15. 黒田は、今にも、日本国債がアメリカのヘッジファンドたちによって暴落させられる危険を鋭く察知していた。ADD(アジア開発銀行)の総裁として、アジア諸国の通貨金、金融危機の様相を肌で感じてきた。だから、もうちょっとやそっとの小出しの治療法では効き目がない、と分かっていた。
世界がアッと驚くぐらいの規模のことをやって見せなければ、信用不安=金融危機は避けられない、と腹をくくった。「270兆円のマネタリー・ベース」というおそるべき、唖然とするような、紀伊国屋文左衛門(きのくにやぶんざえもん)が吉原の芸者衆(花魁、おいらん)を総挙げして、小判を気前よくばら撒いてみせたような、真珠湾攻撃の奇襲作戦に打って出た。
これで、10年物の日本国債は4月4日午後3時前に年率0.315%という恐ろしい超低利回りになった。
日本国債を売ることで暴落させるつもりだったヘッジファンドどもが、慌てて日本国債買いに回った。
日本国債を怒涛のように買いに走る動きが債券市場で起きた。
債券市場は、株式市場よりも100倍は大きい。
この債券市場での「途転(ドテン)買い」は、高度に危険なバクチ用の高速取引(CTA 超高速ロボット・トレーディング)で出現したようだ。人為を超えた、ロボット取引の危険性まで黒田は読み込んでいたのだ。
そのあと10年もの国債の利回り10-year bond yield は 0.6%に急激に戻った。黒田は、日本国債の暴落(年率2%とかに利回りが跳ね上がること)を立派に阻止した。ヨーロッパ・ロスチャイルド系と、ビル・グロース率いるカリフォルニア州の公務員年金ファンドCalpers と ピムコPimco たちヘッジファンド(国際投機筋)の鼻を明かした。これで、黒田は、アメリカやヨーロッパのグローバリスト系の首脳たちから称賛された。
16.日本の「黒田超緩和」は、世界の金融不安を払しょくし、一瞬、取り除いた形になった。
これからの半年ぐらいで100兆円規模の日銀信用をふり出す、すなわち、空母5隻を運命の女神に任せて荒波の太平洋の中に発進、突入させたのである。
前にも書いたが勝算は1割ぐらいしかない。
それでもニュー・ニュー・エコノミックスのバカたちは、日本の黒田のこの前代未聞、前人未到のジャブジャブ・マネー作戦を歓迎して、自分たちの仲間だとして称賛している。果たしてそれだけのことで終わるだろうか。
17.黒田がやったことは、外側から見れば、去年の2012年9月に、ベン・バーナンキFRB議長が、全米12の地区連銀の総裁たちの反対を押し切って実行したQE3(キュー・イースリー)で、毎月450億ドル(4.5兆円)のFRBが不良資産を市中(民間銀行たち)から買い取るという政策と全く同じである。
FRBが不良資産を買い取って自分自身がボロボロの汚れた雪だるまの中央銀行になることを覚悟した。
これでアメリカの株と土地を人工的に吊り上げることに今のところは成功している。
ヨーロッパでも同じく昨年9月に、マリオ・ドラギECB(ヨーロッパの中央銀行)総裁が、ドラギ大砲(LTOR砲)を発射して、ヨーロッパ全体の(EU27か国)の全ての銀行830行を無理やり救出するために無制限のユーロ通貨の供給を決定した。
日銀黒田がやったこともバーナンキとドラギがやったことと全く同じだ。
これで、米・欧・日の先進国3カ国が目出度く首を揃えた。
ということは、アメリカから見れば、
このあと、まずヨーロッパの金融が崩れまくって、ヨーロッパが没落し自滅する。
その次は日本が資金を無理やり紙切れにして大放出したことで日本が次に破滅する。
最後に残るアメリカに
一番最後に、ようやく危機が訪れるという悪賢い手
に出たということである。
だから、アメリカのニュー・ニュー・エコノミックスのバカたれ経済学者たちは、
アメリカ・ロックフェラー石油金融(金・ドル)帝国の忠実な家来どもであり、残酷な悪魔たちだ。
彼らはそのことを分かってやっている。
それを知っていて黒田東彦は270兆円の一挙投入をやったということは、運を天に任せての過激な短期決戦である。
日本は果たして、アメリカの支配者たちの裏を掻いて(寝首を掻いて)いの残れるだろうか。
勝算は1割ぐらいしかない。
この黒田バズーカの1割の希望に、世界の現在の支配者たちが踊らされたとも言える。
18.だから当然に、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南ア)新興国5大国の指導者たちは、苦虫を噛み潰したようになる。
一番、煮え湯を飲まされるのは、北朝鮮の危機まで、アメリカのあからさまな挑発(B2ステルス爆撃機で上空を飛ばし、テニソンという空母まで北朝鮮沖に近づけた)までされて締め上げられた韓国である。
