「カミさん。妻ですけど。…乳癌だったんです。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

ドキドキ 耀司、晄史に、
「カミさん。妻ですけど。…乳癌だったんです。」

3人揃って、
「乳癌。」

誓、
「あ、でも、看護師なら、自分が乳癌ってすぐに。」

耀司、その声に誓を見て、
「そぅ…。思いますよね。…けど…。」

「けど…。」
また3人揃って。

「既に遅し。」

睦美、高井戸を見て、
「えっ…???」

「多分、体の異変を感じたのは、パンデミック。」

晄史、
「コロナですか。」

耀司、頷いて、
「えぇ。外出自粛は当然ながらも、けれども感染者は病院にとにかく担ぎ込まれ、そして…、雪崩れ込んでいる。逼迫状態です。平常時の…そんな状態ではない。ただでさえ看護師不足、医師不足。労働環境は右肩下がり。そんな中での医療です。医療従事者が必死で…。中には倒れ込む看護師も…。それでも状況は一向に改善へとは…。体の異変。それに気付きながらも、目の前の状況。」

晄史、思わず、
「う~~わ~~。」

耀司、続ける。
「僕らがテレビの報道で見る以上に、現場は相当なダメージだったと…。当然、家に帰りたいけど、家にも帰れない。」

誓、
「わ~~~。」

「仮に、家に帰って来たとしても、泥のように眠る。…そして、目覚めれば、また病院に。」
目を落としての耀司。
「僕ら…。娘も…、何も言えなかったんです。ただ、娘は、僕が家にいてくれるから。」

睦美、
「うんうん。」

「けど…。」
耀司。
「妻に、出掛ける際に、おま…、大丈夫か…???…何だか、物凄い。」
耀司、目を落として、そして目を上げて…。
「…で、帰ってくる言葉は。大丈夫な訳ないでしょ。見て分かるでしょ。…誰から見ても、疲労困憊にしている容貌。…でも行かなきゃ。目の前で死んでいく人間がいる。…しかも…。それが毎日。…それでも、それと同じ建物の下で、生きようともがいている。精一杯、助けてって、押し出すような声で訴えてる人もいる。しかも、毎日毎日、感染者は運ばれてくる。病室だけでは足りずに、通路や空いている部屋で。当然、コロナ以外の患者をね。感染すれば、そこでシャットアウト。当然、逼迫状態で受け入れられる患者も数が限られている。それでも可能な限り。…それでも…。土台…、キャパオーバー状態。ベッドが空けば、すぐさま。医師も看護師もてんてこ舞い。これ以上、どうすりゃ。…泣きながら。…そして、妻は出て行くんです。」
3人を見て、
「何も、言えませんよね~~~。」

耀司の声に静まり返る3人。

「妹も心配して…。それでも…。やんなきゃなんない。ごめんね心配掛けてって。…で、何とか感染者の数も…。…これでようやく…。…そんな時でした。いきなり妻が倒れたと。僕は自宅から。そして、娘は学校から。」

睦美、晄史、誓、高井戸を見つめながらも、
「……。」

「病院に駆け込んだ時には…。医師から言われました。乳癌ステージⅣ。」

3人共に、口の中の物を飲み込む。

耀司、笑いながら、
「全く、想像付きませんでした。そんな気配、妻からは何も…。娘だって、まっ。確かに、病院の仕事で、家にはあまり帰って来れない。仕事だからって。…だから、病院から癌だって聞いた途端に僕に泣きついて…。医師の話しでは、まさか…、ここまで…。他の看護師たちも全く気付かなかったそうです。気丈の高い人でしたからって。全く、そんな気配は微塵も。師長も、だから、祐里ちゃんだから任せられたって。去年の5月です。病院の医師たち、そして看護師たちから見守られて…。みんな、泣いてくれて…。」
耀司、3人を見て、
「…と、まぁ~~。そんな訳で。今、僕の家には、娘と僕だけの2人だけ。」
あっけらかんとして。耀司、クスクスと笑いながらも、鼻先を右人差し指で掻きながら、
「あ。ごめんなさい。僕、話過ぎましたね。ははは。」

晄史、
「あ。え。えぇ~~。と~~。…何か、凄い話で…。」

誓、
「そっか~~。そうだったんだ~~。奥様、乳癌で~~。」

耀司、誓にコクリと、
「はい。…でぇ~~。妻が亡くなっってからは~~、もぅ…、家事全般、娘がって。ま。子供の頃から家事は慣れてましたからね~~。全部、妻の真似で。」

晄史、
「…で、娘さん、今は高校。」

「はい。2年生です。」
耀司、両手を前に、
「でぇ~~。そんな…、家事の出来ない僕だから~~。妹が心配して、家事をしていて、学業も、友達との交流もままならないなんてナンセンス。私が高井戸の家の家事、手伝うって。まっ。妹の旦那も、会社、出張続きで、家にはいない日が多い。」

晄史、
「妹さんの旦那様って…。」

耀司、
「旅行会社です。」

「あ。な~~るほど~~。添乗~~。」
「なんでしょうね~~。きっと。」

誓、
「それで…、妹さんが、高井戸さんの~~。」

耀司、誓に、
「えぇ。」








ママでいい…。   vol,055.   「カミさん。妻ですけど。…乳癌だったんです。」

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