耀司、頭の中で、
「…さかしたまゆさん。」
芙美花も頭の中で、
「…いとこ。」
麻友、ふたりにお辞儀を、
「こんにちは、坂下麻友と言います。麻のま、と、友達の友。坂下麻友です。」
宮前、終始ニッコリと。
耀司も何とか笑顔を。そして、女性にコクリと。
「高井戸、耀司。と。言います。ようは。」
麻友、にっこりと、
「はい。表札、見ましたから分かります。素敵なお名前。」
芙美花も、頭をペコリと。
「こんにちは。高井戸、芙美花。と、言います。」
そして芙美花、淹れ立てのコーヒーをふたりに。
宮前、芙美花にニコニコと、そしてお辞儀をして、
「ありがとう。」
麻友もお辞儀をして、
「ありがとうございます。」
芙美花、微笑みながらも、
「いえ。あ、はい。どうぞ。」
宮前、耀司に、そして芙美花に、
「ほんと。いきなりで、ごめんね~~。」
耀司、その声に、
「あ、いえ。あ、はい。…って、いや。」
右手を振って、
「とんでもない。」
宮前、
「全然、祐里ちゃんに会いに来れなくって~~。この人、麻友がねぇ~~。ウチの病院、杉並に、看護師として転職して~~。ようやく慣れて~。」
芙美花、
「えっ…???…杉並…???…おかあさんが前に。」
宮前、にっこりと。
「うん。そっ。元々、前の病院で看護師やってたんだけど~~。そこ、辞めて~~。ウチ。杉並に来た。で、今、私の下で働いてる~~。」
芙美花、口をひょっとこのようにして。
「…でぇ~~。いっその事だから~~。祐里ちゃんみたいに~~。ウチでも、育ってくれたら~~って、思って。…で、祐里ちゃんに、ご挨拶、がてら~~。ここに連れて来たって訳。」
耀司、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で。
「あ。はぁ。」
宮前、麻友に、
「前にも話したけど~~。こちら。耀司。前のウチの看護主任だった高井戸祐里子の旦那さん。…でぇ~~。娘の芙美花さん。」
芙美花、女性に、ペコリと頭を下げて、
「ど、どうも。」
麻友、そんな芙美花にニッコリと。
宮前、続ける。
「でぇ~~。耀司はWebデザイナーの会社の今、役員みたいな役職。」
耀司を見て、
「だよね、耀司~~。」
耀司、
「あ、はい。は、はははは。」
いきなり耀司、
「あ。」
上体を前に、左手を前に、
「ちょ、ちょっと、待ってください。」
いそいそと。そして自室に。そして机の引き出しから名刺入れを取り出し、
「ご、ごめんなさいね。」
名刺を取り出しながら、
「私の名刺です。どうぞ。」
麻友、
「すみません。あ、でも、私、名刺持って。」
耀司、右手をヒラヒラと。
「いえいえ。」
麻友、名刺を見て、
「株式会社ウェルストン。Webデザイナー・ディレクター。」
そして目の前の男性を見て、
「凄いんですね。Webデザイナーのディレクター。」
耀司、恐縮しまくって、
「いえいえ。そんな…。」
宮前、芙美花を見て、
「でぇ~~。こっちの芙美花。只今高校2年生。春になれば3年。」
そして芙美花を見て、
「芙美花、今年からは、もぅ、受験生だよね。大学受験。」
芙美花も恐縮して、
「は、はぁ~~。」
「凄いのよ、この芙美花。家事全般熟す高校2年生~~。まっ。高井戸家の今を見れば分かるけど。おかあさんの祐里子がいなくとも、ほら、この通り。奇麗さっぱり。整ってます。」
麻友も、申し訳なさそうにリビングの中を見回し、数回頷いて。
宮前、僅かに顔を傾げて。
「…と、言うか~~。…残念ながら、おとうさんのこの耀司がぁ~~。」
瞬間、耀司、思わず下唇をビロン。右目を僅かに歪ませて。
宮前、にっこりと。
「家事、一切、ダメ人間。」
耀司、
「…って。」
芙美花、思わず、
「ぷっ。」
麻友、途端に目をパチクリと。
「え…???…家事、一切ダメって。じゃ~~。」
宮前、自信を持って、
「はい。高井戸家が、こんな風に全て整えられているのは、芙美花のお蔭。高校2年でよ~~。…って言うか、実は、芙美花、幼い頃から家事、やってたの~~。おかあさんの祐里子の元で~~。物心付いた頃からもぅ~~。おかあさんの祐里子の傍で家事をね~~。」
芙美花、またまた恐縮しまくって、
「は、はぁ…。」
「でも、芙美花も、好きだったもんね~~。家事~~。」
その声に芙美花、照れるように。そして顔を僅かに傾げて、
「ま、まぁ…。…て。うん。ま。…確かに。」
「だから、祐里ちゃんも~~。安心して病院でも、夜勤~~。」
そして宮前。
「…でも、例のコロナ。」
麻友、
「あ、あ~~~。で、乳癌。」
耀司、すぐさま、
「え…???」
宮前、耀司に右手をチョコンと。
「何、言ってる~~。病院内、知らない人、いる訳ないでしょ。それに、新しい看護師だって、すぐに耳に。それに。何より対策。」
耀司、
「あ、あ、あ~~。…確かに。」
「それより。」
宮前。耀司に、
「あんた。これからどうすんの。芙美花の大学受験。まさか…。受験勉強しながら芙美花、家事全般やる。なんて事。」
いきなり芙美花、
「あ~~~~。それは。」
宮前、いきなり芙美花を見て目を丸く、
「うん…???」
芙美花、再び、口から出た言葉を、飲み込むように、
「そ、それは~~。」
体を縮こまらせながら…。

ママでいい…。 vol,209. 「まさか…。受験勉強しながら芙美花、家事全般やる。なんて事。」
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