小埜瀬、目を真ん丸に、そして、顔を傾げて、
「挿し絵…???」
吉竹を見て、峻を見て。
右手に箸を持ちながら武一、
「あぁ。まぁ、本業に支障ない程度に。学生時代から続けてるらしい。まっ。俺は本人から聞いた訳じゃないから、分からないけど…。」
峻、
「えっ???…武一、お前、知らないんだ…???…サッちゃん。プロの挿し絵画家だぞ。」
その声に武一も小埜瀬も、
「うそ…???」
峻、両眉の先端を吊り上げて、
「何やってんだか。何年、同じ部署で仕事してんだよ~~~。」
「いやいやいや。挿し絵を書いている。…って事だけはマーケティング事業部に配属されて来た時から噂で知ってたけど…。そんな詳しくは…。…まっ、この部署に来て、かれこれ…。」
思い出す風に顔を傾げて、
「…10年。」
峻、目を真ん丸と、
「10年。」
キッパリと。
奈菜も、
「武一っちゃん…???」
武一、そんなふたりを見て、
「いや。言っちゃ~~悪いけど、そんな…、同じ部署って言っても、そんな、個人のプライベート踏み込んでまで…。今の時代、パワハラ、セクハラと。何でもかんでも。ま。たま~~に、女子たちと飲みにも行くけど、徹底して、聞き役に。まっ。殆ど、俺の傲りだけど。」
瞬間、峻、
「くく。あったりめぇだ。」
「…ただ…。さすがに。佐津香さんと飲みに一緒と言うのは。ない。」
口を尖らせて武一。
峻も、
「ふん。それは俺も認める。ま、この店に限っては。な。そういう事実はない。」
「でも、サッちゃん。凄いよ~~~。出版社、3つ。依頼受けてるから。」
奈菜。
その声に逆に峻、
「うそ、3つも…???…いや、プロの挿し絵で有名って、愛結美ちゃんと菜帆子ちゃんが話しているの聞いただけで、そんなに…???」
奈菜を見て、
「…3つも…。わ~~お。」
武一、唐揚げを食べながら、
「や~~~るもんだ。」
そして食べて、
「うんうん。んまい。んふふふ。」
小埜瀬、顔をゆっくりと左右に振り、
「いやいや。凄いですね。」
「…って言うか、さすがに凄い情報網。」
峻、妻を見て、
「どっから仕入れてくるものやら。…なんでしょうかね~~。大したもんだ。」
奈菜を褒め契るように峻。
「人の才能なんてものは、本当、分かんねぇもんだな。」
ビールを一口、武一。そしておしぼりに右手を。
「俺の知っているのでも彼女、ある資格を持っている。」
そう言いながら頷いて。
「それも、とんでもねぇ資格を。化粧品会社でも、あんな資格持っている人材…、もしかしたら、いる…かも、知れねぇけど…。俺が知っている限りでは、柿崎佐津香、ただひとり。とんでもねぇよ。…って言うか。」
頭をグラグラとさせながら、
「頭、上がりません。」
その声に奈菜、またニコリとして、
「あぁ~~ん。例のあれねぇ~~。」
間髪を入れずに武一、
「おっと~~、さすが。こちらも知ってましたか~~~女将殿。」
そして小埜瀬を見て、
「驚く事なかれ、彼女。佐津香さん。メイクアップアーティストの資格を持っている。」
その話にいきなり小埜瀬、目を真ん丸に、
「えぇ~~~???…マジで…???」
思わず口に右手を。
「凄ぇ~~~。」
体も僅かに後ろに。
「…と、言うか、ある意味、信じられない。」
そして吉竹を見て奈菜を見て、
「あ、…や~~~。」
「サッちゃんねぇ、日本メイクアップアーティスト技術検定試験の2級の資格、持ってんの。だから、化粧品の事には物凄いシビア。だから、社長と昵懇の仲になると言うのも分かるわよねぇ~~。」
ニコニコと奈菜。
小埜瀬、
「メイクアップアーティストの技術検定。その2級。」
小埜瀬、そしてまた顔を左右にゆっくりと…。
「いやはや凄い。」
夜の10時を回ろうとしていた。
門倉の店を出て、アーケードを抜けて数メートル歩けば、もう駅である。
「では部長、僕はこっちなんで。今日はご馳走様でした。」
小埜瀬、吉竹に深々とお辞儀をして。
武一も右手を上げて、
「おぅ。じゃ~~。明日からよろしく。」
「はい。それでは。」
腰を低く、自分の戻るべき方向へと体を…。
その後ろ姿を見送って武一、
「これから、ひとりの家かぁ~~~。」
そして、自分も自分の向かうべき方向に…。
「小埜瀬さん。ひとり息子がいるんだ~~~。」
そんな風に考えながらも、
「そっか~~~。殆ど会う事もない息子かぁ~~~。」
「おはよう~~~。」
優維香。
既にキッチンで朝食を作っている佐津香、
「あん、おはよう。な~~に~~???…昨夜、遅かったんじゃな~い~~???」
「うん。まね~~~。スタッフコレクション、ようやく軌道に…ってね~~。」
「ふ~~~ん。じゃ、何かしら、楽しみじゃない…???」
「でも…。まだまだ。おかあさんの方こそ、昨日、新しい新課長。触り程度は聞いたけど…。何、そんなに背の高い人…???」
フライパンを扱いながら佐津香。
「うん。身長180って、みんなが…。」
「へぇ~~~。」

好きになれない。 vol,026. 「サッちゃん。プロの挿し絵画家だぞ。」
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