「俺にも同じように。」
麹屋。
耀司、
「…ってぇ事は、他の酒巻と永光のとこには…???」
「いや、ふたりからは何も。まっ。酒巻と永光は、経営は関わってないからな。ふたりには財務にアクセスする権限がないから。」
耀司、その声に、
「まっ、確かに。…って、おぃ。」
「あぁ。功名な、詐欺だ。おまえに連絡した上で警察にって思ってな。」
耀司、間髪入れずに、
「すぐにだ。俺もすぐに電話する。」
「あぁ、頼む。」
「つぅか。」
麹屋、
「御来屋が言うには。」
耀司、
「あぁ。」
「やられた。とさ。」
「やられた…???」
「あぁ。…つまりは。入金されたクライアントにアクセスしたら、ページが開かず、2秒後にはいきなりcaution!! 警告の文字。慌てて操作したとさ。」
いきなり耀司、
「ふざけんな。」
そして、
「あ~~~。」
背もたれにどっぷりと。そして、頭を天井に向けて、今度は声高に、
「あ゛―――――っ!!!」
右手で持ったスマホからは、
「もしかして、これ、海外からだと…。」
その声に耀司、また、
「あ~~~。」
そして、
「…ったく~~~。」
ドアにノック。そして、
「おとうさん…???」
すぐさま耀司、
「あ。」
体を立て直して。
スマホから、
「高井戸。とにかく、これから警察に。」
耀司、
「あぁ。俺もすぐに。」
今度はドアを開けて芙美花、
「おとうさん…???」
耀司、スマホに、
「分かった。うん。俺もすぐに。じゃな。」
すぐ通話を切る。
「いきなり何…???」
芙美花。
「大きな声が聞こえたけど。」
耀司、動揺は隠せなかった。頭の中は混乱していた。何とか…。
「あ、あ~~。ははははは。はは。うん。いや…。何でもない。ちょいと仕事の話しで…。」
顔を引き攣らせながらも、
「かなり面倒な仕事が入ったんだと。麹屋が。」
芙美花、
「麹屋さん。おとうさんと共同経営者の…???」
「うん。」
口を噤んで芙美花、
「ふ~~~ん。…でも、いきなりビックリしたよ。おばちゃんなんか、何、今の声。芙美花、見て来てって。睦美さんも大きな声に慌てて。えっ…???…今のって。バセットもいきなり耳を立ててワンって。麻沙美も今のって。目が覚めて。」
耀司、申し訳なさそうに、
「ごめん、ごめん。」
そして、
「ちょっと、急ぎの操作をして戻るから。」
芙美花、その話にニッコリと。
「うん。分かった。」
ドアが閉まる。
耀司、頭を抱えて。
「どういう事だ、どういう事だ。何で、何で、何で、何で。何でこうなる。2億だぞ、2億。」
更に30分。再びドアにノック。
「兄さん…???」
耀司、思わず、
「やべ。」
ドアの外から汐梨の声、
「ねぇ、どうしたのよ~~。出て来ないから睦美さん、心配して…。」
ドアを開けながら。
椅子に座って腕組みしてる耀司。
汐梨、
「兄さん…???」
耀司、覇気のない声。
「あぁ。」
「兄さん。みんな待って…。」
間髪入れずに耀司、
「分かってる。」
部屋に入っての汐梨、
「兄さん…???」
耀司の顔を見て、いきなり声を強めて、
「どうしたの…???」
そして、
「顔、真っ蒼だけど。」
耀司、既に表情には出ていた。
「いや。なんでもない。単に面倒な仕事が入っただけ。」
眉間に皺を寄せての汐梨、
「面倒な仕事でそんな真っ蒼になる…???…何かあった…???」
耀司、何とか誤魔化そうと、
「いや。だから、なんでもない。」
と、そこまで言って。
今度は汐梨、
「なんでもない訳ないじゃない。今、面倒な仕事って。」
また耀司、
「いや。だから。」
いきなり椅子から立ち上がり、すぐさま部屋から。
「たく。」
追い駆ける汐梨、
「あ、ちょっと。兄さん。」
勢いで部屋から出て来てリビングに。
椅子に座っている芙美花と睦美。
ふたりを見て耀司、
「あ。」
そしてまた部屋に引き返そうと。
汐梨、目の前で、
「兄さん。」
立ったままで。
芙美花も、
「おとうさん。」
睦美、
「耀司さん。」
かなり心配そうな表情で。
麻沙美は既に食べ終えてバセットに凭れながら目をパチクリと。
耀司、何度も瞬き。唇を舌で。そして、
「はぁ~~。」
今度は頭を右手で、そして左手で撫でながらも頭を回して、
「え~~~。」
汐梨、また眉間に皺を。
「何があったの。」
芙美花、
「おとうさん。」
一瞬だった。耀司、頭の中で、
「…どうせ分かる。」
事実、耀司の性格上、隠し事は駄目。
これは芙美花にも小さい頃から言い聞かせていた事だった。
当然、それは汐梨も同じ。と、言うより、元より高井戸家の家訓とも言うべき。
だからこそ、以前の耀司の打撲と捻挫も、すぐに汐梨に電話で連絡。
そして、翌朝には汐梨が実家に。…の、経緯がある。
耀司、口を捻じ曲げながらも。そして今度は頭を掻きながら。
睦美の傍を通り、自分の椅子に。
汐梨も自分の椅子に戻りながら。
耀司、一言。
「詐欺に遭った。」
「え???」
汐梨も芙美花も、睦美も。
汐梨、まだ眉間に皺を。
「え…???」
耀司を見て睦美を見て、「え…???…どういう事…???」

ママでいい…。 vol,252. 「ページが開かず、2秒後にはいきなりcaution!! 警告の文字。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
