ゆっくりと頭を上げて男性。
「申し遅れました。私…、阪急まつば本店の伊集院と申します。」
内ポケットから名刺を取り出しながら、浩二に差し出しながら…。
「…まつば本店…、顧客管理統括室長…伊集院国弘。」
浩二。
そして隣の制服姿の男性も同じように、名刺を取り出し浩二に…。
「あ…はい。どうも…。」
浩二。
「警備、保安管理室課長…、朝比奈…???恭子…、この字…何て読む…???」
恭子、
「…ん…???…あたっ…。」
「おっとっと…、ごめんごめん。」
「首…痛った~~。ふぅ。」
「あっ…、すみません、まも…。」
男性のその声に被さるように、浩二の持っている名刺の名前を見て恭子。
「衛(まもる)…。じゃないかな…。」
「はい、朝比奈衛(まもる)と言います。」
首の後ろを右手で撫でながら…、
「…あ…、あの…、失礼ですが…、無事で…良かった。うん。何よりです。」
そしてまた頭を下げて…。
「私も…、事態を聞いて驚いて…。」
伊集院。
浩二、
「…で…、一体何が…???」
その浩二の声に、お互い目を見合せて、そしてコクリと…。
所謂ひったくりである。事件はデパートの5階で起きていた。
婦人服や宝飾、時計などを販売しているフロアである。
いよいよクリスマス商戦開始ともあり、どの店舗も人人人。
丁度警備も交替の時間でもあり、ひとりの警備員が持ち場を離れた時に、
いきなり女性の甲高い声。
「きゃ―――――泥棒――――――っ!!!」
どうやら宝飾の店舗から聞こえてくる。
辺りの客たちが慌しく逃げる男性に振り返る。
デパートの中央には向かわず奥の階段を目指して走る男性。
警備員ふたりもその男性を発見して追い掛ける。
奥の階段に逃げる男性。そして2階のフロアに辿り着いて、
今度は割と人混みが少ない通路が目の前に、
懸命に走る男性がエレベーターに辿り着き駆け下りようとした瞬間に、
目の前に恭子と浩二…、前のめりになった男性も自分の身体を制御できなくなり、
「わっ、おい、ど。」
恭子と浩二の背中を押したのだが、そのまま…。

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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。