<あらすじ>
『怖いと思われている稲荷の誤解を解いてほしい』
その言葉と共に、六甲山の高取神社で
「神様」という存在に、前よりも強く接続してもらった私。
前からついていたという高野山の清高稲荷大明神さまの
子狐眷属の姿も確認できるようになり、
奇妙な共同生活(?)が始まっていた。
そしてその子狐眷属の故郷、
高野山の清高稲荷大明神にお参りに行った際に
「お祭りをしてほしい」と無茶ぶりをされた私だが……
***
「你早(ニイツァオ)」
菊「に、你早……💧」
宇迦之御魂大神(以下:宇)「中国語を話せるのか?」
菊「いえ、以前よく上海に一人旅でしていて……挨拶程度です……
初めまして。西宮から参りました……」
宇「知ってる。そして遅い。来るのが。
お前、いつからここに来ようとしていた?」
宇迦之御魂大神が言うように、赤い文字の入った提灯の数も多かった。
宇迦之御魂大神は提灯を見上げて、ふと微笑んだ。
宇「良いものだ。本来、いかなるものにも ”境” などない。
昔は港の方に、華僑の者を受け入れる神の場がなくてな。
こちらで華僑の者たちの信仰心を受け入れることにした」
菊「……宇迦之御魂大神さまがですか?」
宇「いや。建御名方大神殿が決めた」
建御名方大神……
古事記の国譲りに登場する、大国主命の息子で、
タケミカヅチ神との戦いに敗れ、諏訪の地から出ないことを誓ったとされる神。
宇「 "境" がないと言ったが、
それは外国人からの信仰心においてだけではないぞ。
諏訪の地にあるとされた "境" も指す」
菊「諏訪の地……?」
宇「……人間は境界線を決める生き物だが、本来そのようなもの無い。
それが真ではないか?」
菊「………………」
宇迦之御魂大神は、こちらを見て淡々と話を続けた。
宇「さっき、ポカポカと暖かいと感じておったであろう?
その暖かさはどこから届いている?」
この暖かさは………
菊「太陽からです……」
宇迦之御魂大神はまばたきをしながら、ゆっくり頷いた。
宇「遥か彼方であろうとも、届くものは届く。
そこに "境" など無い。
……それに気がつけば、超えられるものばかりであるのだがな」
日の出と同時に光が届き、その輝きと熱に包まれる諏訪神社。
宇「案内しよう。ちょうど人もいない」
宇迦之御魂大神はそう言って、
本殿の右側にあるお社の方に歩き出した。









