そんな隆英を見て賀寿恵、思わず口に左拳を、
「んんん。」
そんな賀寿恵に隆英、直立で頭をコクリと。
「大変失礼しました。」
そして、歩きながらも、他の部署の…。誰もが会釈をして…。
その度に、通り過ぎると、後ろを振り向いて、
「……???」
首を傾げる。
そして…。こちらも…。ご多分に漏れず。朝から殺到している注文や問い合わせの電話。
トータルインテリア・伊玖伊那。
「まっ。確かに、金賞は逃したものの、これだけの注文と問い合わせ。ありがたい限りだ。」
開発統括部長の窪塚。
「えぇ。ありがたい事です。営業の方でも、電話、鳴り止まないって言ってましたから。」
課長の伊良部。
「うんうんうん。」
社長室では尊、
「社長…。榊先生の側近の方から、お電話ありまして、明日の夕方、時間を作っておいてくれと言う…。」
梶、その声に、
「分かったわ。優先して頂戴。」
「畏まりました。」
賀寿恵、トラディショナル事業部。その隣の部長室に。
「こちらになります。…ただ…。社長も先ほど申してましたが…。今、会社全体が昨日のイベントで…。」
隆英、
「えぇ。存じております。…その辺は、ご心配なく。…ありがとうございます。」
賀寿恵、コクリと。
「では。」
ドアをノック。
中から、「どうぞ。」の声。
ドアを開けて、賀寿恵、
「失礼します。」
そして、
「真宮部長、お連れしました。」
賀寿恵と一緒に入ってきた人物に真宮。目を真ん丸に。そして口を開けて、
「……。」
けれども、それも一瞬。
真宮、
「あ、失礼。」
その人物を見て、いきなり椅子から立ち上がり、人物に対して一礼を。
隆英も同じく、一礼を。
賀寿恵、真宮に、
「真宮部長、こちら、今日付けで、トラディショナル事業部、リーダーに就任の、小埜瀬隆英さん。」
隆英、目の前の男性に向かって、
「小埜瀬隆英(おのせたかひで)と申します。よろしくどうぞ。」
男性に頭をコクリと。
真宮、腰を低くして、
「いえいえいえ。こちらこそ。トラディショナル事業部、部長の真宮麟(まみやりん)と申します。」
隆英、
「まみや…、りんさん。」
「あ、はい。真ん中の…、お宮さん。そして、麒麟の、りんです。」
隆英、
「おやおやおや。素敵な名前ですね。」
その声に真宮、頭を前に、右手をヒラヒラと、
「いやいやいや。とんでも…。はい。」
そして真宮、
「どうも、初めまして…。では…。」
真宮、小埜瀬をソファに座るように手を。
小埜瀬も一礼をして、ソファに。
「えぇ。昨日…、会場で…。」
その声に真宮、
「えっ…???…あの一瞬で…???」
小埜瀬、
「え…。えぇ~~。」
賀寿恵、隆英に、
「そうでしたか…。昨日…。会場で、お会いに…。」
隆英、賀寿恵に、
「えぇ。僅か、一瞬でしたけど…。今後、忘れられないお顔かと思いまして。」
賀寿恵、ニコリと、
「なるほど。」
隆英、
「素晴らしい展示でしたから。私にとっても、良い勉強にさせて頂きました。」
真宮、恐縮頻りで、
「お褒め頂き、恐縮です。」
そして真宮、小埜瀬を見て、
「あの…、小埜瀬さん。大変…、失礼なんですけど…。」
隆英、
「はい。」
「こういう事を…言うのは…、私、部長としては、恥ずかしいんですけど…。」
「はい。」
「何分にも…、小埜瀬さんの情報が…。余りにも少なく…。」
瞬間、隆英、
「おや。」
すぐさま賀寿恵を見て。
賀寿恵もそんな真宮には、軽い咳払いを…。
隆英、
「弓…さん…???…僕の事…。」
賀寿恵、思わず口を噤んで、目を丸く、
「あ、いえ…。私も社長からは特に、何も…。」
「おや。」
真宮、小埜瀬と賀寿恵を交互に見て、
「えっ…???…何も…???」
賀寿恵、真宮を見て、
「あ、はい。とにかく、小埜瀬さんの事、よろしくお願いします。と、だけ…。」
そして賀寿恵、
「ただ、ひとつ。今後のトラディショナル事業部、今までとは違うエッセンスが生まれる事は間違いなしと…。」
真宮、目を真ん丸に、口を尖らせて、
「今までとは違うエッセンス。」
「ですから…。小埜瀬さんの事は、追々…。と、言う事で…。…ひとつだけ…。小埜瀬さん、昨日、海外から、日本に着いたばかりです。」
「昨日。」
またまた目を真ん丸にして真宮。
隆英、
「えぇ。羽田に着いて、そのままタクシーで会場の方に。」
真宮、真ん丸の目をそのままに、2、3回、頷いて。
「…では…。これから、スタッフに…。」
隆英、深く頭を下げて、
「はい。お願いします。」
「では、私はこの辺で。小埜瀬さん。」
賀寿恵。
隆英、そんな賀寿恵に、会釈して、
「はい。ありがとうございました。」
賀寿恵、真宮に、
「では真宮部長、お願いします。」
真宮、弓に、会釈して、
「了解しました。」
賀寿恵、コクリと、
「では、私は…。失礼します。」
賀寿恵、ドアに向かって。
同様に椅子から立ち上がる真宮と小埜瀬。
真宮、手を差し伸べて、
「では。」
廊下で賀寿恵、一礼をして、
「失礼します。」
来た方向に振り向いて。
真宮、小埜瀬に、
「では。」

好きになれない。 vol,060. 「小埜瀬隆英(おのせたかひで)と申します。よろしくどうぞ。」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
