ただ、今回の悲惨なパリのテロが報道されるにつけ、たとえ複雑であっても、自分なりの意見を残しておくべきかもしれないという思いにかられた。今も「何から手をつけていいかわからない」という思いに変わりはないが、複雑なことは思い切って捨象し、自分のテロへの考え方に絞ってまとめることにしたい。
私は、テロとは社会におけるがん細胞だと考えている。
がんにかかる要因としては主に2つある。もともとがんにかかりやすいという体質的要因と、あるいは年をとるとか、食生活など生活面で不適切なことを続けるなどで免疫力が落ちるという体力的要因である。前者は先天的、後者は後天的だ。当然のことながら、後者のほうが改善しやすい。
その国がテロに脅かされるという場合も、その国が民族対立などを抱えて、体質的にテロに移行しやすいという要因が1つ。
もう1つの要因は、貧富の差の拡大だ。格差が拡がるごとに貧困層に不満が増大して、何かのきっかけで暴動が続き、やがて思想的・宗教的な信条を持ってテロに移行する。生活が乱れて、免疫力が落ちていくのと同じようなプロセスである。
がん根治のための方法には、主に2つの方向性ある。
1つは外科手術によって患部を摘出して、その後は抗がん剤で徹底的に叩くという方法である。もう1つは漢方薬や温熱療法など、体に負担のかからない方法を用いて、体質改善でがんとの共存を図りつつ、免疫力を高めることで徐々に病巣を小さくしていく方法である。
どちらをとるかは、その人の体質や体力、あるいは病気の具合から総合的に判断すべきだ。また、その人が病気や死に対してどういった哲学を持っているかも重要になる。あるいは、1つに限るのにではなく、その両方をうまく組み合わせていくというのも有効な方法であり、今後も有望である。
さて、いわゆるイスラム国がここまで勢力を伸ばした背景には、2人のアメリカ大統領のスタンスが大きく変化したことが影響している。
2人とは、ブッシュ前大統領とオバマ現大統領だ。
ブッシュ前大統領は、アフガニスタンのアルカイダに対して、とくに911テロをきっかけに、アメリカ軍を派遣してその撲滅を目指した。いわば外科治療を先導した大統領である。
がんの外科手術で大事なのは、いちど手術に手をつけたら、抗がん剤を併用してがん細胞を徹底的に抑え込むことだ。でないと、いちど再発すると、がん細胞は体中に転移してしまう。抗がん剤はとくに体力の落ちた患者にはつらいものであるが、いったん外科手術に手を染めたからには避けられない。
しかし、あとを継いだオバマ大統領は、軍事制覇の直後であったにもかかわらず、アフガニスタンから地上軍を逐次的に撤退させて、駐在する兵力を大幅に縮小し、空爆のみで対処するという大幅な方針転換を図る。
これはいわば、外科手術をしたあとの抗がん剤投与を中断して、必要最小限の対処療法のみにしたのと同じことである。いくら空爆で叩いても、地上軍がいなければ攻撃して敵を駆逐した土地を確保して管理することができないから、時間が経てばまた取り返されて、イタチごっこである。
そして、がん細胞は、イスラム国という強大な疑似国家として中東全体に影響力を拡大して、やがてヨーロッパに転移してしまう。
なぜヨーロッパにまで拡がったかと言えば、表面的にはムスリム移民が増加したからということになるが、ことはそんなに単純ではない。なぜなら、移民したムスリムの生活レベルが安定していれば、テロに走ることなどないからである。
言い換えれば、中東問題とは別に、ヨーロッパ自体も格差拡大によって、がんにかかりやすい体質に変わっていたわけである。
ここで留意すべきなのは、格差が単に本国出身者とムスリム移民のあいだで起こっているだけでないことだ。ヨーロッパの数か国では大卒の実に半分近くが就職できないという状態が続いており、極端な世代間格差が広がっている。つまり、同じ本国出身者であっても、若者の貧困というものが本国テロに向かいやすい体質を後押ししている。
パリで起こった同時多発テロを見ると、たんにテロリストが紛れ込んで起こしたといったレベルではなく、すでにヨーロッパに1つのテロ組織が作られて、小さいながらも病巣が出来たと見るべきだろう。
アメリカのアフガニスタン政策の変更から拡がったがん細胞が、ついにヨーロッパに本格的に転移してしまったわけである。
こうなると、もう外科手術だけで根治することは不可能だ。ではどうすればいいのか。
ヨーロッパの体質を根本的に変えて、正社員の既得権益を緩和し労働の流動化を促進して世代間格差を縮小させて、若者がテロに走らないような状態にする必要がある。
また、言うまでもなく、中東情勢を安定させるとために、ドラスティックかつ粘り強い複数の治療を施術するしかない
中東には地上軍派遣という本格的な外科的再手術が必要であるが、それと同時に、インフラを整備し、経済を安定させることが重要である。いわば漢方治療や温熱治療など体に負担のない方法で体質改善をしていくようなものである。
テロの中心となる若年層の生活が安定すれば、あえて命がけのテロなど進む者は自然と減っていき、テロは収まるはずである。逆に、政情不安が続き、貧困が解消されないようであれば、テロはエンドレスに続くことになる。
日本は外科手術のほうが参加できないが、後者であれば最も得意とするものだろう。
ブッシュ前大統領は、アフガニスタンのアルカイダに対して、とくに911テロをきっかけに、アメリカ軍を派遣してその撲滅を目指した。いわば外科治療を先導した大統領である。
がんの外科手術で大事なのは、いちど手術に手をつけたら、抗がん剤を併用してがん細胞を徹底的に抑え込むことだ。でないと、いちど再発すると、がん細胞は体中に転移してしまう。抗がん剤はとくに体力の落ちた患者にはつらいものであるが、いったん外科手術に手を染めたからには避けられない。
