薫郎に自分の口から何も言えずに半年。
例年通りの家族でのクリスマス。賑わう我が家。
既に大学生となっている長女。そして、高校最後のクリスマスを迎える次女。
それぞれが、彼氏がどうのこうのと…。
その中でも、そんな家族のご機嫌を損なわないようにと繕う橙。
両親も、普段はあまり聞けない娘たちの話に、この時ばかりはと満面の笑顔。
当然である、彼女たちのおねだりのクリスマスプレゼントを手にしているわけだから…。
橙はと言えば、特に欲しいものなく、これから自分が読む本が数冊のクリスマスプレゼント。
けれどもこの時から、密かに自分で決めていた事がひとつ。
「手作り…、作ろう。」
それが手編みのマフラー。
頭の中には、いつも薫郎がいた。
そしてクリスマスからひとりで勉強しながら部屋でコツコツと編み続けたのだった。
そして編み続けて大凡1ヶ月。既に2月に入っていた。
その頃からクラス中に、ある噂が広まる。
お昼休みの橙のすぐそばの女子生徒が、隣の女子生徒に、
「ねね、杉浦君って、引っ越しするんだって…???」
「うんうん。知ってる。お父さんの仕事の都合って聞いてるけど…。」
「杉浦君のお父さん、確か、銀行員だっけ…???」
「うん。転勤が多いって、ウチのお父さん。」
そういう話が耳に届き、橙、いきなりドキン。
頭の中で、
「…えっ…???杉浦君…、転校…???」
その瞬間、今まで懸命に編んできた手編みのマフラーが…。
帰宅して、机の上に置いておいた、まだ中途半端のマフラー。
両手で握りしめて…。そしてそんな握りしめた手に、一滴、一滴、涙が…。
途端に、
「あ―――――――。」
数秒後、マフラーを思いっきりベッドに投げつけていた。
力なく、その場に跪いて、ずるずるとベッド際に。
そして、そのままベッドに体をバッタリと。
「なんで…。なんで…。転校なんて…。」
3日間、ご飯もあまり喉を通らなかった。
その時、夕食中に長女の蘭(らん)、
「ゆず~~。どしたの…???元気ないけど…???」
橙、そんな長女に首を振って、
「んんん…。なんでも…。」
思いっきり、顔を真っ赤にさせて。
そんな橙を見て次女の霞(かすみ)、
「ん~~???ゆず…、まさか、中学生で好きな男子、できたとか…。」
次女のその思いがけない言葉に、父も、母も、
「……???」
その瞬間、思いっきり、箸を持った手をヒラヒラとさせて、懸命に首を振る橙。
「かかかか。冗談よ、冗談。中学生で、そりゃないよね~~。」
その時、次女の霞、
「あっ。そういえばさ、お姉ちゃん、友達で、失恋した。な~んていう子、いるの。」
蘭、
「ふ~~ん。そりゃ、そりゃ、ご愁傷様~~。」
「けどさ。よくよく話を聞いてみると。」
「うん。」
「あんた、何やってんのよ~~。…って感~じ~~。」
蘭、
「ん~~~???」
「だ~~ってさ。物凄い、勿体ないって…。」
蘭、その霞の声に、
「…???」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
