ときにこちら…。
「眠れない…。」
枕元のスマホをポチッと。
「1時…15分…。巽…、寝たよね~~。」
頭をグイッと、隣の部屋の方に向けながら…。
橙にしては、もしかしたら、生まれて初めての、大勢の中での、食事会。だったのであった
「あんな…たくさんの人…。」
そして、何故かしら、顔を赤らめて…。
「あんなの…初めて。…カラオケで、歌ったのも…初めて。チーフ。万美さん、尋音さん。そして、ブランドリーダー。営業マネージャー。綺麗な人ばっかり。やっぱり…おじちゃん。凄いよ。それに、菫さんも綺麗だもん。」
そして、スマホのラインで、菫から送られてきたメール、
「ゆず~~。みんなに可愛がられて、良かったね~~。これから、頑張れ~~。」
そのメールにまた、赤くなる橙。何故か、照れながら、
「へへ。ありがと。」
そして何とも、懐かしい感覚を覚える橙、
「薫朗…君…かぁ~~。ユッキ。…これから…、一緒に、仕事なんだぁ~~。薫朗君、大人になったぁ~~。今や、営業かぁ~~。凄いよね~~。うん。かっこいい~~。しかも、営業マネージャーの、山根…千慧…さん…。凄い、プロポーション。」
そして、枕から、少し頭を上げて自分の胸元を…。
そして、ドンとまた枕に。
「全~~然。比べ物に…。」
頭の中に甦ってくる、ユッポラでの美味しい料理。
そしてスタッフのいろんな人と撮った写真。
そして面白可笑しかった門倉礼人。
思い出しながら、
「キャハ。おっかしぃ~~。」
ある意味、僅か1週間での経過だった会社勤め。
社会人としては、初めてではあったが、ジェシカのスタッフたちの、
橙を感じたインプレッションはまずまず。
「なんとか…、やっていけるかも…。」
そして、ふと頭の中に甦る過去の赤い箱。リボン結びにして…。
そして、1ヶ月掛けて編んだ、マフラーを紙袋に…。
お昼休みに、入ったばかりの学校の昇降口。他の生徒はいない。
走って、その子のところまで追い付き、ドキドキしたままの鼓動。
そして、男の子の前で、一生懸命に練習した言葉。
「あの…。これ…。受け取って下さい。」
ゆっくり、ゆっくりとまどろんでいく橙。次第に眠りの淵へと…。
ようやく男子に小さな箱と紙袋。
「お願いします。受け取って下さい。」
その相手の男の子、杉浦薫朗(すぎうらゆきお)である。
橙が中学に入学した時から同じクラス。そして席は橙の2つ前。
それほどカッコいい訳ではないのだが、とにかく笑顔の絶えない。
誰にでも優しく親切な男子。薫朗の近くには仲の良い女子生徒もいたが、
橙はそこまでは近寄れなかった。
ある時、昼休みに本を読んでいた橙、ふざけてじゃれ合っていた男子が、
相手の男子に押されて橙にぶつかり、思わず橙が前のめり。
本の角に頭をぶつけ、
「痛っ。」
その時に、頭をぶつけた弾みに、本が机の上から床に落ちてしまった。
ぶつかった男子は、
「何、ポケッとしてんだよ。」
そう言って、相手の男子に、
「外、行こうぜ。」
その時、床に手を伸ばした橙の手のその前にもう一本の手が…。
本を拾って…。

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