しかし、あとを継いだオバマ大統領は、軍事制覇の直後であったにもかかわらず、アフガニスタンから地上軍を逐次的に撤退させて、駐在する兵力を大幅に縮小し、空爆のみで対処するという大幅な方針転換を図る。
これはいわば、外科手術をしたあとの抗がん剤投与を中断して、必要最小限の対処療法のみにしたのと同じことである。いくら空爆で叩いても、地上軍がいなければ攻撃して敵を駆逐した土地を確保して管理することができないから、時間が経てばまた取り返されて、イタチごっこである。
そして、がん細胞は、イスラム国という強大な疑似国家として中東全体に影響力を拡大して、やがてヨーロッパに転移してしまう。
なぜヨーロッパにまで拡がったかと言えば、表面的にはムスリム移民が増加したからということになるが、ことはそんなに単純ではない。なぜなら、移民したムスリムの生活レベルが安定していれば、テロに走ることなどないからである。
言い換えれば、中東問題とは別に、ヨーロッパ自体も格差拡大によって、がんにかかりやすい体質に変わっていたわけである。
ここで留意すべきなのは、格差が単に本国出身者とムスリム移民のあいだで起こっているだけでないことだ。ヨーロッパの数か国では大卒の実に半分近くが就職できないという状態が続いており、極端な世代間格差が広がっている。つまり、同じ本国出身者であっても、若者の貧困というものが本国テロに向かいやすい体質を後押ししている。
パリで起こった同時多発テロを見ると、たんにテロリストが紛れ込んで起こしたといったレベルではなく、すでにヨーロッパに1つのテロ組織が作られて、小さいながらも病巣が出来たと見るべきだろう。
アメリカのアフガニスタン政策の変更から拡がったがん細胞が、ついにヨーロッパに本格的に転移してしまったわけである。
こうなると、もう外科手術だけで根治することは不可能だ。ではどうすればいいのか。
ヨーロッパの体質を根本的に変えて、正社員の既得権益を緩和し労働の流動化を促進して世代間格差を縮小させて、若者がテロに走らないような状態にする必要がある。
また、言うまでもなく、中東情勢を安定させるとために、ドラスティックかつ粘り強い複数の治療を施術するしかない
中東には地上軍派遣という本格的な外科的再手術が必要であるが、それと同時に、インフラを整備し、経済を安定させることが重要である。いわば漢方治療や温熱治療など体に負担のない方法で体質改善をしていくようなものである。
テロの中心となる若年層の生活が安定すれば、あえて命がけのテロなど進む者は自然と減っていき、テロは収まるはずである。逆に、政情不安が続き、貧困が解消されないようであれば、テロはエンドレスに続くことになる。
日本は外科手術のほうが参加できないが、後者であれば最も得意とするものだろう。
理想的には、中東の人たちに対してまだ悪いイメージを持たれていない日本がリードして、アメリカと歩調と併せながらも、独自のインフラ整備や技術供与や教育政策の充実など、経済的安定のための施策を強くやれば、テロ根絶は決して不可能ではない。
つまり、西洋医学的な外科治療と、東洋医学的な体質改善を組み合わせることである。アメリカと日本で得意な分野が違うが、逆に言えば、両者をうまく組み合わせていけば、これまでにない高い効果を生み出す複合的な治療ができる可能性がある。だからこそ、日本が主導して、日本的なテロ対策というものが重要になるのである。
テロ組織が諸悪の根源とばかりに、社会整備を怠って軍事的介入のみに注力しても、効果がないどころか、テロはますます拡大していくことになる。
もう1つ考えるべきは、ヨーロッパの問題を、同時に世界全体の問題として見て、今後の新たなテロにも備えることだ。正しい方向性をつかみ、そこに注力すれば、根絶は可能だと考えている。
つまり、西洋医学的な外科治療と、東洋医学的な体質改善を組み合わせることである。アメリカと日本で得意な分野が違うが、逆に言えば、両者をうまく組み合わせていけば、これまでにない高い効果を生み出す複合的な治療ができる可能性がある。だからこそ、日本が主導して、日本的なテロ対策というものが重要になるのである。
テロ組織が諸悪の根源とばかりに、社会整備を怠って軍事的介入のみに注力しても、効果がないどころか、テロはますます拡大していくことになる。
もう1つ考えるべきは、ヨーロッパの問題を、同時に世界全体の問題として見て、今後の新たなテロにも備えることだ。正しい方向性をつかみ、そこに注力すれば、根絶は可能だと考えている。
ポイントは、がん細胞を物理的に完全除去することばかりを考えるのではなく、体の持つ免疫力で悪玉細胞を抑える体質を作るという発想にある。


Image(s): FreeDigitalPhotos.net
【新刊翻訳書のお知らせ】
『世界のトップエリートが絶対に妥協しない小さな習慣』(大和書房)を出版いたしました。ウォール街のトップエリート女性が書いた、「どうやったら目標を100%成功させて、人生を大きく好転させるか」を解説した本です。多くの人に役立ちすばらしい本ですので、ぜひご一読ください。くわしい内容については→こちらまで。

Image(s): FreeDigitalPhotos.net
【新刊翻訳書のお知らせ】
『世界のトップエリートが絶対に妥協しない小さな習慣』(大和書房)を出版いたしました。ウォール街のトップエリート女性が書いた、「どうやったら目標を100%成功させて、人生を大きく好転させるか」を解説した本です。多くの人に役立ちすばらしい本ですので、ぜひご一読ください。くわしい内容については→こちらまで。



