藪岡、
「…けど…。」
目をキョロキョロと…。ルシアを見て…。
ルシア、
「…ん…???」
スマホの向こうから、
「家は分かります。…けど〜〜。」
そこで真輝、少し考える風に…、
「ん〜〜。…どう説明すれば…。僕も一度は行きましたが…、ただ…。あの時は、陽織さんと話をしながらの…。だから…。…まぁ、帰りは、それほど…。…けど…。…どぅ…。」
実際、陽織の家は、確かに世田谷の真輝の家と同じエリアではあるが、全くの逆方向。
しかも、その時真輝は、頭の中で、
「…へぇ〜〜。ここに住んでるのかぁ〜〜。…ってか、あんまりこっちには、来た時…ないけど…。」
そんな風にも思っていた。僅かの沈黙の後…。
スマホから、
「すみません。僕、今から、そちらに、行っていいですか…???」
瞬間、藪岡、その声に、
「はっ…???」
「多分、実際に動いてみないと…。」
「あ、あ〜〜。まま、そう…かも…、知れないけど…。…と言うか、夜中だぞ。それも、深夜…。既に1時は過ぎてる、大丈夫なのか…???…まっ。確かに、子供ではないから…。大学生。…それにしても…。」
その声に真輝、
「大丈夫です。場所は…、え…と〜〜。確か、名前が…、エンカント。」
藪岡、笑いながら、
「はは。そうだ。…と、言う事は既に柚香さんから…。」
真輝、
「えぇ。はい。」
藪岡、ルシアを見て、
「場所は…。」
藪岡、真輝にエンカントの住所を…。
真輝、
「はい。分かりました。すぐに向かいます。」
スマホを耳に藪岡、
「頼む。」
真輝、すぐさまパジャマを脱いで着替えを…。そして下に降りて…。
すると風呂場から誰かが入ってる音。ドアを開けると男物の衣類。
真輝、
「とうさん…???」
するとドアの向こうから、吾大の声、
「あぁ〜〜???」
「俺、ちょっと、出掛けてくるから。ほら、前に話してた解離性同一性障害の人。今、ちょっとある場所で、家に帰れずにいるらしい。俺、ちょっと行ってくるから。」
またドアの向こうからの声、
「あぁ〜〜。ん〜〜。分かった〜〜。気を付けてな〜〜。」
そして、顔にお湯をバシャッと。
「ふぅ〜〜〜。」
そして、その1分後…。吾大、いきなり体を。そして浴槽の端に手を。お湯がまたバシャッ。
「おぃっ!!!…今、あいつ…。何てった…???」
通りに出た真輝は走って何とかタクシーを。
ドライバーに、行先を…。
そして、店の前。
真輝、
「そっか〜〜。ここか〜〜。」
タクシーから降りて店の前。けれども、
「ここじゃない。…ってね〜〜。」
店の裏の方から…。
ドアを開けて、ゆっくりと中に…。
「お邪魔…、しま〜〜す。」
そして、電話で聞いたスタッフルームに。ノックをして、
「失礼…。」
ドアを開けると、
「おぅ。来たか〜〜。」
中には一人の男性。そしてひとりの60代風の女性。
そして陽織がその男性に支えられているように。
店の客たちは肇に陽織の事を度々訊いていた。
その度に肇、
「ふたりが着いているから大丈夫。」
と、笑みで…。
藪岡、男性を見て、
「君が…。…勝巳君…???」
真輝、
「あ、あ〜〜。はい。」
ルシア、
「はい、こんにちは〜〜。…って言うか、こんばんはだね。」
藪岡も、
「悪いな、こんな夜中に…。」
真輝、
「あ、いいえ…。」
ルシア、
「んじゃ、私は、タクシー、捕まえてくるね。」
藪岡、
「あ〜〜、悪い、頼む。」
ルシア、
「OK〜〜。」
そしてドアに向かって。ドアの外に。
真輝、目をパチクリと。
「あの…。今の女性の人…。」
藪岡、
「あ〜〜。ここのママだ。オーナー。」
「オーナー…???…外国人…???」
「あぁ〜〜。スペイン人。」
「スペイン人…。…なんか、凄い、貫禄ある。」
「まぁな。かなりのやり手…では、ある。」
ノックの音、そしてドアが開いて、
「捕まえたよ。待たせてある。」
藪岡、
「ありがとう。」
そして真輝を見て、
「んじゃ、頼めるか。」
真輝、
「あぁ〜〜。はい。分…かりました。」
陽織は眠ったまま…。
ふたりで陽織の両側、両肩をそれぞれ首に回して。
そしてスタッフルームを…。
藪岡、
「ビールをグラスで、半分以上は…、確か。飲んだはず。」
その声に真輝、目を丸く、
「うそ。」
藪岡、
「えっ…???うそって…???」
真輝、ゆっくりと歩きながら、藪岡に、
「柚香さん、言ってたんですけど…。お酒、全く飲めないって。…と、言うか、飲んだらそのままバタン。飲めない…と、言うか、飲まない。体が受け付けないって。」
その声には藪岡もルシアも、
「えぇ〜〜ぇえ…???」
ルシア、
「その割には…、ビール、あんなに美味しそうに…。」
藪岡も、ルシアに、
「うんうんうん。」
けれども藪岡、
「あっ。でも…。…そっか〜〜。それで…陽織ちゃん、今、この状態…???…体は柚香さん。…けど…。意識は…陽織。…体が…、アルコールで…。」
ルシアも、
「そういう事…???」

LIBRA~リブラ~ vol,071. 「家は分かります。…けど~~。」
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