その…、目の前の平べったい器具のようなものの画面を見て…。
確かに、画面には、「真輝くん」の文字。
真輝、更に、画面を…。そしてまた陽織に、
「はい。これ。これが今まで柚香さんと交わしていたラインの内容。どぅ…???」
陽織、また目の前に出された画像を見て、今度は顔をグシャリと。
…けれども、ツンツンとしながら、
「…だから何よ。私…。帰る。」
そして小声で、
「私は柚香じゃない。陽織だ。」
そんな陽織に真輝、一度、両肩を上下に。そして、
「…だから〜〜。ちょって待てって〜〜。柚香さん。あ〜〜〜。…じゃなかった。ひおりさん。…って、ひおりって、どういう字…???」
その声に前を向いたままで陽織、
「何バカな事言ってんのよ、太陽の陽に、織姫の織に決まってんじゃん。」
「へぇ〜〜〜。うんうんうん。良い名前〜。」
その時、陽織、ふと、
「えっ…???」
僅かに体を止めて…。…けれどもまた…。
そんな陽織に…、歩調を合わせるように真輝、
「こんな事…。僕が言うのも…、ひょっとしたら、可笑しいな事かも…、知れないんだけどさ。」
陽織、ツンツンとして、多少は後ろの男性を気にしているのか、
前を向いたままで後ろの方に視線を…。
真輝、
「仮に…、君が陽織さんだとして…。…じゃあ〜〜。そのバッグとスマホを持っているはずの…、柚香さんって…???…何処にいるんだろうね…。」
その声に陽織、歩きながら、
「知る訳ないじゃん、そんなの。」
「じゃあさ。」
真輝、続ける。
「君は、どうしてあのカフェに来たんだろうね。その目的って…???…僕は陽織さんとは約束してなくって、柚香さんと約束したんだけど…。そのスマホのラインのメッセージのように。…そしてそのスマホを持っているのが、柚香さんではなくって、君、陽織さんって…どういう事…???」
「うるっさいわね〜〜。」
いきなり陽織、体を硬直させて、般若のような形相で、
「…そんなの…、どうでもいいでしょ。」
その瞬間、真輝も興奮したように、
「よかないよっ!!!」
いきなり鼓動が高鳴る。
そんな怒ったような声の男性に振り向いて陽織、いきなり体を僅かに引く。
…けれども、今度は両眉の先端を僅かに吊り上げて、
「あなた…、一体…何なの…???」
真輝、目の前の陽織と言う女性に、厳しい目で、
「悪いけど…。俺だって、気になってるんだよ。…って言うか〜〜。心配してる。柚香さんから最近、朝になると妙に頭が痛い。自分は、夜は寝たら朝まで起きずに熟睡するタイプなのに…。おばあちゃんから、一度、お酒臭いって言われたけど…。私はお酒を飲めない。何がどうなっているのか分からない。…そして今日、朝になって、いきなり眠気が…。そして午後の3時まで眠ってたって…。朝になっても、夜、全然眠れなかったみたいって。どうしてなのか分からないって…。」
その話を、口を尖らせながら聞く陽織。
真輝、
「だから柚香さん、俺にラインしてきて、じゃあ〜〜。会って話そうかって…、なったんだよ。そして、現に君は、ここに来ている。どういう事…???…君は僕の事を、何なのよって、言ったけど…。君の方こそ。」
真輝、いきなり陽織に向かって怒るように、
「なんなんだよっ!!!柚香さんを返してくれないか。顔も瓜二つ。着ているものも、それは柚香さんが着ていたもの。そして肩に掛けているバッグ。それもしっかりと柚香さんのもの。そして、当然、そのバッグの中に入っているもの。それも柚香さんのものっ。どうなってるっ!!!」
強い口調で真輝。行き交う人たちはそんなふたりを見て顔を傾げながらも…。
目の前の男性から一気にまくし立てられたような陽織、
何をどう言えばいいのかさすがに黙ったままで…。
…けれども、口に出る言葉は…。…結局、
「…私だって、何が、どうなっているのか、全然分かんないよ。…さっき…、気付いたらお店の中にいて…。…だから、なんでここにいるのかって…。分かんなくって…。とにかく…、帰ろって…。…そしたら、あなたが目の前に…。…しかも、私に声掛けて来るし…。私…、あなたの事…、全然、見た事もないし…。」
真輝、少しずつ興奮して高鳴っていた鼓動も落ち着いてきていた。
「なんでここにいるのかって…。分かんなくって…???…全然、見た事もない。」
そして真輝、
「君は…、汀…、柚香さん…じゃない…。」
陽織、ポツリと、
「陽織だよ。…だから、汀…陽織。…柚香は私の双子の姉だよ。…お姉ちゃんだよ。」
真輝、
「ひとつ、聞いてもいい…???」
陽織、コクリと…。
「君のおかあさんの実家って、群馬…???」
その声に陽織、
「ん〜〜〜???…あんまり覚えてない。…私…、ちっちゃかったから…。記憶が…。ないんだ。」
「記憶が…ない…。…どういう事…???」

LIBRA~リブラ~ vol,037. 「私は柚香じゃない。陽織だ。」
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