叔母と父を見て芙美花、
「うん。ママだよ、ママ。」
芙美花からそんな話を聞いての汐梨、耀司を見て、
「どうよ、兄さん。」
右目を歪めて。
「どうやら、芙美花の方が、兄さんよりも遥かに説得力、あるよね~~。ふふ~~ん。我が姪ながら、うん。しっかりとしてる。」
耀司、そんな汐梨に、
「あ、いや…。その…。」
途端に汐梨、厳めしい顔をして、
「また、その、あ、いや…。その~~を~~???…全然説得力、ないんですけど~~。」
そして、またまた右を歪めて。口をグンニャリと。
「この~~。優柔不断男~~。」
間髪入れずに耀司、
「いやいやいや。優柔…不断…って。…んな。」
耀司、こちらも口をグンニャリと。
眞鍋家。晄史がコーヒーを淹れている。
暁美と睦美から犬の事を詳しく聞かされての誓、
「そういう事が…。」
睦美、コクリと。
「うん。あったの。」
そして左袖を捲って誓に。そして、ファンデーションを剥がして。
その左腕を見て誓、
「あ、ほんとだ~~。」
そして誓、
「…って、今まで全然気付かなかった。」
睦美、微笑みながら、
「いつも、ファンデーションしてるから。じゃないと、半袖だったら。」
誓、薄っすらと残っている傷を見て、
「うんうんうん。確かに。…って言うか。これって…。」
義母と睦美を見て、
「…だったら、狂犬病…???」
晄史、新しいコーヒーを。
「高井戸さんもそう言ってた。」
暁美、
「だから、すぐに駆け付けて病院に。お医者さんも、早くて助かりました。もし今以上に遅れて時間が…。取り返しが付かなかったって。…でもね~~。それからが。」
睦美を見て、
「高熱が毎日続いて~~。左手が動かない日…、続いたんだよ~~。お蔭で、ピアノも…。」
誓、
「うんうんうん。」
「1週間以上は…、続いたかねぇ~~。…でも、その後は、ケロリと。…ただね~~。傷跡がね~~。友達に何か言われるって思って~~。夏だって言うのに、長袖。…まっ。偶然にも、あの年は、冷夏だったから。ん~~。暑かったり寒かったり。それが、幸いしたんだけどね~~。でぇ~~。子供だったから、傷もそれほど目立たなく。…けど。…どうしたって、目立ってしまってね~~。それからだよ、毎日ファンデで。」
話を聞きながらに晄史、誓の隣に。
「僕がその話を聞いたのが~~。」
顔を傾げて、
「何歳の頃…???…かあさんと姉さんを見て、姉さんの左手にクリーム塗っているとこを見て、何してるのって…。それで初めて。」
暁美、
「晄史が~~。5歳くらいの時だったかねぇ~~。」
誓、
「ふ~~~ん~~。」
そして誓、
「けどさ~~~。」
睦美は袖を元に。
誓、睦美に、
「お義姉さん、どうする…???…高井戸さん。」
瞬間、睦美、顔を落として、
「あ~~~ん~~。それなんだよね~~。」
困ったような表情での暁美。
「見舞い。」
睦美。キッチンのカウンターに花瓶に生けられている花を見て、
「行かなきゃ…、って~~。思っているんだ…、けど~~。」
晄史、
「バセットって言うんだって、あの犬。」
3人揃って晄史の声に、
「バセット。」
晄史コクリと。
「うん。」
そして…。
「多分。僕が高井戸さんの家を出て、その後、ふみかさんが散歩でも。とに~~かく、大人しかった。僕が高井戸さんの家にいた間、全く吠えなかった。…って言うか、時々、顔はあちらこちら。…けど。それでも自分の定位置で大人しく。」
誓、
「へぇ~~~。」
「けど~~。」
晄史。
「前にね。高井戸さんの家に不審者が現れたんだって。その時に、そのバセット。思いっきり吠えたんだって。」
睦美も暁美も誓も、
「へぇ~~。」
「そぅかぃ。」
「すっご~~~。」
「とにかく人懐こいって。…ん~~~。確かに。」
眉間に皺を寄せて晄史。
「横になっている、あの感じでも、大きいって思うし。確かに、あれで、立ち上がったら、普通の家庭で飼っている犬よりは…、大きいよね。…中型犬だって。」
暁美、
「中型犬。」
睦美、
「ふ~~~ん~~。」
そして晄史、姉を見て、
「姉さん。」
睦美、
「うん…???」
「克服しないと。」
瞬間、誓、
「ぷっ。」
そして、
「うん。確かに。」
コーヒーを飲んで。
睦美、瞬間、瞬きして、
「えっ…???」
晄史、
「じゃないと~~。見舞い、行けない。」
瞬間、睦美、僅かに顔を落として右手を髪の中に、
「あぁ~~~。」
暁美も、
「そうだね~~。…とにかく、あんたを庇ってくれたんだから~~。…そういう意味では…。」
誓、
「庇ってくれた…、と、言うより…。」
睦美を見て、義母を見て、そして晄史を見て、
「守ってくれた。…じゃないかな~~。」
間髪入れずに暁美、
「うまい。」
そして、
「ははははは。誓~~。良い事言うね~~。」
晄史、ニコニコと、
「うんうんうん。」
睦美、ぎっしりと唇を口の中に。
暁美、
「…って言うか、睦美。あんた、高井戸さんの事、どう思ってんだぃ。」
睦美、その声に、母をチラリと、
「えっ…???」

ママでいい…。 vol,122. 晄史、「バセットって言うんだって、あの犬。」
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庄司紗千「おふろ月夜」
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
