不動産市場に売りに出ていた

ジョージアン様式大邸宅は

元高齢者向けケアホーム。

 

ジョージアン様式というのは

重厚で左右対称な・・・

ザ・威風堂々みたいな・・・:

 

 

その豪壮な外見

鉄製簡易バリケード付き)と

豪奢な大階段付きの

正面吹き抜けロビー

(廉価防火壁で

芸術性はすべて台無し)、

広々とした談話室・事務室

カビと埃はまだしも

大量のゴミを放置ってのは

まずいでしょう明らかに)を

見た後に我々は

2階の部屋を見て回ることに。

 

もうこの時点で私の背後には

19世紀からこのお屋敷に

居ついている執事姿の幽霊と

まっくろくろすけの集団が

ついて歩いている感じで。

 

 

 

 

2階はケアホーム時代に

利用者それぞれの『個室』として

使われていたらしく、

各部屋にバスルームが

ついていました。

 

2階の窓は1階のそれのように

板で内側から補強されて

いるようなこともなく

故に各部屋自然光が入っていて

談話室・事務室で気になった

あの圧倒的な

『暗さ』はなかったのですが

・・・ケアホーム終業時に

2階にはちゃんと

お掃除が入ったらしく

どの部屋にもベッド以外は

家具がまったくない状態で

(だから『お掃除』というより

『撤退作業』だったのかも)、

つまりだだっ広い部屋の中に

寝具もマットもなしにただ

ベッドの枠組みだけ

取り残されていて・・・

 

他には椅子も棚も絨毯も

勿論カーテンも何もなく、

故に結果として

『剥き出しの部屋に

剥き出しのベッドが

放置されている』みたいな・・・

 

床は板張りで壁は薄い

青と緑で塗られているものだから

窓から入るお日様の光で

寒々しさが強調されて、みたいな・・・

 

この静かなる異様さ・・・

 

私はカンボジアの

某ポルポト施設

(トゥール・スレン)で

こんな風景を見た記憶がある・・・

 

 

言葉少なになってしまった

私のことを気にしてか

不動産屋さんが明るい声で

「あ、バスルームも

ご覧くださいませ!」

 

それぞれのバスルームには

便器と浴槽だけが残されていて

シャワーカーテンだの鏡だのは

一切なくて、そう、そういえば

この家、屋内どこを探しても

『鏡』がなかったんですよ、

それは勿論防犯上の理由とか

色々あるのかもしれないですけど

こういう時幼い頃からこっち

ホラー小説・映画をある程度

目にしてきてしまった人間には

嫌な妄想の裾野が

広がってしまうというか・・・!

 

いやでもガランとした部屋に

便器・浴槽・剥き出しベッドって

これは映画の場面としては

完全に拷問部屋じゃないですか!

 

蝶ネクタイ姿の

ダニエル・クレイグ

(『カジノロワイヤル』当時)が

連れ込まれたら

問答無用で

服を脱がされちゃうやつ!

 

 

 

 

明るく書いていますけど

実際のところは

ジワジワ寒気が来る怖さなの!

 

そんな部屋がね・・・

 

吹き抜け空間を挟んだ

お屋敷の2階の左右に

10室ずつ、計20室

ずらりと並んでいるんですよ・・・

 

どの部屋の扉を開けても

そこにあるのは

寒々とした太陽光に照らされた

青白い壁、茶色い床、

骨組みだけのベッド、浴槽と便器。

 

これはちょっと・・・

 

うん、我々はたとえこの家を

購入することが出来ても

住むことは出来ないよ・・・!

 

だってお掃除だけでどれだけ

時間と手間がかかるというの・・・?

 

あと何よりこんなところに

住んでいたら毎日が楽しい

映画『シャイニング』ごっこに

なってしまうと思うんですけど!

 

 

 

 

部屋から部屋へ移動する際に

「しかしこれはちょっと

部屋数が多すぎますね」と

不動産屋さんに告げた

私の背後からしかし夫は

「でもこれ、個室を仕切っている

壁みたいなものは80年代に

後付けされたものですよね?

妻ちゃん、これはその気になれば

その後付けの壁を全部剥がして、

左右それぞれに大部屋を

ひとつかふたつに改装というか

元の形に戻すことは可能ですよ!」

 

「大部屋に壁なしの

トイレと風呂を10か所も

持ってどうするんだよ!」

 

「上下水道に栓を

してしまえば大丈夫です!

いや、この家、思った以上に

潜在力のある物件ですね!」

 

・・・待って、夫、それ以前に

何、君、この家、

買う気アリなの・・・?

 

続く。

 

 

執事姿の幽霊とか

まっくろくろすけとかは

まだ笑いの余地がある

クラシック怪奇映画で

片付けられるじゃないですか

 

だだっ広い拷問部屋が

延々と続く廊下というのは

これは突然のサイコホラー

 

ちょっと笑えないやつ

 

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