「へへ…、なん~でもないって~へへ…大丈夫、大丈夫、はいはい、仕事仕事。」 と、鼻水を啜りながら、笑顔を作って、
淑子を背中向きにして肩を押す紗友莉。
「ちょっと…私…トイレね。」
と、頬を右手で拭いながらドアを開けて消える紗友莉。
淑子が…、
「紗友…。」
トイレの鏡に映っている自分の顔を見ながら、また瞼を熱くして紗友莉…。
「紗友莉…あんたって、ほんとに…バカ。…どうすんのよ。…もう…どうにもなんないぞ、もう…。」
そう言って、きつく目を閉じて、目尻りから零れる涙。
…30分程前。
お昼を済ませた後、仕事の素材にとファッション雑誌を買いに、
近くの書店に入った紗友莉。
「あ~あったあった。これっと、これっ。よ~し。」
雑誌のページを捲りながら、レジに向かう。
前の客が支払いを済ませ、カウンターから離れ、
見ていたページを閉じて、カウンターに、雑誌を置いて前を向いた瞬間、
「…ん…???うそっ???…この人…!!!」
そんな紗友莉の顔を見た途端、右手を思わず口に当て、
「…どうして、彼女が、ここにいるの???」
そして、一瞬目のやり場に困る奈々子。
この前、レストランで健介の隣にいた彼女が今、目の前に…。
そして、いつだったか、自分の恰好を一瞬でも笑った当人が、
今、目の前に…。
そして片や…以前、健介の隣で寄り添いながら歩いていた…。
その女性が目の前に…今。
思わず口の中の物をゴクリと飲み込んだ紗友莉。
「この人…ここで…???」
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