第6回「You Can't Hurry Love」(1966)/The Supremes | 柑橘スローライフ

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1966年発表のシュープリームスの楽曲。
You Can't Hurry Love(邦題:恋はあせらず)



(以下は興味のある方だけ是非ご覧ください)

乗りの良さ、テンポ、グルーブ感....
ダイアナ・ロスのチャーミングな掠れた声.....
(特に最初の「Find Find...」という箇所がいいです)
何度聞いても何だか楽しくなってしまう曲。

しかし、残念な事に、ビートルズ同様、
リアルタイムでは聴いてないのです。
(まだ、赤ちゃんのようなものでしたので)

私がダイアナ・ロスを初めて明確に知ったのは、
1980年のアップサイドダウン(Upside Down)というソロ曲。
チャーミングな声に惹かれてしまいました。
そう、彼女の声はチャーミングという言葉がぴったり。
(元町チャーミングセールもあるし、死語ではないです)

ところで、最近はシュープリームスと言わずに、
スプリームスというそうで、驚いてしまいました。
発音的には確かにより近そうですが、何となくしっくりきません。

ダイアナ・ロスの若いころのチャーミングさは、
シュープリームスという響きのほうが合っているような気がするので、
個人的には今後もシュープリームスで通そうと思います。
(実際的な英語の語感はさほど大差なく、
エド・サリヴァンだって、明らかに「シュー」と発音しています)

そして今回の曲、You Can't Hurry Love
実は、この曲を私が最初に知ったのはこのオリジナルではなく、
1982年のフィル・コリンズ(Phil Collins)によるカヴァーでした。
これもオリジナルに負けず劣らずの素晴らしい仕上がりです。
(髪型に限っては漫画トリオ時代のノック氏のようですが...)




(以下は大変細かな内容となりますので、特にお好きな方だけ是非ご覧ください)

この乗り、ウキウキしてしまう、その理由はどんな仕組みからか....
ほんの少しだけ、楽曲の構造を見てみようと思います。

まず初めに、何度も聴いて思ったのですが、
いかにもR&Bを思わせる曲調に関わらず、
この曲は明確なCall&Response(コール&レスポンス)の部分が無いのです。
これはこの当時のソウル曲では「異質」と言えると思います。

Call&Response(コール&レスポンス)とは何だ?
と思われた方には、Call&Responseの典型例として、
アイズレーブラザーズの「Twist And Showt」がわかりやすいですね。
(ビートルズのカヴァーでも有名です)

しかし、その代わりに第二のメロディともいえる、
別旋律のラインがコーラスされます。
これにより、Call&Responseと等価のポリフォニックな感触が生れ、
聴感的な格好よさに繋がっていると云えると思います。

しかし、その為には進行の「格好よさ」が前提的に必要なはず。
では、全体の構造はどうなっているのでしょうか。

(前奏)
三拍の8分符の後に細かい裏乗りとなる「B♭」のベース音で始まるわけですが、
もしかすると、本来はAキーなのに、ピッチが半音ずれているのかもしれません。
とりあえず、貼り付け音源の音のままの「B♭」で進めます。
(フィル・コリンズ版は短3度下の「G」です。以下フィル版とします)
このリズムのためにのっけから既に躍動感が出てますね。

ちなみに、この出だしのベース音のリズム.....
どこかで聞いたことがある感じがしないでしょうか。
典型的なR&Bのベースリズムではあるのですが、
そう、Hall&Oatesの「マンイーター」が同じですね。
ホール&オーツは「ブルーアイドソウル」と呼ばれたように、
白人(オーツは違うかな)によるソウルフリークなコンビ。
よって、こうしたソウル曲の中にオリジンの一端を垣間見ることができるわけです。

