湖水地方もヨーク市街も、そして、1日だけ訪問した
ケンブリッジも美しい場所だったが、そのどこよりも感動
させられた景色を提供してくれたのは、ノース・ヨークシャー・
ムーアというヨークシャー北東にある国立公園。
渡英前は下調べも足りず、また、その辺りの地理感覚もあまり
掴めていなかったため、この国立公園に行くことを重要視して
いなかったが、行って良かった!「これでもう今回の旅行は
思い残すことがない」と思える程の場所だった。
というのも、ヒースが群生しているのを眼前に楽しめたからである!

なぜ私がヒースを見ることにあこがれを持っていたかと言えば、
ブロンテ姉妹の作品には幾度もヒース・ムーアが登場するため。
ジェーン・エアがムーアを彷徨う場面や、ヒースクリフが
ムーアでキャサリンと戯れ、或いは、野生児のごとくふるまう
場面にヒースは欠かせない。ヨークシャーに行った際には絶対に
ブロンテ・カントリーを訪れてヒースを見たいと思っていたのだ。
しかし、旅の後半でこの場所に行き着くまで、ヨークシャーと
言えどもヒースの「ヒ」の字も見当たらなく、がっかりしていた
ところだった。
そして、ついに、このヒースの広がる景色が車窓から臨めた私の
喜びようといったら、もうじっと座っていられない程だった。

ラッキーにも、夏季のみ走る蒸気機関車もお目見え!
ヒースは近くで見ると、荒地に生息しているとは思えない
可愛らしい花だが、吹き付ける風をものともしない、「しぶとい」
感じも見受けられた。

別の場所を目指して、このヒースの荒野を通り抜けていたわけだが、
私としてはこのムーア周辺で1日中風に吹かれてヒースを
眺めていても全く気にならないぐらいだった。今、思い返しても
最初に車でムーアにさしかかった時のゾクゾク感が甦って来る。
ちなみに、ブロンテ・カントリーと呼ばれるヨークシャー中部の
地帯でもヒース・ムーアは存在している。ただ、規模としては
北東部ほどではないような印象を受けた。また、ブロンテ姉妹が
生まれ育ったハワースにも後日訪れたが、こちらは可愛い小粒な村
ではあるが、観光地化が進んでいるためか荒々しい自然の威力を
突きつけられる雰囲気の場所ではなかった、というのが個人的な
印象であった。

村よりムーアのある方向を望む

村の中心部
旅の2週目は天候に恵まれたため、ヒースを見る目も楽観的なものと
なったのかもしれない。実際にはムーア周辺で人々が生きていく
のは多難極まることだろう。だが、見れば見るほどムーアの景色に
惚れぼれてしまう私である。