藪岡から袋を受け取って柚香、そして、その中身を。
「うそ。…こんな格好で…。」
真輝、隣で柚香を見て、
「……。」
藪岡、テーブルに両肘を。そして両手を握って…、
「多分、陽織ちゃん、服装、何でも良かったんだと思う。…ましてや…、時間が深夜だから。」
ウェイトレスが席に。
「いらっしゃいませ。お待たせしました。」
藪岡、
「あ、僕はコーヒーでいい。」
ふたりを見て、
「君たちは…???」
真輝、
「あ、僕も…コーヒーで…。」
「柚香さん…。」
柚香、僅かに下を向いたように…。
「私…。は…。…ジュースでいいですか…???…まだ…。なんか…。」
藪岡、頷いて、
「うんうんうん。確かに。」
そして、ウェイトレスに、
「オレンジジュース、お願い。」
ウェイトレス、コクリとしながら、
「ありがとうございます。では…。……。」
藪岡、
「僕のスマホにルシアから電話があったのが、0時32分。陽織ちゃんが店に来てるって。」
そこまで話して藪岡、
「あっ。ルシアって言うのは、昨日、柚香さんにカードを渡したけど…。」
柚香、顔をコクリと。
「あ、はい。確か、エンカント。」
藪岡、
「そう。その、エンカントのオーナー。」
真輝、
「うん。なんだか…。日本人じゃない…。」
柚香、その声に真輝を見て、
「えっ…???」
藪岡、僅かに上体を前に、
「そっ。日本人じゃない。スペイン人だ。」
柚香、
「スペイン人。」
真輝、
「うん。しかも…、何だか…、貴婦人って感じ…。」
その声に藪岡、
「はははは。」
笑いながら、
「貴婦人か。」
そして頷いて、
「うんうんうん。確かに、そんな感じ。」
そして真輝を見て、
「奇麗だったろぅ。」
真輝、頷いて、
「えぇ…。」
「本人に、言っておく。…そして、その時間に。」
柚香、頭を上げて、
「確か…、0時半…。お店に…、陽織が…。」
真輝、口を搾って…。
藪岡、頷いて、
「うん。…で、僕もすぐに家を出てエンカントに。陽織ちゃん、カウンターの中で食器を洗ってた。」
「陽織が…、食器を…。」
「そして…。」
藪岡、
「客に接待し終わって、陽織ちゃんを僕の隣に呼んだんだ。」
柚香、藪岡を見つめるように、
「呼んだ…。」
「うん。いつも、陽織ちゃん、自分の席、決まっているようで、必ずカウンターの一番端の椅子に座ってる。」
真輝、
「へぇ~~。」
柚香は口を噤んで。
「…で、いろいろと話をする内に…。昨日の話になって…。…って、ま、今で言えば、一昨日か…。」
真輝、
「一昨日。」
柚香も、
「一昨日。」
藪岡、また頷いて、
「うん。」
そして、
「ほら。初めて真輝君と陽織ちゃん。」
柚香も真輝も同時に、
「あ~~~。」
「けれども、そこでいきなり陽織ちゃんが、泣きだした。」
柚香と真輝、また同時に、
「泣きだした。」
「うん。」
藪岡。
「理由は…。」
そして藪岡、今度はテーブルの上で腕組み。
「つまりは…。陽織ちゃん、思い出しちゃったんだよ。」
柚香、少し眉を歪ませて、
「思い…出した。」
「おとうさんとおかあさん。そして、陽織ちゃんが亡くなっていた事。」
柚香、
「えっ…???」
瞬間、真輝、
「あっ。」
目を見開いて。そして柚香に、
「柚香さん。ほら。茶の間でいきなり我に返って。」
柚香、
「あ。」
少し顔を顰めて、
「あ~~。そっか~~。」
「…で。ここで初めて陽織ちゃん。両親と陽織ちゃんが亡くなった事を知って…。泣き崩れて…。」
そして藪岡、
「まっ。店の中で泣き崩れられても…。…で、店の奥の、スタッフルームで…。」
柚香と真輝、また藪岡を見つめて…。
藪岡、
「泣いている陽織ちゃんをスタッフルームに運んで…。…けど…。宥めていたら…。その内に…。」
真輝、
「眠ってしまった。」
柚香、真輝を見て、
「えっ…???…そうなの…???」
真輝、柚香を見て、両眉を上下に。
藪岡、
「そういう事だ。」
そして目の前に出されたコーヒーを。
「まずは、飲もうか…。」
柚香と真輝、
「あ、はい。」
それぞれ一口。
柚香はストローで…。
藪岡、
「…で…。スタッフルームで眠ってしまった陽織ちゃん。ルシアと…、どうするってなって…。」
柚香と真輝、コクリと顔を…。
「とにかく、このままにしてはおけない。店で朝を迎える訳にはいかない。…で、陽織ちゃんの家に帰すってなって…。」
そこまで話して藪岡、
「…なんだ…けど~~。」
いきなり真輝、
「あっ。そっか。それで…???」
藪岡、真輝を見て、ニコリと、
「そういう事。」
真輝、柚香を見て、
「藪岡さん、柚香さんの家、知らないから。」
柚香、目をパチクリと、
「あ、そっか~~。」
藪岡、顔をコクリと、
「うんうんうん。…で、まずは陽織ちゃんが持っているはずのバッグ。スマホとか…、学生証。…けど…。さっき柚香さんも気付いたんだけど…。何も持っていない。」
柚香も、
「そうなんです~~。バッグも…。しかも、スマホまで…。」
袋の中を手探りして…。
藪岡、ニッコリと、
「陽織ちゃん…、だからね~~。」
瞬間、柚香、
「えっ…???」

LIBRA~リブラ~ vol,073. 柚香、その中身を。「うそ。…こんな格好で…。」
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