お茶会会場に借りた施設の
掃除があまりにも
行き届いていなかったため
施設管理者に苦情を伝えたら
管理者側が現在
色々大変であること
(これまでの管理者が
運営から手を引いたことから
地元の有志が現在無給で
施設を管理していた)を
知ってしまい
「・・・言い過ぎた?」
みたいな感じに
落ち込んでしまった毒舌夫人の
気持ちを上向けるため
管理者にお菓子という名の
友好の証を届けに行った私。
(長い)
(ここまでの話、詳細は
お菓子片手に
施設管理者室の扉を叩くと
管理者の机に座っていた
(先ほど毒舌夫人の
急襲を受けた)お嬢さん
(地元のボランティア)は
緊張した面持ちで私を出迎え、
ダイジョブデース、
私はクレームを
あげにきたんじゃアリマセーン。
・・・いや、噂を聞くとどうも
毒舌夫人は現役時代
地元の議員や権威者を相手に
一歩も引かず舌戦を
しかけていたらしい人なので、
こんな二十歳そこそこの
お嬢さんが相手にするには
ちょっと手ごわすぎたろう、と。
「あのー、さきほどは
うちの毒舌夫人がその・・・
何か変なことを申しておりましたか」
「いえいえいえ!変なことなんて、
施設を利用する立場の方からしたら
当然なことをおっしゃられたまでです」
「そうですか。私は詳細を
知らないんですけど、でもなんか
『言い過ぎた』じゃないですけど、
彼女、反省・・・というのは
少し違うんですけどその・・・
あの人は飲食のプロで、だから
衛生には厳しいんですよ、でも
たぶん今のあなたのような立場も
過去に経験しているんでしょうね、
お掃除の人を雇う難しさとか
他人事じゃないと思うんです、
本当に大変な
お仕事をなさっていますね」
「いえそんな・・・でも
そうですね、最初に覚悟していたより
大変な仕事になっています・・・」
「それでこれ、お詫びの品って
わけじゃないんですけど、
あの人が作ったお菓子なんです、
今日これからお茶会で販売するんです。
これよろしかったら差し上げます、
お仕事の合間に召し上がってください」
私の言葉に管理者さんは
かっと顔を真っ赤にして
口元を抑えながら
「・・・いただけません・・・!」
「あっ、甘い物お嫌いでしたか」
「・・・違うんです、私・・・
私、慢性疾患があってお菓子は
食べられないんです・・・!」
「それはすみません!
あ、すみませんって言うのも
変ですね、でもあの、そうですか、
あの、よろしければ同僚の方に
回していただくんでも・・・」
「今日はここ私一人なんです、
あの、でも、勘違い
なさらないでください、
すごく嬉しいです、でも私、
食べられないんです、
だからいただけないんです・・・!」
「大丈夫です大丈夫です、
勘違いなんてしません、
いやなんかお時間とらせて
申し訳ありませんでした、
本日は施設を
貸し出していただいて
ありがとうございました、
では私もお茶会の仕事が
ありますのでこれにて・・・」
で、気まずい思いとともに
お茶会会場に戻ると
すでに仕事を
始めていた毒舌夫人は
私の顔と私が抱えたお菓子皿を
交互にジロジロと
不満げに眺めながら
(毒舌夫人は自分のお菓子に
誇りを持っているので
それを拒否されたとなると
間違いなく機嫌が悪くなる)
「何それ」という
目つきをなさったので
「あー、違います違います、
管理者さんは喜んでいました、
でも彼女は
お菓子が食べれないらしく・・・」
その時私の背後から
何かが走り寄る足音がして
振り返るとそこには
顔を真っ赤にして目に涙を浮かべた
管理者嬢が立っていて
「あの!お願いですから
誤解しないでください、
私は病気でお菓子が
食べられないんです、
でもこうやって差し入れを
いただいたことは
本当に嬉しかったんです、
そこは誤解しないでください!」
そう言いながら管理者嬢は
毒舌奥様の元に駆け寄り
首に腕を回し抱擁。
「ありがとうございます!
せっかくの差し入れを
食べられなくてすみません!
