「アンタはいいんだよ。口先で何を言おうが、本性はイカれたラーメン馬鹿だからな」
(p105)
「発見伝」「才遊記」と同じく、表紙は実在のラーメン店のラーメン画像が入っている。今回は2018年に開店して人気を集める「銀座 八五」。
主役はラーメンコンサルタントで「清流企画」社長の芹沢達也。舞台は「才遊記」の設定を引き継いでいるが、タイトルが「再」で「リブート連載」とされているように、芹沢の再起がテーマになっている。そこに至るまでの描写は、これまで「発見伝」「才遊記」でキレキレの芹沢を見てきた者としては「えっ?え…?」と言いたくなるような展開から始まっている。
「才遊記」最終回で汐見ゆとりが立ち上げた「麺屋なでしこ」が好調を極める一方、それまでの旗艦店だった「麺屋せりざわ」は、看板にしていた月替わりメニューが低調で売上減。そんな中、芹沢は古びた中華屋でビールを飲み、「あまりうまくはない」ラーメンを繰り返し食べている。かつての芹沢達也を知る読者からは「そんな姿、見とうはなかった…」と嘆きたくなる光景を描いている。
そして、外国のグルメガイドから「二つ星」を得た、「東京ガストロノメン」の米倉店主との因縁を、ゆとりによって作られてしまい、ラーメン対決に挑む、という内容。
この第1集で主に描かれているのは、芹沢たちの「ニューウェーブ系」と、米倉たちの「次世代系」の違い。かつてラーメンブームを切り拓いた「ニューウェーブ系」が既存の「昭和の中華そば」を否定する事で成り立っていたが、ニューウェーブ系に触発されてラーメンを作り始めた次世代系の店は、よいと思ったものを躊躇なく取り入れた事で、「昭和の中華そば」をブラッシュアップしたかのようなラーメンになっている。この指摘は、ここ数年で増えた「淡麗系醤油ラーメン」が「ミシュランガイド」で評価されている現実の流れを丁寧に解説したかのようになっている。
本作では、現実をトレースしたかのような動きをそれぞれのキャラクターにも背負わせていて、かつて芹沢と並ぶニューウェーブ系の店主だった「神麺亭」の千葉は引退、一方でガッツリ系「どきゅん」の武田はオープンカーに乗ってイケイケ(笑)。そんな武田が芹沢に語った冒頭の引用部が、芹沢と、彼を愛してきた読者にとって最高のカンフル剤になっている。
そして、ラーメン評論家役の有栖涼は、口コミサイトの隆盛によりラーメンを紹介する仕事がなくなっている。大学教授に転身してラーメン論を書き上げたという設定が、個人的にはうらやましくもあり、奮起せねばと心に誓う点でもあります。
6年の時を挟んでの様々な変遷を、現実の動きともリンクさせてユニークに語らせている。第1集はゆとりを始め、その場にいた登場人物が全員驚く展開で締めているが、その後どうなるか、何を描くのかも気がかりです。

