瞬間、耀司、頭の中で、
「…嘘だろ…???」
けれども、そんな考えはすぐさま消えて、スマホに、
「嘘。ほんと…???」
スマホから睦美の声、
「えぇ。本当です。弾かせて頂きます。」
睦美の頭の中には、さっきまでの浦木と小室との会話の事が。すぐさま、
「…凄~~い…。」
思ったのだった。
耀司、
「じゃあ、じゃあ、すぐに汐梨に電話して伝えるけどいいかな。」
睦美、嬉しそうな声で、
「あ、はい。」
「多分、また連絡するけど、明後日のクリスマスは、んじゃ~~。お願い。空けておいて。」
睦美、
「はい。分かりました。連絡待ってます。」
耀司、スマホに、
「うん。ほんと。ありがとう。」
「い~~え。」
通話は切れる。
父の傍で芙美花、
「何々、睦美さん、OK~~???」
耀司、チラリと芙美花を。
「あ~~。いや、俺の方こそ驚いた。何々、一発サインでOKだよ。やは~~。」
すぐさま汐梨に。
コールをしてすぐに、
「で…???…どうだった…???」
耀司、いきなり汐梨が出て、
「早ぇ~よ。」
汐梨、スマホに、
「うんうんうん。」
耀司、
「不思議に、一発でOK~~。」
汐梨、目をガッシリと瞑って、唇をもガッシリと搾って、
「んやった~~~~。イェ~~イ。」
そしてすぐさま、体の力が抜いたように、
「あ~~~。もぅ~~。胃に悪い。」
「…って何…???…そんな、胃に悪いだなんて。」
「…って言うか~~。」
汐梨。
「その、お客様なんだけど~~。」
つまりはこうである。
大手製薬メーカーのご令嬢と老舗そば屋の次男坊の結婚と言う。
大手製薬メーカーは、本社は東京。
一方の老舗そば屋も東京ではあるが、こちらは家族経営。
社員を雇わずパートだけで賄っている。
けれども、このパートがそば屋の主人の妹であり次男坊を昔から可愛がり、
そろそろ次男坊も結婚の時期と考えた訳である。
長男は既に結婚しており、そば屋の跡取りとして修業中。
そして、その次男坊はと言えば、一般企業のサラリーマンである。
…そして…。大手製薬メーカーのご令嬢。
こちら。殆ど遊び感覚での友達と一緒に婚活パーティに参加。
滅茶苦茶美味しい料理の揃い踏みとのニュースに踊らされた訳である。
まず結婚の意思はない。
そしてこちらは、老舗そば屋の次男坊。こちらも結婚の意思は全くないが、
子供の頃から可愛がってもらった叔母からの勧めでもあり、
渋々と婚活パーティに参加。
様々な趣向がある中で、ふと、そのふたりが対面。
お互いに、見た瞬間だったという。
大手製薬メーカーのご令嬢は彼を見た瞬間に、
「この人。」
そして、老舗そば屋の次男坊は彼女を見た瞬間に、
「うそだろ。」
しかも、会話が妙に進んで行く。
全く生まれた環境、人間性も掛け離れてはいるのだが、妙に、心の内が分かる。
何故か気が合う。
…ところが…。双方の両親は猛反対。
「たかが、老舗そば屋の次男坊。」
「大手製薬メーカーのご令嬢だぁ…???つり合いが取れねぇ。」
3年の歳月が掛かったとの事。
最初に下りたのが老舗そば屋の主人。
理由は次男方だから。…と、言う事、だけではないのだが、
この次男坊、とにかく人間性が良い。人となりが良いのである。
子供から老人にまで好かれている。
何度も何度も、大手製薬メーカーのご令嬢は親の目を盗み、
結婚の承諾をもらいにそば屋に足を運んだという。
その数、数十回。
次男坊も何度もご令嬢の家に訪れては令嬢の両親に一目でも。
…けれども、一度も家の中には…。つまりは門前払い。
今や、結婚には親の承諾もいらない時代。
ご令嬢にはたったひとり、親身になってくれている女性がいた。従姉である。
彼女の一言、
「あんな分からず屋の糞親父、ほっといて結婚しな。私が保証人になってあげるから。」
と、言う訳で、大手製薬メーカーのご令嬢、
そして老舗そば屋の次男坊の結婚が、交際してから3年目にしてようやく。
但し、お互いの両親同士が対面した事実はない。
未だに大手製薬メーカーのご令嬢の両親は反対している。
…の、だが…。
事実。反対しているのは父親のみ。
既に母親は、自分の腹を痛めた子。たったひとりの手塩に掛けた娘である。
3年の歳月が母親の心を動かした。けれども、夫の手前、表には…。
そんなふたりが結婚への扉を開けたのが、「ブライダルセレモニーhanayagi~花柳~」
木守汐梨との出会いだったのである。
「…と、言う訳で~~。ふぅ~~。」
汐梨。
耀司、汐梨の話しを聞きながらに、
「凄ぇな、それ…。…って事は~~。何…???…まだ、その、大手製薬メーカーの、父親って。」
汐梨、
「ゼネックス製薬ねぇ。」
「いやいやいや。とんでもねぇ製薬会社。でっけぇよな~~。…てか、そんな…、両家の親がしあわせにって迎い入れる巡り合わせもあったろうけど。」
汐梨、
「…んなの、私に言われても~~。」
耀司、
「まっ。確かに。」

ママでいい…。 vol,190. 睦美の声、「えぇ。本当です。弾かせて頂きます。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