私を誤解しないでください!」
毒舌奥様は一瞬私に
「何これ」という目線を
向けながらもそこは海千山千、
慌てず騒がず抱擁を返して
「誤解なんかしませんよ、
わざわざお礼を言いに
来てくれてありがとうね」
「食べられないけど
本当に美味しそう~ううう、
ありがとうございますう~、
あ、なんかこのままじゃ
悪いので、お茶を買います、
お茶を買わせてください」
・・・何これ。
彼女が何故ここまで
感極まっていたのか
正直私には今でも謎です。
もしかすると本当に
施設管理の仕事が
苦しい状態に
あったのかもしれません。
さて毒舌奥様は
紙コップに紅茶を注ぎ
「はい、こちら差し上げます、
お代はいただけません。
そのかわり、そこらへんで
お茶とお菓子を
食べたそうな人がいたら
ここでアフタヌーンティーが
提供されているって
教えてあげてくださいね」
「・・・ハイ!
絶対にそうします!」
それでこの日、彼女は本当に
『お客』を数組連れてきてくれて・・・
一度なんかは
「あの、あっちで別の
出し物をしている団体の人で、
お茶にはすごく興味があるけど
持ち場を離れられないって
言う人がいたので、私が
デリバリーを買って出ました。
一人前持ち帰りでください」
このお茶会は例年
開催時間後半になると
会場の席が埋まってしまって
お客を断ることがあるのですが、
管理者嬢はそれをどう知ったのか
鍵を片手にパタパタ走って来ると
「どうして言って
くださらないんですか、
必要ならば会議室を
もう一室お使いいただけます!」
「で、でも利用申請を
出しているかどうか
我々にはわからなくて・・・」
「私が管理者です!
大丈夫です!
こちら使ってください!」
「え、でも・・・あ、本当に?
じゃあお客を入れる前に
軽く掃除を・・・」
「私が掃除をします!
床は板張りできれいなんで
机の表面を
消毒するだけでいいですか?」
・・・情けは人の為ならずというか
人間万事塞翁が馬というか
彼女の活躍もあり
お茶会は例年以上に大盛況。
会場面積が増えた分
後片付けの手間も増えましたけど・・・
お茶会終了後、毒舌夫人は
再び炊事場をピカピカに磨き上げ
それを見て管理者嬢は
「すごーい!キレーイ!
新築のおうちの台所みたーい!」
「ふっふっふ、いい?
お金を出して掃除の人を雇うなら
このレベルの掃除ができる人を
雇わなくちゃ駄目よ」
「ええー!そんなの無理ですよう!
こんなお掃除普通は出来ませんよう!」
・・・なんかあなた方
いつの間にか仲いいな。
でもこの時お嬢さんは
とても嬉しそうな顔をしていて
・・・結果的に本日の
彼女の『仕事量』は
増えたというのに・・・
(あそこで会議室を
開けてくれなくても誰も
不満は抱きませんでしたよ)
つまりはお菓子効果・・・?
でもそれは元をたどれば
施設の衛生管理について
毒舌夫人が文句を
言いに行ったからで、
いや違うか、
元の元はお掃除の人が
仕事をきちんと
果たしていなかったから・・・?
禍福は糾える縄の如し。
そんな格言を思い出した
お茶会お手伝いでありました。
ところであの管理者嬢が
何故あそこで涙を流すほどに
心を揺さぶられてしまったのかは
私には本当にわかりません
なんか1週間とか1か月とか
周囲から散々仕事ぶりを
責められていたところに
毒舌夫人がとどめを
刺しに来たかと思いきや
思わぬお菓子の登場で
心の氷が解けた、
とかならいいですけど
これ、一歩間違えると
尋問とか拷問でよくある
『悪い警官といい警官』な
心理的なアレなのでは・・・
ちなみに彼女のおかげで
私の仕事も増えましたよ
お客が増えたからね、それはね
でもなんというか
この一連の流れが
良い感じに落ち着いたのは
管理者嬢も毒舌夫人も
根っこのところが
善人だからなんだろうな、
と思いました
ところでこれ、
タイトルの伏線回収
できてますよね?
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