「若き日の小さな勲章は、時として大いなる呪いと化します。その者を増長させ、自己評価を歪めさせ、進む道を誤らせる…」
(p165)
ビッグコミックスペリオールで連載中の「らーめん再遊記」。第1集に続いて、第2集が2020/12/25に発売されました。
第1集の最後で、「清流企画」の後継社長に汐見ゆとりを指名した芹沢達也。この巻の1話目で一気に社長を引き継ぎ、社長としての心得を語った上で、ゆとりに芹沢の原点「淡口らあめん」を食べさせる。
2話目以降、「清流企画」の面々は登場しなくなるだけではなく、芹沢はチェーン店「ベジシャキ豚麺堂」のアルバイト店員として皿洗いをしている。この新展開にはビックリ。
その目的は、偶然鉢合わせした有栖涼との対話の形で説明している。その中では、昭和の評論家、小林秀雄を引用して「万人の形式」を探す事にあると語り、自分の殻や衰えを考え、外からラーメンを見る必要があるとしている。
そんな「豚麺堂」の店長鹿内と、元店長で独立した加納が、第2集で芹沢が目を向ける対象になっている。クリエーターの才能を持ちつつ伸び悩む加納に、芹沢がかけた言葉が冒頭の引用部。そして、加納を慕う部下からは疎んじられている鹿内の、アレンジャーとしての能力を見出し、二人を創作ラーメン勝負という形でまみえさせる…。

「ラーメン業界のカリスマ」が、皿洗いのバイトとしてラーメン店を眺め、その能力を発揮していくというあたり「異世界転生もの」のような意外性があり、その合間にはYouTubeなどのエンタメトピックスも挟み込んでいる。その一方で、イノベーションが進んで、行きつくところまで行って、アイデアが出尽くした感さえ出ている、2020年代のラーメン業界の先行きを、チェーン店の中から探ろうとしているようにも見える。
そして、芹沢は能力者然として振る舞う一方で、若手の失敗を「青春の蹉跌は蜜の味だな♪」とほくそ笑む。芹沢が時折見せる意地悪な表情は、悩めるラーメンチェーンの若者を、そして芹沢自身を一歩先に進める事になる。この巻の最終話で、芹沢が見せた表情が、次巻への新展開を予感させるものになっている。