夕方、とある旅館に到着して、部屋に案内され、
窓を開けて海の匂いを…。目を閉じながら、侑佳。
海の景色をスマホに納めようと、
その時にようやくスマホの電源が入っていない事に気が付く…。
「あっ。そっか~~。あれから電話に出ないで電源切ってたんだった。」
そして電源を入れれば数件の不在着信。何回か自分から掛けた電話番号…。
ほんのりと瞼熱く。鼻先がツ~ンと…。
いきなり口の中のものを飲みこんで…。目尻から涙。
けれども…、
「ふ~~。」
少しだけ鼻を啜り、
「来ちゃった~~。へへ…。」
そして、
「…ごめんね…。浩…。」
そして、ある電話番号に…。
「もしもし…。わたし~~。」
「ん~~???どうしたの…。珍しいじゃない…あんたから電話なんて…。何かあったの…、そっちで…???」
電話の向こう。
「うん。ちょっとね…。私今…、石川県にいる。」
電話の向こう、
「はい…???石川県…???もしかして…北陸…???能登…???」
「うん。」
「ふ~ん。直道さんと一緒にか~~。仲直り…、したってな…。ははは…。」
「ううん…。わたし…、ひとりで…来てる。」
「はい…???ひとりで…???…って…。…え゛――――――――っ!!!ちょっ…ちょっと…おま…。」
侑佳、
「か…、かあさん…。」
電話の相手は侑佳の母親、柏木葵である。
「ちょっ…、ちょっと…、父さん。」
台所からスマホを耳に、リビングに葵、
「ちょっと、ちょっと、父さん…。」
侑佳…、
「あ…、あ~~…。やっぱり……。」
葵、
「父さん、今、侑佳…、北陸にひとり…。ほら。」
テレビを観ていた侑佳の父親、悦男、
「何、侑佳が…どうした…???えっ…???」
侑佳、
「わお。」
「もしもし。侑佳か、父さんだ。どうした…???」
少し黙って、目の前の水平線に落ちる夕陽を観ながら、
「綺麗~~。夕陽~~。ははは…。」
何故か自分でも分からない内に、目尻から涙が零れる侑佳。
「父さん。…夕陽…、綺麗だよ~~。」
葵のスマホを右の耳に、
「何…???夕陽…綺麗…???おい。侑佳。」
「くくくく。だ~いじょうぶだよ~父さん。幾ら私一人で北陸能登って言っても、ちゃ~んと、汀のお義父さん、お義母さんの許しをもらって来てるんだから。」
「そんな事言ったっておまえ…。」
あたふたする悦男。

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庄司紗千 花笠音頭
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