そしてその本を橙の机の上に、笑顔で、
「はい。」
そして、教室を出ていく男子生徒に、
「おい、優斗、ぶつかっておいて、謝れよ。」
薫郎。
廊下に差し掛かったその男子、全く悪びれることなく、
「悪ぃ、悪ぃ。」
笑いながら…。
薫郎、
「ごめんな。読書の邪魔して。」
そして振り向いて、また隣の男子と話し出す薫郎。
その瞬間、橙、目をパチクリ。そして、なぜかしら、頬を赤らめて。
そして橙の前の席に戻ってきた女子生徒。
目の前の女子生徒と話ししながら、
自然に右の橙の顔を見て、思わず、
「プッ。」
橙、そんな女子を見て、唇を尖らせて、
「ふん…???」
女子生徒、笑いながら、
「ゆず〜〜。ここ、ここ。赤っ。」
おでこの右の方に右人差し指を…。
「え…???え…???」
その瞬間、その女子生徒、すぐさまポケットから携帯電話で橙をパシャリ、
そしてその画像を橙に。
橙、
「うわっ!!!!」
本の角にぶつけたオデコが、赤く。
女子生徒、
「なにやらかしたの〜〜???」
そしてその画像を削除。
「はいはい。授業、始まる〜〜。」
橙、思わず、ほっぺたを、
「ぷ〜〜。」
けれども、2つ前の席の薫郎の横顔を見て、膨らんだ頬っぺたも元通り。
そして自然に笑顔になる橙。
子供の頃からおとなしい性格だった橙。
けれども、小学生の頃から、とにかく友達も出来なく、
ひとりでポツンとしているのが多い橙。
そのためか、友達と一緒に遊ぶという時間がなく、
やることと言えば、本を読むか勉強しているかのどちらか。
その影響か。授業態度は良好。そして成績は優秀。
小学生の頃から絵を書くのが好きで、母親から中学部活動には美術部にと、
進められて、そのまま…。
熱心に美術部で絵を書きながら…。
しかも、その書いた絵も、部の顧問に褒められ、ある意味の期待をされる。
そんな中で部が早めに終わり、ひとりでぶらぶらと校内の廊下を歩いていた時に、
体育館の方から歓声が。バレー部の紅白戦である。
その中で、ネット際、真ん中でトスを上げている一人の男子生徒。
そのトスの正確さで、次々にアタックが決まる。
開け放たれた体育館の入り口をその様子を見ていて、橙の目に飛び込んできた、
そのネット際の真ん中の男子。
橙、
「へっ!!!杉浦君っ!!!」
壁際で応援している女子生徒たち。みんな一同に、アタックを打つ男子生徒に黄色の声。
けれども、アタックを打っている男子からは懸命に喜ばれている様子の薫郎。
その瞬間、橙、
「杉浦君、かっこいい〜〜。」
入口からバレー部の紅白戦を見ているのは橙ひとりだけ。
その時、瞬間に橙の頭の中で、
「私、この人、好き。」
それからである。美術部の活動が終わった後は、
必ず体育館を通って帰るという日課ができた。
教室では薫郎の姿を後ろから。そして放課後には、部活動で動く薫郎を…。
いつの間にか、誰にも何も言えない橙だったが、薫郎を見ているだけでも嬉しかった。
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