「多重人格。今、医学的には、それを、解離性同一性障害と言う。…稀な病状だ。」
藪岡。
亮輔、
「解離性…同一性障害。」
ルシアも肇も、
「解離性同…一性障害。」
亮輔、目を上に向けて…、
「つまりは…。…例えば…。俺の体の場合…。誰かが、俺に乗り移った…。…じゃあ~~。俺の意識は…???…何処に…???」
藪岡、真っすぐ前を見て、一度瞬きをして、僅かに頷いて、
「そぅ。…つまりは、そういう事だ…。」
亮輔、顔をグシャリとさせて…、
「えぇ~~え…???」
肇も僅かに顔を傾げて…、
「ふん。」
ルシアも、
「まっ。話を聞いていると、つまりは…。…そういう事だわね~~。」
亮輔、そんなルシアに、
「いやいやいや。…そんな簡単に、そういう事だわね~~って…。…んじゃ、何…???…もし…。…もし仮に…。俺がその解離性…なんとか…???…俺の体に誰かが…???…で…???俺の意識は…何処に…???…で、俺は、自分の体に、ちゃんと、戻ってこれんの…???…その方法は…???」
その話に藪岡、
「…残念ながら…。」
肇、藪岡の顔を見て…。ルシアは、真っすぐ前を…。
「…残念ながら…、今の医学では…。まっ。薬で徐々に…。…と、言う方法も…ない事も…ない。…つまりは…、精神を安定させる事が目的だから…。…けど~~。実質、それが正解。…と、言う事でもない。特殊なケースだからね~~。体にメスを入れて治すと…、言う事が出来ない。…今のところ…、未知の世界だ。とにかく…、本人に掛かっている。本人にしか…、解決できない。」
その話に亮輔、口を尖らせて…、チラリと陽織の顔を…。
「最……悪。」
藪岡、
「…と、それともうひとつ。…無理に急かせば、それだけ負担になる。最悪は、精神状態が…。」
「精神状態が…???」
亮輔。
「ん~~~。…例えるなら~~。今で言う~~。動かない…ソンビ。」
ルシア、藪岡の左肩をポンと。
「かかかか。何よ~~。その例え~~。」
肇もクスクスと。
亮輔、顔をグシャリと、
「グェッ」
そうこうしている内に陽織、時計の針が…。
肇、
「陽織ちゃん。そろそろ時間。」
残念ながら陽織、所持品は何一つ持っていない。
腕時計も付けてなければスマホすら持っていない。当然ながら、財布も…。
そんな肇の声に陽織、壁の時計を見て、
「あ。はい。」
そして後ろの客たちに手を振って…。
客たちも、ニコニコ、
「またね~~。」
そして陽織、スタッフルームの方に…。
亮輔、
「へぇ~~。彼女、一応、そっちに…???」
肇、
「まっ。そういう事~~。」
亮輔、口をへの字にして、
「しっかし…。」
藪岡、
「ん~~~???」
「これからも…、彼女、ここに…。」
「…だろうね~~。」
「どうやって、接すりゃいいんだぃ。」
「どうやってって…。」
チラリと亮輔を見て藪岡、
「そりゃ当然、おま…。…普通に…だろ。」
「いや…。藪さん。…普通にって…、簡単に言うけど…。」
「ふん。簡単な事だけど…。」
亮輔、藪岡を見て、
「いや…。…てか、藪さんはさ。ん~~。だって…、専門家だもん。仕事上…。」
そんな亮輔に藪岡、カウンターに両肘を…。そして両手を握りながら、
「まぁ…な。当然、病院にはいろんな人が来る。それこそ、精神が病んだ人も。」
亮輔、また顔を崩して、
「ふ~~~ん。」
藪岡、そんな亮輔を見て、
「なんだ亮輔~~。やたらと彼女の事、気にしてんだな~~。あんな可愛い彼女、隣にさせておいて~~。」
ルシア、その声に、
「かかかかか。まっ。そんなもんだわね~~。」
いきなり口を尖らせて、慌てたように亮輔、
「いやいやいやいや。あいや。そんな…俺…。…って言うか、阿須賀の場合は…、たまたま居酒屋で飲んでた時に…。話の成り行きで…。」
藪岡、
「大丈夫だ。それ以上は突っ込まねえよ。可愛い子じゃない。いつも、一緒に店、来てんだろ…???」
肇、
「はい。そのようで~~。」
藪岡、チラリと亮輔を見て、
「んじゃ、大事にしなきゃ。なっ。」
そんな声に亮輔、歌舞伎の見得を少しだけ崩したような顔で、
「ふ~~ん。」
ルシア、カウンターの中で、亮輔を…。
「かかかか。その様子じゃあ、陽織ちゃんの事、余程、気になるって…顔だね~~。」
すかさず藪岡、
「おやおやおや。…と、言う事は…、まさか…、乗り換えると…???」
その声に亮輔、顔を捻じ曲げて、
「…んな訳…、ねぇじゃん。」
「けど…、その顔は~~。」
ルシア、意地悪そうな顔で…。
亮輔、
「いや。いやいやいやいや。…つぅか~~。」
藪岡、またチラリと亮輔を…。
「ん~~~ん…???」
「何気に…、気になるじゃん。マジで目の前に…。その…、何…???…解離性…。多重人格って…。」
藪岡、
「解離性同一性障害。ね。」
「自分の体に、誰かが…。…なんとも…、カオス。」
藪岡、
「はははは。…ん…、まぁ…。そうも…、言えるか…。混沌としている…かも…。」
「今まで、ねぇ経験だよ。目の前にいる人間が…。実は、その人じゃねぇ…???…訳分かんねぇし。」

LIBRA~リブラ~ vol,034. 「今、医学的には、それを…。」
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