真輝は帰って行った。
帰り際、「また来ます。」と言って。
その後、何度か愛実から柚香のスマホに電話が…。その都度、幸乃、対応して…。
愛実、大学の帰りに家に寄ると言う。
幸乃、覚悟を決めて、
「ヨシ。」
頭の中で、
「…まっ。柚香も、家には黙っていられない性格だから…。」
陽織に、
「ちょいと…、出掛けてみるかぃ。」
陽織、
「出掛ける…???」
「外だよ、外。おまえ。とにかく、何も分かんないだろ。」
「う…、うん。」
そして、幸乃、陽織を車に乗せて…。
陽織、目をパチクリと、
「凄い。おばあちゃん。こういうの…、出来るんだ…???」
幸乃、
「運転かぃ…???…車の…???…そもそも…、おばあちゃん。東北産まれだから。学校出て、すぐさま車の免許、取ったのさ~~。おばあちゃんの生まれたトコでは、車がないと不便でね~~。」
車で世田谷駅まで…。そして…、駅の近くの駐車場に車を止めて、今度は徒歩。
陽織、
「ねね。どこ…行くの…???」
その声に幸乃、
「うん~~???はははは。…ただ、ぶらぶらさ。おまえも、特に、目的はないだろ。…何が何だか分からない。」
陽織、頷いて、
「うんうんうん。初めて見る。」
幸乃、バッグからスマホを…。そして、
「あ。おはようございます。循環器内科の…、熊沢先生…。お願いしたいんですが…。」
1分後…。
「お待たせしました。熊沢…、今…、診察になってますが…。」
「そう…ですか~~。じゃあ…。……。」
40分後…。幸乃が向かった先は…。
陽織が…、
「ここが…。」
幸乃、
「そうだよ~~。柚香、お姉ちゃんが入院してた病院。長篠観音総合病院。」
そして…。循環器病棟、ナースステーション。
看護師たちが幸乃を見て…。そして隣にいる女性を見て、ぞろぞろと…。
ひとりの看護師が、
「先生。」
熊沢、
「あ、あ~~。」
そして、
「松峰先生も、呼んできてくれないか。」
彩芽、
「はい。」
師長の奥嶺、
「汀さん。」
幸乃、看護師に頭を。
「ご無沙汰しております。」
熊沢も、
「汀さん。幸乃おばあさん。」
幸乃、僅かに目頭を熱く。そして熊沢にペコリと、
「先生…。」
看護師たち、そわそわとしながら…。
熊沢、幸乃の隣の女性を見て、
「陽織…ちゃん…かぃ。」
その声に陽織、ペコリと、
「はい。陽織です。」
瞬間、看護師たち、どよめき。
瞬間、陽織、頭の中で、
「…何なの…、この人たち…。みんな…、白い服着て…。」
熊沢、
「そうですか~~。」
熊沢、陽織にニッコリと。そして、優しく、
「陽織ちゃん、こんにちは。医師の熊沢と言います。」
そして、
「師長の奥嶺です。」
笑顔で…。
「主任の上平です。」
ニッコリと。
陽織、口を尖らせて、顔だけ僅かに前に、
「こ、こんにちは…。」
美祢と駆け付けて来た松峰、
「おぃおぃおぃ。本当か…、汀…さん。…柚香さんが陽織に。」
そして、老人と一緒の女性を見て、
「いやいやいや。」
熊沢、松峰を見て、
「先生。松峰先生。」
松峰、
「う、う、うん。いやはや。」
熊沢を見て、
「驚いたね、こりゃ。」
幸乃、松峰を見て、
「松峰先生。ご無沙汰しております。」
松峰、幸乃に、
「あ、あ~~。うん。」
そして丁寧に、
「い…、いや…。こちらこそ…。」
ペコリと。
そして…。別室で…。
…そして、30分後には…。
幸乃と陽織、ふたり共に、看護師とふたりの医師にお辞儀を…。
幸乃、申し訳なさそうにも丁寧にお辞儀を…。
「それでは、失礼いたします。」
師長の奥嶺、幸乃に、
「汀さん、いつでもおいでください。」
その声に幸乃、丁寧に、
「ありがとうございます。」
そして幸乃と陽織、廊下を歩いて…。
看護師たちも持ち場に…。
熊沢、松峰、お互いに顔を見合わせ、口を噤んで…。
熊沢、
「まっ。」
松峰、
「…こんな…、もんなんでしょうかね~~。」
幸乃と陽織、エレベーターの前で…。
幸乃、陽織を見て、何やら困ったように、
「………。」
松峰、首の後ろを左手で撫でながら、
「やれやれ…。柚香さんとは性格が真逆。…と、言うか…。…あれじゃあ…、何だか、我々が…、悪者の…、ようでしたね…。」
横峯のその声に熊沢、苦笑いをするように、
「まっ、仕方がないでしょ。汀さんも、陽織ちゃんを、良かれと思って、ここに。…昨日まではしっかりと柚香さんだったんだから…。いきなり…。」
「確かに。」
横峯。
「まっ。あれだけ表情がきついと、こちらとしても…。致し方…、なし。」
「会いに来てくれただけでも、御の字と。…言う事で。」
熊沢、申し訳なさそうに横峯に。
横峯も、頷きながら、
「ですよね~~。」
そして左手を、
「…では。」
熊沢も、
「では。」
エレベーターを降りてふたり、歩きながら…。
幸乃、陽織を見て、苦笑い、
「おま…。まさか…。」
そんな祖母に陽織、
「ふん…???…うん。何…???」
そんな陽織を見て幸乃、困ったような顔でも笑みを…。そして、顔を左右に、
「ううん。…なんでも…。」

LIBRA~リブラ~ vol,114. 「柚香、お姉ちゃんが入院してた病院。」
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