店のドアを開いて中を…ちょっぴり覗いて…、 それでも、普通の客のように店の中に入る健介。
店の中に入って、見回せば、思わず…「ハハハ…。」と、
思われるような姿が一つ。紛れもない奈々子のいつもの書店での姿である。
けれども、そんな姿に健介は、最初は少し、気落ちはしたものの、
それでも、通路を歩いている姿は、ひとりの女性として奈々子に…、
ある意味では、敬意を表しながら、「お待たせしました。」と、言う、
頭を少しでも下げるくらいの姿勢で奈々子に近づいてきた。
健介が席に到着するや否や、奈々子が、いきなり椅子から立ちあがり、
「この前は申し訳ありませんでした。」
と、言う、深々しいお辞儀。
その姿勢で、一気に立場が逆転して、健介が逆に、おろおろする始末。
「とんでもない…、僕の方こそ…。…って、片倉さん。何…これ…???」
奈々子のその姿勢を見て、思わず肩透かしを喰ったような健介。
「ごめんね、松下さん。」
と、言いながら思わず舌を出す奈々子。
「やれやれ…、これじゃ、完璧に、俺の方が逆だよね。」
そんな風に言う健介に、奈々子は少しだけ、安心感を抱き始めてもいた。
「松下さん、今日はありがとうございました。」
「いえいえ、僕の方こそ…ありがとうございました。」
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