「クラスにさ。最近、元気のない子がいるわけ。」
霞。
蘭、
「ふん。」
「どうしたのって聞いたら…。好きな男子がサッカー部で、後輩君。もうず~~っと前から好きだったんだけど、声掛けられなかったんだって。」
「ふん。」
「…で、ひょんなことに、その男子の誕生日、知ったんだって。」
橙、そんな姉を見ながら、
「……。」
「誕生日が、つい最近。1月の半ばって…言ってたかな…。…で、彼に何かプレゼントしたい。…って、思ったんじゃない。」
蘭、
「ふん。」
「…で、その子、今まで一度もやったことのない編み物、マフラー、編んでその男子の誕生日にプレゼントしようとしたんだって。」
蘭、
「お~~~。典型的パターン。」
霞、
「うんうん。」
「…で…???」
おかずを食べて、ゴクリと、霞、
「…でね。もう少しで完成というところ。」
「うん。」
「そんなときに、その男子、お父さんの仕事の都合で、東北に引っ越すことになった。」
母親の紅葉、
「あら。」
蘭、
「う~~っわ。」
橙、ドキン。
「それを知ったその子。」
霞。
蘭、
「うん。どした???」
「もう~~。悔しくって、悲しくって、そして頭にきて、今まで編んだそのマフラー、やけになって、ぐちゃぐちゃにして、ごみ箱に捨てたんだって。」
蘭、
「う~~っわ。か~~なしい~~。」
そして、
「そりゃ、そりゃ、勿体ないわ~~。」
その時、橙、目をパチクリ、頭の中、
「…へっ…???なんで勿体ない…???」
霞、
「でしょう~~。勿体ないって。」
父親の龍興、
「ん~~~。」
霞、
「私と友達、あんた、なんで、そんな勿体ない事。って言ったら、その子、へっ…???って…。」
蘭、
「くくくく。」
「ねね、お姉ちゃんも分かるでしょ。」
「まっね~~。折~~っ角、編んだんだもん、その子、引っ越す前に、好きだって告白して、マフラー、あげちゃえばいいじゃな~~い。その方が絶~~っ対、良いって~~。」
霞、
「でしょ、でしょ。その方が気持ちだって、良いのに。それに、相手の男子だって、嬉しいって~~。」
そこまで言って霞、頭をかしげて、
「まっ、その男子が、その子の事、好きか、嫌いかは、別にして…。」
言った途端に舌をチロリと。
蘭、
「ねぇ~~。その方が、ふたりのためにも、良い経験になるよ~~。…でも、その子、結局、その男子に、告白も出来ずに、マフラーも上げられず…???」
霞、
「ふん。…で、私たちに、失恋しちゃった…って…。」
蘭、その瞬間、頭をかしげて…、
「霞さ…。くくくく。それ…、申し訳ないけど…。失恋でもなんでもないじゃん。単に、片思い…。恋愛までも…発展してないじゃん。」
その蘭の声に霞、
「あっ。」
そして、隣の姉の方を向いて、
「だよね~~。かかかか。」
そんな2人の姉の話しを聞きながら、何かしら鼓動が高鳴る橙。
そして、静かな声で、
「ごちそうさま~~。」
蘭、
「ふん。」
「ゆず~~。何か困りごとあったら、姉ちゃんたちに、言いな。いいねぇ~~。」
霞。
そんな姉に橙、何かしらにっこりとした顔で、
「うん。」
流しに洗い物を置いて、キッチンのドアから外へ。

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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。