陽織、男性に、
「ねぇ~~~。」
真輝、陽織を見て、
「…って…。いや…。…そぅ言われても…。…困るんだけど…。」
そんな男性を見て陽織、怒ったような顔で見つめる。
真輝、僅かに顔を前に傾けて、幸乃を…。
幸乃は口を閉ざして…。
数秒の沈黙。
…そして…、真輝、
「柚香さんが…。」
そして、
「んん。……。…ある症状に…、なったんだ。」
幸乃、小さな声で、
「解離性同一性障害。」
陽織をチラリと見て…。
「おまえが…、病院で、お姉ちゃんの柚香の身体に…。ある変化が起きた。」
陽織、今度は祖母を見て、
「ある変化…???」
幸乃を見ている陽織を見て真輝、頷く。
幸乃、
「柚香の身体に、おまえが…。…2歳で死んだ、おまえが乗り移った。」
陽織、小さな声に納得できないような顔で、
「乗り移った…。」
「現実では、有り得ない…事、なんだけど…。」
幸乃。
「…でも…。おまえは…、確かに、陽織、なんだろ…???」
「う。…うん。私…。陽織。陽織…だけど…。…でも…。…なんで、体がこんなにおっきくなっているのか…、全然。分かんない。」
真輝と幸乃、同時に、
「記憶が…、止まってるから…。」
陽織、ふたりを交互に見て、
「記憶…???」
「おまえ、陽織は、お姉ちゃんの柚香と一緒に、2歳の時に交通事故に遭った。…その時、何があったのかは、おばあちゃんも分からない。車の中で、何かがあった。」
続ける幸乃。
「おとうさんの運転する車が前のトラックに追突して、車が大破。そのせいでおとうさんも、おかあさんもおまえも…。…けど…。柚香だけは…、奇跡だったんだろうね~~。奇跡的に…、一命は、取り留めた。」
そこまで話して幸乃、陽織に。
「ここまでの事は、分かるかぃ。」
陽織、その声に顔をコクリと。
「うん。おとうさんとおかあさん。そして私、死んじゃった。…でも…。何で、私…。今、ここ…???…分かるよ。私、柚香の、姉ちゃんの体にいるって、言うの。…でも。…でも、私は陽織だよ。柚香じゃない。」
語気を強める陽織。
ゆっくりと頷く真輝。
「うんうんうん。分かってる。おまえは、陽織だよ。」
陽織、いきなりむくれるように、
「何でだよ。…何も、分かんねぇよ。」
瞬間、幸乃も真輝も、目をパチクリと…。そして、ふたり、共に、頭の中で、
「…どうして…、時々、男言葉…???」
そして真輝、目をパチクリと、
「陽織ちゃんさ。…僕が、こんな事、言うのも変だけど…。…さっき、おばあちゃんも言ったけど…。解離性同一性障害。」
その男性の声に陽織、口を噤んで…。そしてポツリと、
「あんたは…。」
その声に真輝、いきなり目をパチクリと。そして、
「あっ。そっか。…そう言えば…。」
すると真輝、テーブルに両手を伸ばして、
「ごめんね。紹介が遅れた。」
幸乃、思わずキョトンと。
真輝、
「僕の名前は勝巳真輝。」
陽織、訝しそうな顔で、
「かつみ…まき。」
「うん。…で、君のお姉さん、柚香さんと同じ大学に通ってる。」
「同じ、大学…???…うそ。…って言うか…。大学って、何…???」
真輝、
「うん。…その前に…。僕と、君のお姉さんの柚香さんは~~。入院していた病院で知り合った。」
「へぇ~~~。そうなんだ~~。私も…、初めて病院で目が覚めたんだ。いきなりでビックリした。そん時、なんで私、こんなトコにって思った。…で、寝てたトコの名前が、汀柚香。おねえちゃんの名前じゃんって、思って。」
真輝、そんな陽織に、
「うんうんうん。…で、偶然にも君のお姉さんと出会って、友達にってなって…。…ほら。しかも、同じ大学じゃん。だから…。…で…。」
そこまで言って真輝、幸乃を見て、
「…で…。…でぇ~~。…何て言うか…。柚香さんから…いろいろとぉ~~。話を聞いて~~。」
陽織、
「いろいろって…???…まきくんだっけ…。」
真輝と幸乃、瞬間、頭の中で、
「…凄い。記憶力。それに…。話、しっかりと…。」
真輝、
「今までの…、僕の話…。分かった…???」
陽織、目をパチクリと、口を尖らせて、
「うん。分かるよ。お姉ちゃんの友達。病院で入院中にお姉ちゃんと知り合った。…でも…。」
そして陽織、祖母を見て、真輝を見て、
「何…???…その…、解離性同一性障害…???…っての…。」
「どうやら…。」
真輝。
「ひとりの人間の…、人格が…。…全く別の人格になってしまう。…つまりは…。陽織ちゃん。今、君は、陽織ちゃんだけど…。本当は、その体は、お姉さんの柚香さん。なんだ。」
「うん。それはさっきの説明で分かったよ。…ただ、何で、その症状に…???」
真輝、頭の中で、
「…凄ぇ~~。理解早~~。」
幸乃、困ったような顔で…。陽織に、
「ごめんね陽織~~。…まだ、誰も。その事には、まだ…。」
陽織、口を噤んで、そしてキョトンとした顔で、
「ふ~~~ん。」

LIBRA~リブラ~ vol,113. 「お姉ちゃんの柚香の身体に…。ある変化が起きた。」
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