そんな薫郎を見て橙、自分も座席から体をずらし、
「ユッキ。ユッキ。ちょっ…。」
薫郎、がっちりと目を閉じ眉間に皺、そして汗を掻き、かなりつらい表情…。
下腹部を押さえている。
「…家を出てから、…少し、痛みが…。大丈夫だと…。思って…。うっ。」
橙、いきなり慌てて、
「ちょっ…、ちょっと…ユッキ!!!」
周囲の乗客たちが…。
「な…なに…???」
「どうか…???」
「なに…???」
橙、
「す…、すみません。なんだか…様子が…???…誰か…???」
そんな橙に薫郎、
「ゆず…。ゆず…。大丈…。うっ。」
橙、
「大丈夫じゃないよ。やだよ、ユッキ。ユッキがこんな…。私…。」
そんな声に、
「ねね、ちょっと…。」
橙の左肩を叩く女性、
「どうしたの…???そんな大声出して…。」
橙、
「ユッキ!!!」
薫郎の背中に右腕を回して、左手は薫郎が下腹部を押さている右手に重ねるように…。
けれども、その声に橙、振り向いて、顔を見た瞬間、
「へっ…???…蘭…姉ちゃん…。」
そして、その女性も…、
「はぁ…???ゆず~~???」
橙の6歳年上の姉、蘭である。
橙、いきなり、
「蘭姉ちゃん、助けてっ!!!」
大声で。
その、妹の声に蘭もビクン。
「どうしたのよ、その人…???ゆずの知り合い…???」
橙、
「会社の人なの。お姉ちゃん、蘭姉ちゃん。」
その、妹の必死さに蘭、
「うん、ちょっと待ってて。」
そして、右左、通路を見て。
「しっかたない。ゆず、ちょっと待ってて。」
そして、足早に通路を…。
ドアが開き、次の車両。
「いた。すみませ~~ん。」
その声に、顔を前に向ける客室乗務員。
蘭、その客室乗務員の傍に駆け寄り耳打ち。
数秒後、ふたりで橙の元に。
客室乗務員、苦しそうな男性を見て、
「どうされました…???」
橙、
「さっきから…様子が…。お腹を手で、何度も押さえていて…。それに汗…。」
蘭、
「物凄い…辛そう…。もしかして…、何か…病気…???」
「ううん…分かんない。なんか…、家を出たときから、少し、お腹…痛かったって…。」
客室乗務員、腕時計を見て、
「もう…、15分程度で仙台です。我慢…、出来ますか…???救急車の手配…、しておきます。」
蘭、客室乗務員を見て、
「お願いします。」
そしてチラリと客室乗務員の左胸のネームプレートを見て、頭の中で、
「…柏木…沙奈香(かしわぎさなか)。」
「すみません、ちょっと、失礼します。」
その場を離れる客室乗務員。
蘭、橙と男性を見ながら、
「ん~~~。」
橙、小さな声で、
「…ユッキ。…ユッキ。」
数分後、戻ってきた客室乗務員。別の客室乗務員と…。
「すみません。空席に、そして…、なるべく出口に近い席に…、運びます。救急車は手配しました。多分、到着時には、ホームで、救急隊と落ち合えるかと…。少しでも、体…楽に…。」
蘭、
「ありがとうございます。」
そして、
「ゆず、良い…???」
橙、コクリと頷いて。
「ユッキ。辛いかもしれないけど…。体…、動くよ。楽な方がいいよ。」
蘭、周囲の乗客に、
「すみません。お騒がせします。」
「とんでもない、お大事に。」
「た~いへん。」
「気を付けて。」
蘭、
「ありがとうございます。」
橙、目を潤ませて、頬にはキラリと涙。そして、グスリと…。
蘭、「ゆず…。」

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