そして、歌の直前のブラスによる「パッ!」という和音は、
そのまま、トニックの和音(貼り付け音源ではB♭)で、
特にセブンスやテンションには引っかかっておらず、
おそらく「1・3・5・1」の4管構成の和音になっていると思います。
(フィル版のほうは、鍵盤でトニックの「G」、おそらくDX7でしょう)

(ヴァ―ス)
ヴァ―スの和声構造は、
B♭キー(Aのピッチずれの可能性もあり。フィル版はGキー)で、
ディグリーネームで表しますと、

Ⅰ6・Ⅳ・Ⅰ・Ⅲm・Ⅵm・Ⅱm・Ⅴ(1・4・1・3・6・2・5)

Ⅰのシックスは旋律とも連動するどうしても入れておきたかったノート。
そして、サビに移行する前の「3・6・2・5」の流れがたまりません。
(実際には、この場面では6・3・2・5としたほうが面白いですが)

(サビ)
次にサビの構造を分析してみると、意外な事に、
ほぼヴァ―スと同じという事がわかりました。

Ⅰ・Ⅳ・Ⅰ・Ⅲm・Ⅵm・Ⅱm・Ⅴ(1・4・1・3・6・2・5)

という感じで、僅かに和音の「間」だけが違います。
間と旋律が違うだけで、同一和声でもかなりの差が出るという事例です。
旋律に関しては、基本的に何れにせよメジャーナチュラルです。

(展開 = ミドルエイト)
サビよりもエモーショナルなのがミドルエイト。
伸ばしたコーラスに乗った進行はやはり....

Ⅲm・Ⅵm・Ⅱm・Ⅴ(3・6・2・5)

ヴァ―ス、サビで性急に垣間見た強進行の連続が、
思い切り羽を伸ばすかのように解放され、一つ一つの和音が伸ばされ、
ツーファイブからドミナントモーションで解決に向かいます。

(全体)
やはり、この曲でもポイントとなるのは「2→5」を含んだ強進行。
つまり、ツーファイブを含む「3・6・2・5」の強進行の連続性です。
これを短い間隔(ヴァ―ス、サビ)で使ったり、
長い間隔(ミドルエイト)で使ったりしているわけです。
この進行は、モータウンの60年代の楽曲では「定番」と言えると思います。
恐らく、専属コンポーザーがこうした流れが好みだったのでしょうね。

因みに、この強進行の「3・6」と「2・5」の位置を逆転して、
「2・5・3・6」にすると、
オリビア・ニュートン-ジョンの「そよ風の誘惑」のサビの前半と同じになります。
黒人R&Bと白人ポップスにほぼ共通して使われていることを考えると、
こうした強進行は「アメリカ万歳」的な進行とも言えます。

ここでひとつの真理が見えてきます。
軽音楽の世界のヒット曲の影には、ジャンルに共通して、
「ツーファイブを含めた強進行の連続性あり」ということです。
もちろん「ひとつの真理」に過ぎませんが「大きな真理」とも言えます。

この曲で、恐らく多くの人が感じる「楽しくなる」ような感覚の仕組みは、
①「3・6・2・5」という強進行の連続性の反復に加えて、
②ベース音の跳ねるような裏ノリのリズム。
③コーラスによる第2メロディの存在によるポリフォニックな聴感。
④ダイアナ・ロスの裏ノリ気味の旋律と可愛いらしい声質。

それらが綯交ぜになって、グルーブ感に繋がっているのだと思います。
多少辛気臭いですが、あえて文章化して、ファクターを羅列すると
おそらく、こんな感じとなるでしょう。

いずれにせよ、R&Bの代表的な名曲です。




ソウル・R&B名曲選/過去記事一覧
第1回「Until You Come Back To Me」(1974)/Aretha Franklin
第2回「Woman Needs Love」(1981)/Ray Parker Jr.
第3回「Feel Like Makin' Love」(1974)/Roberta Frack
第4回「Mercy Mercy Me」(1971)/Marvin Gaye
第5回「Lovin' You」(1974)/Minnie Riperton





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