、この映画の核心です。
荒廃したハンガリーの寒村で、仕事も希望も失った村人たちは、
共同体の金をどうするか迷いながら、停滞した日々を送っています。

そこへ、死んだはずの男イリミアーシュが戻ってくるという噂が広がります。
彼はカリスマ的な言葉で
「新しい未来」
を語り、
村人たちは救世主のように彼を信じ、
金も家も手放してついていきます。

しかしその裏で、イリミアーシュは国家機関に村人たちを報告する立場にあり、
彼の導きは救済ではなく、
共同体の解体と分散をもたらします。
村人たちは結局救われることなく、再び孤立と貧困の中へ戻っていきます。

最後に残された医師は、崩壊した村の記録を書き続け、
物語は冒頭と同じ停滞した状態へと回帰します。
という、わりとたわいもない物語です。
これでは、よくわからないですよね(笑)。
まぁ、そんなものです。
(印象に残ったシーン:ネタバレ注意)
◆ 最も問題になったシーン
村に住む少女エシュティケは、大人たちが酒を飲み踊り呆けている様子を、建物の外から眺めています。


孤独と絶望の中、自分の隠れ家的な場所で猫と戯れるのですが、
猫が粗相をしたことで怒り、

猫をいじめ、
最終的にはミルクに殺鼠剤を混ぜて猫を殺し、
自らも同じ毒を飲んで自殺します。
作品の中でも、最も残酷で衝撃的な描写として知られる場面です。
観ている最中、
「本当に猫を虐待しているのか?」
「でも、猫が全然抵抗していない……」
など、いろいろ考えてしまいました。
死んだ猫を抱えたまま移動する描写もあり、
本当に猫の死体なのではと思ったほどリアルでした。
後で調べると、実際の虐待はなく、
死体として使われているのはぬいぐるみだったようですが、
(真相はわかりません(笑))
とにかく、それほどまでにリアルなシーンでした。
◆ 単調なタンゴが延々と続くダンスシーン
(共同体の狂気と時間の牢獄)
物語中盤、村人たちは酒場に集まり議論を始めますが、
それはやがて酒宴へと変わっていきます。
ここから始まるのが、
単調なタンゴの旋律が延々10分以上続くダンスシーン。
同じフレーズが繰り返され、
観客は「終わらない時間」に巻き込まれていきます。

華麗なダンスではありません。
ダンスと呼んでいいのか?
否、これは何だ(笑)。
しかし、なぜか脳を強烈に刺激する。
踊っていない人たちの表情にも注目です。
笑ってしまうほど、強烈なシークエンスでした。
↓この10分を超えるダンスを見続ける勇気がありますか?(笑)
◆ 紙吹雪の中の行進
新聞紙や紙片が風に舞う中、
イリミアーシュたちが歩いていく印象的な場面があります。
荒れ果てた町のまっすぐな通り。

両側には廃墟のような建物。
強い風にあおられ、大量の紙片が画面を覆います。
とんでもない量の紙ごみを用意したことでしょう。
このシーンも強烈に印象に残りました。
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この作品は、過去にレビューしたギリシャ映画
『旅芸人の記録』へのリスペクトを感じる場面が多々あります。
あちらは4時間弱ですが、『サタンタンゴ』に比べると、まだかわいいものです(笑)。
1980年代ハンガリー、
共産主義体制の崩壊直前からポスト共産主義への移行期。
映画の舞台である「崩壊した集団農場」は、
当時の社会構造や政治的背景を強く反映しています。
<観ていて感じたこと>
この映画は、とにかく時間の流れが独特です。
長回し、
ほとんど動かないカメラ、
同じような場面の反復。


最初は
「なぜこんなに長く映すのだろう」
と戸惑いました。
けれど次第に、
「これは物語を追う映画ではなく、この村の時間を一緒に生きる映画なのかもしれない」
と思うようになりました。
前に進んでいるようで、
実は同じ場所をぐるぐる回っている。
希望が見えたと思った瞬間、また元に戻ってしまう。
その感覚が、映像のリズムそのものになっています。
<少しだけ背景の話>
この作品は、社会主義体制末期のハンガリーで製作されました。
集団農場が行き詰まり、
「何も変わらない」空気が社会を覆っていた時代です。
映画に登場する荒廃した村や人々の無力感は、
当時の農村社会の閉塞感と重なります。

ただし、歴史を知らなくても観られます。
むしろこれは、
特定の国や時代を超えて、
人が希望にすがり、
誰かに委ね、
そして失望を繰り返す構造そのものを描いた映画だと思います。
<ほくと的まとめ>
『サタンタンゴ』は、
決して「面白い」と簡単に言える映画ではありません。
けれど、観終わったあとに
「これは何だったのだろう」
と考え続けてしまう力があります。
長さも、静けさも、
この映画にとっては必然なのかもしれません。
前に進んだはずなのに、
気づけば元の場所に立っている。
私のレビューの中でも、同じこと繰り返しているかと思いますが(笑)
その感覚を、7時間半かけて体験させる作品です。
印象に残ったシーンの、それぞれのほくと的解釈も書こうと思いましたが、
延々とこの作品のように続きそうなので止めておきます。

この作品を一言で言い表すことがなかなか難しいですが、
崩壊する世界の中で、
人間が何を信じ、
どう生きるかを問う
“体験型の寓話”
だったのかと思ったりもしました。
まぁ時間と気力に余裕があるとき、
もし興味があれば、ぜひ腰を据えて観てみてください。
思った以上に印象に残る作品でした。
5点満点中4.0










