ソウル・R&B名曲選も2年半ぶりに
更新いたします。
先日、R&B系統に詳しい妻が久しぶりに
ランダムにメドレーで色々とR&B系統を
かけていました。
そこでぐっと懐かしく感じたのがこの曲。
この流れ、この歌声、これはいいです。
間違いなく元気をくれる曲です。
(実際の歌詞内容は曲調の快活さと違って
「別れ」の曲ではありますが)
1973年のリアルタイム当時はまだまだ子供
であったため、聞いてはいませんが、
その後、若い頃に聞いて記憶に留まって
いたのでしょうね。
この曲は疑いようもなく、R&B最大の名曲
のうちの一つと呼べるのではと思います。
(出だしはスローですが、0:30くらいから
素晴らしい展開となります)
ダイアナ・ロス(Diana Ross)の
タッチ・ミー・イン・ザ・モーニング
Touch Me In The Morning(1973)
(以下は大変細かな内容となりますので、
くれぐれもダイアナ・ロスや楽曲分析に
ご興味のある方のみ、是非ご覧になって
ください。お読み進んで、つまらない、
或いは判らないと感じても責任はお持ち
致しません)
サビの部分がいかにもなR&Bの流れ、
そしていかにもなモータウンの雰囲気。
典型的な旋律と和声を持ち、多くの曲に
類似的な流れを感じるので、大きな影響力
があった曲だと思います。
スローの出だしが終わるところからの
印象的な個所の流れを簡単に記したいと
思います。
(ヴァース/Verse)
スローのオープニングの終わりに
ドラムスのスネア&バスドラとベースが
1小節盛り上げ、ヴォーカルのヴァースへ。
♪Hey...
という吐息のようなコーラスと共に、
ダイアナ・ロスが歌い始めます。
出だしはピアノが前面に出ていましたが、
ヴァースからピアノの音は引っ込み、
ドラムスはクローズドリムショット。
(コンコンとリムを打つ音です)
ベースは16分音符でいい粒立ちをして、
ダイアナ・ロスと絡むように進みます。
♪Wasn't it me who said that Nothing
good's gonna last forever?
ここでは鍵盤楽器が殆ど聞こえないですが、
全体的な和声として、ディグリーネームで、
Ⅰ→Ⅰ△7→Ⅳ→Ⅱm7→Ⅱm7/Ⅴ
(1・1・4・2・5)という流れで、
基本的には(1・4)と(2・5)の強進行の連続
で、他のアーティストでも度々触れている、
ヒット曲を生み出す原動力である、私が
「強進行の連続」と呼んでいる進行が
この曲でものっけから使われています。
また、歌詞の二番からは、
ブラスがバッキングで絡み、いいR&Bだけ
が持っている独特のポリフォニックな
空気感が拡がります。
そして、キーは「C♯」という、
あまり使われないキーなのですが、
黒鍵をフルに使うキーなので、
作曲家の癖か、ピアニスト用にそうして
いるのかもしれません。
(実際黒鍵が多いと弾きやすい人もいる)
もしかして、ダイアナ・ロス専用のキー設定
なのかとも思いましたが、
以前にシュープリームスの「恋はあせらず」
を分析した時には「B♭」でしたので、
特別ダイアナ・ロス専用にピッチを合わせた
キーと言う事ではなさそうです。
(個人的に進行の分析には音程把握のし易い
「C」か、手慣れている「A」を使う事が多い
のですが、実音も確認しないといけないので、
C♯キーを弾きましたが、個人的には慣れない
のでちょっと苦手ですね...笑)
それと、ダイアナ・ロスとうまく絡み
いいプレイをしているベースとギター、
そしてドラムス。メンバーが期待できます。
ベースはモータウンいや軽音楽界における
ナンバーワンベーシストの誉れ高い、
ジェームス・ジェマーソンの可能性もあると
思いますが、クレジットがわからず不明です。
ギターのオブリガートもナチュラルで
実にいいですが、誰かはわかりません。
(ご存知の方いらっしゃれば、是非教えて
くださると嬉しいです)
(12/27追記 ベースはBob Babbittだった
ようです。モータウンを支えたベーシストの
一人で白人です。いいプレイです)
(サビ/Chorus)
この曲の中で最も印象深いのが、
サビにおける以下の箇所。
♪Well, I can say goodbye
in the cold morning light
ここの部分はいくつか似たような曲が同じ
ブラック系統の音楽にあるなと感じます。
例えば、以前に同じこの名曲選で記事にした
R・フラックの「Only Heaven Can Wait」。
ヴァース途中にこの「Touch Me~」と
非常に似通った旋律の「回し」が出てきます。
ただ、本曲の作曲家であるM・マッサー氏は
ブラック系統に大変多作の作曲家であり、
類似している曲は氏の本人のものである
可能性もかなり高いわけですね。
実際、R・フラックの作品も沢山手掛けて
いるようです。
和声進行は、
Ⅳ△7→Ⅴ7/Ⅶ→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅴ
(4・7・3・6・5)という流れで、
ここでも(4・7)と(3・6)という強進行の連続
が見られますが、この組み合わせは比較的
珍しいと思います。
ヴァースと同じ「強進行の連続性」による
和声と思いますが、和音構成を変えることで、
煌びやかな変化をつけていると感じます。
(全体)
この曲も何度聞いても飽きない曲。
その秘密は、個人的な考えとして、
「様々なパターンの強進行の連続」を
組み合わせている事によるだろうと、
少なくとも和声的には言えると思ってます。
(頭の中で進行・展開を記憶できないため、
常に新鮮な感覚で聴くことができる)
そして、私がソウルやR&B系統で「good」
と感じる曲には恐らく共通した特徴が
あると思っています。
それは、和声的に変化のある(これが重要)
躍動的なメイン旋律を支柱にして、
メインヴォーカルが単旋律的でなく進み、
そこにコール&レスポンスなどのコーラスが
被り、ベースライン、ギターのオブリガート、
そしてブラスなどのアンサンブルが多層的に
絡み合い、全体として非常にポリフォニック
であるというところかなと思うのです。
聴き進めていく中、至る所から、
いろんな音が聞こえてくるというような...
様々な方向を持ちながら、統一性も
持ち合わせている、というような音の群れ。
歯車的とでもいいましょうか。
マーヴィン・ゲイ、スティービー・ワンダー、
L.ヴァンドロス、ロバータ・フラック、
アレサ・フランクリン、P・オースティン
といった私の敬愛するソウル・R&B系統の
アーティストに共通している要素と言えます。
勿論、ダイアナ・ロスもです。
もちろん、その音像を実現するためには、
アーティスト本人の実力だけではなく、
各楽器のプレイヤーやアレンジの
素晴らしさも必要なわけで、R&Bの場合、
その要素が最高にブレンドした状態が
いわゆる「グルーヴ」ということになるの
だろうと思います。
※記事中のリンクは私の過去記事です。
宜しければ是非ご覧ください。
ソウル・R&B名曲選/過去記事一覧
第1回「Until You Come Back To Me」(1974)/Aretha Franklin
第2回「Woman Needs Love」(1981)/Ray Parker Jr.
第3回「Feel Like Makin' Love」(1974)/Roberta Frack
第4回「Mercy Mercy Me」(1971)/Marvin Gaye
第5回「Lovin' You」(1974)/Minnie Riperton
第6回「You Can't Hurry Love」(1966)/The Supremes
第7回「So Amazing」(1985)/Luther Vandross
第8回「Only Heaven Can Wait」(1980)/Roberta Frack