「勲さん。じゃ…私たちはこの辺で…。」
孝子。
「う…ん。…そう…ですね。じゃ、マ~坊、また来るとします。」
勲。
「すんません。わざわざ。」
将史。
愛美にお辞儀をしてドアを開ける勲。
愛美、
「ありがとうございました。」
孝子、
「ごゆっくりどうぞ~。」
笑顔で…。
ドアが閉まり、病室の窓を見て愛美。
「ふぅ~。」
そのまま数秒。そしてゆっくりと窓を見ながら歩いて…。
将史、
「どしたの…???」
「ん~~。な~んかねぇ~。」
「…ん…???な~んかねぇ~って…???」
「マサ。」
窓の外を見て、今度は将史に振り向いて…、
「何とも…、人気者だね~~。」
「はぁ~???」
「いや…、前の会社とは比べもん…なんないじゃん。」
「…ん???…まぁ…。な…。」
「ふん。」
いきなりにっこりとした顔をして愛美、椅子にも座らず、腰を降ろして…。
「いい顔してる。」
そう言って、今度は腰を上げ反対側の枕元に近い椅子に座り、
「ねね…???」
将史、
「ん~~???」
「今って…、どんな感じなの…、体…???」
「ん~~。良い感じだ。経過良好だってよ。」
「うそうそうそ。本当に~。」
「あ~~。先生直々に言われたんだ。間違いないだろ。その証拠に、違和感もないし…。」
そう言って、思い切り両腕を伸ばし、両手指を交互に組んで裏返しにして力を入れる将史。
そのまま窓の外に顔を向け、
「あ~~、外に出たい。」
ポツリとそう言って愛美を見る。
「ん…???…愛…???泣いてんのか…???」
目を赤く、鼻先も赤く…。
「バカ。見るんじゃない。」
そう言いながら右手の平を将史の顔に向ける愛美。
その愛美の手を左手で抑えて布団の上に…。
「愛…、ありがとな。」
その将史の声を聞いた瞬間、将史の首に両腕を巻き付け抱き締めたかった。
けれども、それが出来なかった。そんな意識を懸命に振りほどいて…。
愛美、
「な~に言ってんだか~。」
両手指で両頬に零れた涙を拭って、ベッドサイドに両肘を着いて。
将史の額に右手人差し指でツン、
「こら、早く退院しろ。」
「おぅ。」
少しぎこちない素振りをしながらも…、
「じゃ~~私…、行くわ。」
「えっ…???行くって…???…あ~~、仕事の途中だったか。」

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庄司紗千 海をこえて
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。