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ところで「日本の夏の風物詩」「夏の果実の王様」などと
したしまれているスイカ。
そういえば、スイカの種はリノール酸や たんぱく質が非常に多く、
ビタミンB郡やEが豊富で、体の為には良く噛んで
食したほうがいいそうです。
🍉 夏の情景
縁側では熊さんと八っつぁんが団扇をあおぎ、
行き交う風に江戸の町の音を聞いていた。
遠くで荷車のきしむ音、近くで金魚売りの声。
路地の向こうでは、夕立を待つ土の匂いがしている。
昼下がりの路地は、打ち水の名残だけがひんやりして、
遠くで、隠居が咳払いをひとつ、あとは蝉の声ばかりだ。
長屋の子どもたちが、割れそうで割れない
スイカを前に、棒を握ってそわそわしている。
「もっと右だ、いや左だ、ああ行きすぎた」
「違うよ、前だってば」と、口だけ達者な野次馬が並ぶ。
目隠しをされた子のまわりで、声だけがぐるぐる回る。
汗で手ぬぐいが頬にはりついて、子どもは心細そうに笑う。
棒が振り下ろされる一瞬、固い皮の下で、
黒い種と赤い肉が、音もなく笑ったような気がした。
掛け声とともに棒が振り下ろされる。
ぱしんという乾いた音のあと、すこし間をおいて、
ぱりぱりと皮の裂ける音が縁側まで届く。

赤い果肉が顔を出し、黒い種が星のように
散らばっている。子どもたちの目がいっせいに丸くなる。
ぱかりと割れた瞬間に立ちのぼる青い香り、
しゃりり、と歯に沁みる冷たさ。
水気たっぷりの果肉が、火照った
体の奥まで、すうっと涼を運んでいく。
「種まできれいに食っときな」と熊さんが言う。
「水ばっかりと思ってると、肝心なとこを捨てちまうよ」。
子どもたちは意味もわからず、
言われた通り種を噛んでみる。
かり、と小さな音がして、口の中に
かすかな渋みと香ばしさがひろがる。
気づけば、流しのそばで冷えている、
次の大玉だけが、黙って午後の暑さを映している。

最後の一切れを前にして、八っつぁんが言う。
「なあ熊さん、これだけ栄養あって涼しくして
くれるんなら、今年の猛暑も安泰だな」
熊さん、団扇を止めてぽつり。
「そいつはどうかな。スイカは涼をくれるが、
長屋の家賃までは冷ましてくれねえ」
縁側に笑いがどっと広がり、皿のスイカも、
種も、きれいさっぱり消えちまった。
子どもたちは、その言葉の半分もわからないまま、
最後の一口まで赤いところをしゃぶりつくす。
縁側の下では、どこから落ちたのか、
いくつかの黒い種が土に沈みかけている。
来年の夏のことを、誰も口には出さない。
ただ、夕立の気配だけが、遠くの空で静かに膨らんでいる。
夕立前の風だけが、冷えた甘さの名残りを
そっと撫でて通り過ぎていった。
後に残るのは、食べ尽くされた皮と、
夜風に冷めてゆく笑い声ばかりである。
最後までご覧頂きありがとう。
今日が良い日となり、
明日がさらに素晴らしい日となりますように
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撮影レタッチ 文 熊谷
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今年初のスイカはもう食べた?
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ところで「日本の夏の風物詩」「夏の果実の王様」などと
したしまれているスイカ。
そういえば、スイカの種はリノール酸や たんぱく質が非常に多く、
ビタミンB郡やEが豊富で、体の為には良く噛んで
食したほうがいいそうです。
🍉 夏の情景
縁側では熊さんと八っつぁんが団扇をあおぎ、
行き交う風に江戸の町の音を聞いていた。
遠くで荷車のきしむ音、近くで金魚売りの声。
路地の向こうでは、夕立を待つ土の匂いがしている。
昼下がりの路地は、打ち水の名残だけがひんやりして、
遠くで、隠居が咳払いをひとつ、あとは蝉の声ばかりだ。
長屋の子どもたちが、割れそうで割れない
スイカを前に、棒を握ってそわそわしている。
「もっと右だ、いや左だ、ああ行きすぎた」
「違うよ、前だってば」と、口だけ達者な野次馬が並ぶ。
目隠しをされた子のまわりで、声だけがぐるぐる回る。
汗で手ぬぐいが頬にはりついて、子どもは心細そうに笑う。
棒が振り下ろされる一瞬、固い皮の下で、
黒い種と赤い肉が、音もなく笑ったような気がした。
掛け声とともに棒が振り下ろされる。
ぱしんという乾いた音のあと、すこし間をおいて、
ぱりぱりと皮の裂ける音が縁側まで届く。

赤い果肉が顔を出し、黒い種が星のように
散らばっている。子どもたちの目がいっせいに丸くなる。
ぱかりと割れた瞬間に立ちのぼる青い香り、
しゃりり、と歯に沁みる冷たさ。
水気たっぷりの果肉が、火照った
体の奥まで、すうっと涼を運んでいく。
「種まできれいに食っときな」と熊さんが言う。
「水ばっかりと思ってると、肝心なとこを捨てちまうよ」。
子どもたちは意味もわからず、
言われた通り種を噛んでみる。
かり、と小さな音がして、口の中に
かすかな渋みと香ばしさがひろがる。
気づけば、流しのそばで冷えている、
次の大玉だけが、黙って午後の暑さを映している。

最後の一切れを前にして、八っつぁんが言う。
「なあ熊さん、これだけ栄養あって涼しくして
くれるんなら、今年の猛暑も安泰だな」
熊さん、団扇を止めてぽつり。
「そいつはどうかな。スイカは涼をくれるが、
長屋の家賃までは冷ましてくれねえ」
縁側に笑いがどっと広がり、皿のスイカも、
種も、きれいさっぱり消えちまった。
子どもたちは、その言葉の半分もわからないまま、
最後の一口まで赤いところをしゃぶりつくす。
縁側の下では、どこから落ちたのか、
いくつかの黒い種が土に沈みかけている。
来年の夏のことを、誰も口には出さない。
ただ、夕立の気配だけが、遠くの空で静かに膨らんでいる。
夕立前の風だけが、冷えた甘さの名残りを
そっと撫でて通り過ぎていった。
後に残るのは、食べ尽くされた皮と、
夜風に冷めてゆく笑い声ばかりである。
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今日が良い日となり、
明日がさらに素晴らしい日となりますように
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撮影レタッチ 文 熊谷
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