目をパチクリと亮輔、
「あ。…えっ…???」
けれども、
「あ。え…???…あ~~。そっか~~。はいはい。…と、言う事は~~。…俺が大学で会った、陽織さん…って言うのは~~。実は、お姉さんの方…。ふんふんふん。…なら、合点いく。ふんふんふん。」
「には…、ならないと…。思うんだけどね~~。亮輔君。」
そんな藪岡に亮輔、
「へっ…???…なんで…???」
亮輔を見て藪岡、
「何か…、見落としてないか…???」
肇、洗い終わった陽織を見て、ニッコリと、
「うん。ありがと。」
陽織、肇を見て笑顔で、
「終わりました~~。」
そして、またカウンターを出て、自分の椅子に…。
そんな陽織を見ながら亮輔、
「何か…、見落としてって…。」
藪岡、グラスの中の物を一口。
「つまりだ。…病院に…、入院していたのは、陽織ちゃんではなく、お姉さんの…。」
亮輔、
「お姉さんの…。」
「名前を、ゆずか、と、言うそうだ。」
「ゆずか…。」
両眉の先端を吊り上げての亮輔。
「お姉さんが入院していた、その病室に。長い眠りから覚めたのが陽織ちゃん。…これって…、どういう事だ…???」
その声に亮輔、
「あっ。…へっ…???…」
右目を歪めて…。
「病院に入院…。病室にいたのが…。…えっ…???…陽織ちゃんじゃなくって…、お姉さんの…、ゆずかって…双子の…???…けど…。…長い眠りから…、覚めたのが~~。お姉さん…じゃあ、なくって~~。」
そこまで言って亮輔、
「へっ…???…はっ…???」
そして端の方で、ビールを飲んでいる陽織を見て、目をパチクリとさせる亮輔、
「いっ…???…うそ…。」
そして亮輔、藪岡を見て、
「うそ。…じゃあ~~。あの子って…???」
藪岡、
「ふん。陽織ちゃん…。なんだろうね~~。」
「いやいやいや。だって…。病室にいたのが…、陽織ちゃんのお姉さん。…でも…。目が覚めた時には…。はぁ~~あ~~~???」
ルシア、
「不思議な事って…あるもんだよね~~。」
亮輔、そんなルシアの声に、
「いやいやいや。…不思議な事って…。」
そして亮輔、口をへの字にして、
「え、え゛ぇ~~~???」
藪岡、
「まっ。…現実離れ…、してると言えば…。…それまでかも…、知れないけど…。…そこで、ビールを飲んでいる人は…。陽織ちゃん。…でも、亮輔が見た、大学での、その子は…お姉さんのゆずかさん。…と、言う事になる。…けれども…。…では…。日中の陽織ちゃんは…何処に…???」
亮輔、目を見開いて、
「いやいやいや。…有り得ないでしょ。」
藪岡、
「有り得ないも何も…。んじゃ、亮輔、おま、陽織ちゃんに聞いてみな…。本当に君は、汀陽織さん…って…。…頑なに彼女、私は陽織ですって…。一点張りだと思うよ~~。」
亮輔、顔をグシャリとさせて、
「いやいやいやいや。…マジで~~???」
「医学的に…言えば…。…ひとりの人間が…、ある種の特別な状態になっている…。いわゆる、多重人格。俺もさっき、気付いたんだが…。」
ルシア、
「多重…人格…ねぇ…。…うん。…私も…、聞いたことはあるわ。人ひとりに、他人が乗り移っているって…。」
亮輔、
「いやいやいや。マジで…???」
「そして…。」
藪岡。
「そういう意味では…。陽織ちゃんの場合は…。…多分…、俺の見立てで言えば…。彼女は…。…本当の彼女は…。汀…、ゆずか…と、言う人間…、なんだろうね~~。陽織ちゃんの…お姉さんの…。」
その声に亮輔、ますます目を見開いて、
「マジで…???」
「悪いけど亮輔。俺…、こうみえても、精神科医。なんだよ、そのマジでって言葉~~。俺を誰だと思ってる~~???」
亮輔を見てニヤリと…。
途端に亮輔、体を縮こまらせて、
「あ、あ~~~。はいはいはい。はぃ。…確かに…。…けどさ~~。いきなり目の前で…。そんな…、超~~現実離れ…した事…。」
「まっ。確かにな~~。…あまりに…、シュール。」
「いやいやいや。シュールってもんじゃねぇだろ…。超…異常現象だろ。」
その声に藪岡、
「いやいやいや。だからこその…、シュールだろ。それ以外の…、何者でもない。」
亮輔、
「…って…。マジで…???」
肇、
「不思議な事…。あるもんですよね~~。」
藪岡、
「ん~~~。…けど…、さすがは、ルシアに肇ちゃん。俺の今までの話に、全く…、動揺も、何もない。」
その声に肇、
「ははははは。まっ。こういう仕事をしていると、いろんなお客さん、いますからね~~。ねっ、オーナー。」
ルシア、その声にニッコリとさせて、
「ま、ねぇ~~。幽霊か、犯罪者…以外なら、どんなお客様でも歓~~迎~~。」
藪岡、
「かかかか。正に。人間、出来ている。」
亮輔、
「…ってか…。…これから…、どうやって、接すりゃあ、いいんだよ…???…これからも、店、来るんだろ…???」
藪岡、そんな亮輔に、淡々と、
「だろうねぇ~~。」
肇を見て…。
肇もコクリと。

LIBRA~リブラ~ vol,033. 「何か…、見落としてって…。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
