見せ場を作ろうとホームベース前でスライディング。
ところが、センターからの好返球をホームベース上で、
ガッチリとボールをキャッチして相手の体の何処かにタッチ。
結果、惠の硬いガードでアウトではあったが、
その時、相手の選手も気付かずに左足を軸に立ち上がった瞬間、
惠の左足に激痛が走った。
動けずにいる惠。すぐさま左足の怪我に気付き、
すぐさまスパイクを脱ぐとじわりじわりと滲む出血。
すぐに救急車を呼び病院に搬送され、結局は…、左足小指と薬指の骨折。
全治2ヶ月。
「全く…、人が良いのにも程があります。別にあなたが選手でもないのに…。」
トレイにメニューを盛った皿を乗せながら志摩子。恐縮頻りの惠。
ご飯をよそいながらの侑佳、惠を気の毒そうに感じながら…。
「この1ヶ月、その事ばっかり。はいはい、すみませんね~。女房は…恐い。ふ~~。」
そんな義父をクスっと、笑いながら…侑佳。
「なぁ~~侑佳さん。歳が9つも離れているのに、女房ってのは…、おっかないよ~~。でも、されど、私には、母さんしか…いないんだが…。」
汀志摩子。直道の母である。実際、志摩子は惠よりは9つ、年下である。
「何…、ばかな事…。」
ツンとしながら志摩子。
惠、
「くっ。」
そして、
「どこをほっつき歩いてんだか…。…ったく。」
その一言。志摩子は一切侑佳に顔を向けずに…。
そんな志摩子を見て惠、
「……。」
夫、不在の日々…。それは侑佳が買い物の…自宅に不在の時だけ、
帰宅しているようでは…あったが…。
執拗に義父母は直道に、侑佳の元に戻るように説得はしてはみるものの、
容易に直道の侑佳への敬遠は…変わらなかった。
結婚して後、侑佳は直道の薦めもあって、携帯電話からスマートフォンに替えていた。
メールアドレスも電話番号も換えていた。
仕事があれば、今のこの気持ちから…。けれども、それは、今の生活環境からは…、
叶う事のない思いではあった。
そんな中で、ひとりだけの寝室で、スマートフォンを片手に、
いつの間にか眠りに誘われる侑佳。そして時折頭に過る顔…。
そんな時に、昔からの手帳の中にあった電話番号。
もう…掛ける事のないと思っていた…電話番号…。

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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。