「そんなもんですかね~~。」
耀司、さっき座った椅子とは別の自分のいつもの椅子に。
芙美花もいつもの自分の椅子に。そして、
「あん。まだドキドキしてる~~。」
汐梨、キッチンの中で冷蔵庫に食品や食材を仕舞いながらも、
「女性としてはねぇ~~。ある意味、匂いって言うのは女性には敏感。と、同様に、ある種の武器にもなる。そして。常にアンテナを張っているものでもある。」
その声に芙美花、キッチンを見て、
「え…???…そうなの…???」
「そうよ~~。」
冷蔵庫のドアを閉めて芙美花に。
「あん。芙美花はまだ分かんないかも、知れないけど~~。旦那様が家に酔っぱらって帰ってきて~~。奥様が旦那様の上着を受け取った瞬間。いや。」
汐梨、僅かに顔を傾げて、
「旦那様が酔っぱらってきて~~。奥様がおっかえり~~って、旦那様の背中から抱き付く。そん時に旦那様の上着から女性の香水の匂い。奥様が言う、何…???…この香水の匂い。な~~んてね。そんなんでも、旦那様が浮気をしている事に気付く。旦那と酔っぱらってて、気付かないけどさ~~。」
芙美花、その話に、
「あ~~~、うんうんうん。映画やドラマでもあるよね、そういうシーン。」
汐梨、手を洗いながら、
「そうだよ。の、反対に~~。男性にわざと自分の匂いを擦り付けて奥様に分かるようにして、浮気をそそのかす。でぇ~~。この人は奥様より私の方を愛している。でぇ~~。家庭崩壊。離婚に突き進んで、その男性は妻と別れて愛人と再婚するって。そういう武器にもなる。」
耀司、しかめっ面をしながら、
「何を馬鹿な事を。それは~~。映画やドラマの中での話だろ。」
汐梨、耀司に、
「だから~~、兄さんは鈍感だって~~。映画やドラマでやってるって事は~~。実際に、現実でも起きてる事でしょうが~~。それを映画やドラマではフィクションとして扱ってるって~~。じゃなかったら、法律事務所なんかで、浮気調査なんてやんないでしょう。」
そこまで言って汐梨、
「まっ。ウチの勝臣、パパの場合はね~~。職業上、いろんな人と~~。だから、とにかく、いろんな匂いがする。キツイ匂いや甘い匂い。」
芙美花、
「へぇ~~~。」
汐梨、自分のコーヒーを淹れながら、
「まっ。あれだけ匂いがバラバラだと、逆に、お仕事、ご苦労様って事になるけど。…ん~~。たまには~、うん…???…この匂い、何か上品。ほほ、良いセンスしてんじゃん。な~~んて事も、あるけどね~~。まっ。そん時はパパに、いい匂いねって逆に聞いちゃうけど。そん時はパパ、正直に、当然です。化粧品会社の人だからね~~。って、そこからまた会話が弾む~~。ってね~~。…んで、次が~、今度は、恐ろしくキツイ匂い。完璧に年配のおばさんの匂い。かかかかか。また添乗お願い~~って、抱き付かれた~~。なんてね。」
耀司、
「いやいやいや。恐れいりました。」
冷めたコーヒーを一口。
「それにしても、はは、勝臣君も大変だ。とにかく、老若男女。」
「まっ。兄さんの場合はね~~。ここに来るときなんて、とにかく、義姉さんの匂いしかしないから。」
耀司、
「そういうもんですかね~~。」
間髪入れずに汐梨、目を真ん丸にして、
「呆れた~~。兄さん、義姉さんの匂いって、知らないの…???」
いきなり耀司、右手を振って、
「いやいやいや。知らないって言うか、本人が目の前にいるんだもん、それだけで。」
汐梨、芙美花の隣の椅子に座って、
「まぁ、そんなもんでしょ。で…???…何だったの、ふたりで…。」
その声に耀司も芙美花も、
「あ。」
「あ、あ~~~。」
少し困ったような…。
汐梨、そのふたりの表情を見て、
「うん…???」
耀司、すぐさま腕組みをして、顔を上げて息を吸って、
「な~~んともな~~。」
そしてキッチンの方を見る。
芙美花は芙美花で、こちらも冷めたコーヒーカップ口を。
汐梨、そんなふたりを見て、眉間に皺を。
「何…???」
耀司、背中をガッシリと椅子に。
「友達になってくれって。」
芙美花も、
「おかあさんそっくりな人の、友達になってくれ。」
コーヒーカップを口に付けたままで叔母を向いて。
汐梨、キョトンとした顔で、
「はっ…???」
そして、瞬き。
「え…???…何それ…???…友達になってくれって、はい…???…どういう事…???」
汐梨、芙美花に、
「ねっ、芙美花。」
芙美花、叔母のその声に、思わず下唇をビロンと。
汐梨、今度は耀司に、
「ねっ、兄さん。」
耀司、腕組みをした腕を頭の後ろに。
「あん…???」
汐梨を見て、
「あぁ。つまりは~~。」
そして耀司、今度は手を放して体をテーブルの方に、
「あんな…。つまりは~~。師長と一緒に来たその、坂下さん。麻友さん。今、師長が働いている杉並総合病院で働いているんだって。」
その声に汐梨、コクリと、
「ふん。」
瞬間、
「うん…???」
目を右に。眉間に皺を。
「え…???」
そして。
「…って事は、義姉さんと同じ、杉並に…???」

ママでいい…。 vol,217. 「匂いって言うのは女性には敏感。と、同様に、ある種の武器にもなる。」
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