韓国は可哀想だ。
韓国は、自国の生き残りのために、必死になってサムスンと朴槿恵(パク・クンヘ)新政権が密かにどんどん中国に近づいているのがアメリカは気に食わない。
朴槿恵をアメリカの支配層はキツネのようなずるい女 fox lady と呼んでいる。
北朝鮮は何もしてないのに、ミサイルが飛んでくると、日本国民まで脅している。
日本人は皆でシラけている。
19.黒田超緩和に対して、これは自分たち新興国、発展途上国への攻撃であり、自分たち新興国つぶしの攻撃であると見抜いている。
ブラジルの天才的な財政家(財務長官)のギガ・マンテガが厳しく正確に分析している。
それでも新興5大国は、まだまだ貧しい国民を抱えながらも成長経済路線に正しく乗って、国民の旺盛な需要と消費に支えられて着実に成長している。
それに対して「すでに成長が終わったことが確実な」アメリカもヨーロッパ先進地帯も日本もどうしていいか分からないので、こういう血迷った奇襲作戦に打って出るしかない。
「クローサーの国家の6つの発展段階説」によれば、すでに最終段階である第6段階の「対外債権取り崩し国家」段階に日本も入った。
その次の第7段階は何なのかは、どこにも書いていないし、誰も経済学者たちは語らない。
第7段階とは、すなわち超新星爆発である。
星(スター)の命の最終段階である超新星爆発(スーパーノヴァ)そして燃え滓(かす)である白色矮星(はくしょくわいせい)段階に、アメリカもヨーロッパも日本も突入しているのである。
だから、黒田は、「質・量ともに異次元の金融緩和策」とはっきりと発言した。
まさしく異次元空間への突入である。
おそろしいことになったものだ。
20.これは、まさしく宇宙戦艦ヤマトのイスカンダルへの旅の始まりである。だから、黒田超緩和は、宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間(あるいは時空)のひずみ、ゆがみを利用して一気に越えてワープ warp をするようなものだ。
だから私は以後「黒田ワープ」と呼ぼうと思う。
黒田インフレや、黒田ショックや、黒田バズーカ(大砲)では済まないと思っている。
宇宙戦艦ヤマトはワープできるのなら、物語のはじめからさっさとワープしていけばよかったのだ。
黒田ワープが、マネタリーベースを一挙に倍の270兆円にまで緩和すると発表した、この「マネタリー・ベース」とは、何か。
それは従来のベース・マネーの概念をかなぐり捨ててしまったあとの指標(しひょう)だ。
旧来は、マネー・サプライ(M2+CD)というコトバを使っていたのに、今はもう使わなくなった。
あまりにもアメリカも日本もジャブジャブ・マネーをやりすぎて、マネー・サプライの発表すらできなくなっている。
だからその一部であるマネタリー・ベースという、現金(お札、紙幣)と日銀当座預金の民間銀行たちの残高(民間銀行たちが資金を従来の倍まで日銀から借りられるようにした、ということ)をこれからの新しいベースにする、と決めたのだ。
これで民間銀行たちは日銀からほとんど無料(ただ)のお金でいくらでもお金を借りられる、そしてそれを民間企業や個人にどんどん貸し出せ、という政策である。
ところが企業も個人も、もうおそろしくて新しい借金(銀行融資を受けること)をする気が無くなっている。
それでもジャブジャブにさらに貸し付けろというのだ。
民間銀行たちは、ただでさえ借金だらけの企業にさらに融資を増やすと、もっと返してもらえなくなるので、追加の融資をしたくない。
それで、何をやるかというとやっぱり日本国債を買うのである。
だから10年もの国債が0.6%というおそろしい超低金利(利回り)まで下がっている。
健全といえば健全で、日本円(日本国債)は、世界一の安全資産である。
それなのに、日本財務省も、FT(英フィナンシャル・タイムズ)紙も、「日本対GDP比で230%の財政赤字国であり、ギリシアよりもヒドい」と今でも言っている。
アホじゃなかろかの、田舎芝居だ。
日本はアメリカ国債を1千兆円(10兆ドル)も密かに(国民に内緒で)買っている。
だからこんなに公表している財政赤字が世界一ヒドい国なのだと誰も正直に言わない。
私、副島隆彦だけがずっとこのことを書いてきた。
それで、世界一の安全資産(セキュア・アセット)が日本国債(利回り年率0.6%)という世界一おかしなお笑い劇をやっている。
「ギリシアよりもヒドい財政赤字の国が日本」(笑)というコトバの意味を正しく理解している人間は世界中で副島隆彦だけではないのか自嘲している。