「なんで…、なんで、なんであの人…が…。ここに…。」 ようやく今、見た紗友莉の姿が目の前から消えて、
目であちこち見回しながら…、
「…んもう…やだ~!」
少し潤んだ目、少し赤らんだ頬。両手で顔を何度も拭いながら…、
荒い呼吸。
「はぁ…、はぁ…。…ん…、あ~っ。」
わずかに…数秒だったが、壁伝いのカラーボックスに両手を付いて、
「びっ…くりした~!ふぅ~!」
「奈々子…、奈々子…、どうした…???大丈夫…???」
奈津子が奈々子の異変に気が付いて、レジに駆けつけてきていた。
「へっ…、あぁ…奈津さん。…ん…。んん…、大丈夫、大丈夫、ハハ…。」
「大丈夫って…、顔…赤いよあんた…???それに…何…、泣いてんの…???」
そんな奈津子の言葉に、右手を振り…、
「大丈夫、大丈夫、OKOK。」
どこをどうあるいたのか…、余り記憶がなかった。
ただ足だけは、会社のある方向に向かって歩いていた。
頭の中には、今さっき見た、
少しぼさぼさのヘアスタイルと大きな黒縁メガネの女性。
それが、今人気のファッションモデルの…片倉奈々子。
しかも、あの恰好の彼女が、しっかりと自分を知っていて、名前も…。
「あのときの…健介と一緒にいた、あのときの彼女が…片…倉…奈々子。」
全くの上の空で歩いていた。
「でも…なんで、あの人、あんな恰好で…???…んんん、でも…これが本当なんだ。」
少し口の中が苦かった。それと同時に健介の顔が…、
「健介…。」
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