暁美、
「この日本にいて…。かれこれ15年。おまえ、一度だって日本人の友達。」
そこまで言って暁美、
「まっ。ひとりの男性を好きに。…けど…。それだって~~。残念なことに。」
晄史、
「かあさん。」
誓、瞬きして、
「お義母さん、お義姉さんの…。その…。」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして誓。
そんな誓に暁美、微笑みながらも、
「はははは。私が知らないとでも~~???…知ってるよ。睦美のかつての…。」
そして暁美、
「まぁね~~。子供じゃないんだから、恋人を失って、何日も塞いで…。な~~んて事はなかったから。…けどね~~。毎日が、辛そうで…。」
暁美、睦美を見ながら、
「たった、一言だったね~~。大事な人、死んじゃった。まっ。あの時は、私も、抱き締めるしかなかったよ。…どうする事も出来なかった。」
晄史、
「かあさん。」
ソファに座ったままで暁美、
「今度はあんたかいって、思ってね~~。」
その声に誓、
「あ~~~。うんうん。晄史から聞いたけど、韓国での…。」
暁美、
「父親もね~~。…どうしてだか、私もおまえも、男運には…。」
瞬間、晄史、
「かあさん。…そんな…。男運って…。」
睦美、ポツリと。母を見て、
「かあさん…。」
けれども暁美、
「まっ。仕方がない。とにかく、過去は過去。ただ、私は、かあさんは、あんたたちに、かあさんみたいにはなって欲しくない。2度も自分の夫を失ったなんて…。」
そして暁美、
「とにかくだ、睦美。あんた。…高井戸さん、大事にしな。」
睦美、母を見て、
「えっ…???」
暁美、ソファにどっぷりと背中を。
「いい人じゃないかぁ~~、高井戸さん。まっ。確かに、あんたよりは一回りも上。それに、娘さんもいるって。…けど、まぁ~~。今の世の中、そんなのは別に~~。いろんなスタイルはあるんだ。とにかく、要は、いい人に巡り合えたかどうか。…それに、あんた。睦美。昔っから。子供の頃からそうだよ。とにかく、あんまり自分の事は話さない。…と、言うか、口下手。私はね。その事がとにかく心配。音楽教室でもどんな風なのかは分からないけど。この前、高井戸さんが来た時も、専ら話してたのは晄史。」
睦美、晄史、誓は黙って聞いている。
誓、晄史を見て、
「ま、まぁ…。」
晄史も誓を見て、
「確かに。…でも、僕らは話をしないと…、仕事にならない。」
そして…。
「まっ。姉さんの場合は…。」
そこまで言って晄史、
「ん~~。…でも、それは。…姉さんの…。まぁ…。どうしようもない…性格…???…でもさ。姉さんだって、人を好きになって、結婚も…。…だから…。」
姉を見ての晄史。
睦美、ポツリと。
「直んないよ。」
ソファに座って、上体を前に俯きながら。
「私の性格。…私が一番良く知ってる。」
「まぁね~。…と、言うか、無理に直す必要は…、ないとは思うけど…。」
暁美。
「まぁ。…何とかしな。」
一拍置いて。
「私はとにかく、あんたたちがこのまま、幸せであってくれたら、それが本望。晄史が誓と結婚。嬉しいなんてもんじゃないよ。これで、孫が生まれた日にゃ~~。天にも昇る気持ちだよ~~。はははは。」
そう言いながらソファから立ち上がり、
「食事の支度をしようかね。」
そして暁美、キッチンに向かいながら、
「睦美~~。何とかしなよ。」
キッチンでエプロンを付けながら。
誓、
「あ、あたしも~~。」
暁美、
「まっ。高井戸さん以外にも、誰か、気になる男性、いるんなら話は別だけどね~~。」
睦美を見てニンマリと。
その声に晄史、ソファから後ろに体を。
「えっ…???」
誓も、義母を見て、睦美を見て、
「え…???」
そして晄史、その格好のままで姉を見て、
「姉さん。他に気になる男性って…。」
睦美、コーヒーカップを両膝の上で。屈むような姿勢で。
そして晄史をチラリと。クシャリとした顔で、
「いる訳ないでしょ。音楽教室にだって男性、いないし。家と音楽教室の往復だけだし。」
その声に晄史、瞬きしながら、
「た…しかに。…うんうんうん。だよね~~。」
誓、
「びっくりした~~。もぅ~~。お義母さ~~ん。」
そんな誓に暁美、
「かかかかか。まね~~。こういう事でも言わないとさ~~。その気になれないでしょう~~。」
ニコニコと。
その声に誓、鼻の下を伸ばして、
「ま、まま。まっ。…うんうんうん。確かに。」
睦美、コーヒーカップをテーブルに。そして体を後ろに。ソファにどっぷりと。
「はぁ~~~~。」
晄史、
「ただ…。肝心の…、犬だよね~~。バセット。」
そして晄史、スマホの画面に…。
「ははははは。うんうんうん。可愛い~~。」
そして姉にその画像を…。
「ほら。」
睦美、画像を見もしないで顔を一瞬だけ、
「ムスッ。」
晄史、ソファからキッチンに、
「ほらほら。これ~~。高井戸さんちの犬~~。」
母と誓の間に。
誓、
「わ~~。」
暁美、
「あら。かわいいじゃな~~い。」
誓もニコニコと、
「ねぇ~~~。」

ママでいい…。 vol,123. 「ひとりの男性を好きに。」
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